6-2話
二人揃ってこちらに目を向ける智琉と衆治に、達八のテンションはどんどん上がっていった。
達「へっ、どうやらあいつもやる気満々みてーだな」
封「じゃあどうする?あの智琉って奴の相手はお前がするか?」
達「えっ!?」
達八は驚き目を見開いて封駕の方を振り向いた。
達「いやいやいや、衆治の相手は予定通り俺がやるって。封駕も俺に任せてくれるって言ったじゃねーか。心配ねーよ、衆治は俺が殺る」
封「そうか。じゃあ俺が智琉の相手をするか。お前の成長の成果を奴で試して来い」
達「おう」
達八はポケットからカードを一枚取り出すと衆治に言った。
達「おい衆治、俺がお前の相手だ。思う存分足掻けよな」
衆「ああ、そうさせてもらう」
達「CC"アトミック・トレイン"」
達八のカードから眩い光が発せられた。その光が止んだ時、衆治と達八の姿はその場に無かった。
智 (衆治……)
封「さて、ただ待っている訳にもいかない。始めるか?」
智琉は自身のカードを具現化させた。
CCに飛ばされた衆治は自分の周りを見渡した。
衆「どうなってんだ?」
衆治と達八は半径5メートル程の円形の足場の上に立っていた。その足場から一本道が蚊取り線香の様に足場の周囲を何周も周回している。そして道の上には線路が引かれていた。道と道の間の溝は深く、下には透明な液体が流れていた。
衆 (今まで見たCCの中でもかなり変わったカードだな)
達「お前の運命は二つに一つだ。俺に殺されるか、あれに殺されるかだ」
達八は指差した先は二人がいる足場から続いている一本道の先だった。そこにはシャッターの閉まった大きな車庫があった。その時、シャッターがゆっくり開き中から鋼鉄製の列車が出て来ると、大きな警笛をあげて線路の上を走り出した。
衆「何だあれは?」
達「アトミック・トレイン、この空間の目玉だ。あの列車の内部には凄まじい量の爆薬が詰め込まれていてな、列車が止まれば大爆発を起こす。終着点はここ、俺達が今いる場所だ。線路をつたいここに向かって走ってる訳だ」
衆「なるほど、じゃあなるべく中心から離れた方が良さそうだな」
達「いいや無駄だ。この下に流れてる液体が何か分かるか?ただの水じゃねえ、ニトロだ。ちょっとの衝撃で爆発するっていう例の液体だ。そのニトロがこの空間の下に全面に広がっている。分かるな?あの列車が爆発すればそれに誘発されてニトロも爆発する。その二つの爆発が起こす破壊力はこの空間を完全にバラバラにしちまう。つまり逃げ場なんかねーんだよ」
衆「……そういう事か。あの列車がここに到着するまでにお前を倒すのが俺が生き延びる手段って事か」
達「そういう事。理解が早いってのは羨ましいなあ」
衆治は轟音を立てて走る列車に目を向けた。
衆 (スピードはかなり早いな。発車地点からここまでどのくらい距離があるのか正確には分からないが、恐らくここに着くまで五分あるかどうかって所か)
達「おいおい、よそ見してる暇なんかねー筈だぞ」
達八の声に振り向いた時、達八は自分のカードを出現させていた。
達「UC"冷たい熱帯魚"」
達八の出したアンノウンは、それぞれ赤、黄、青の色をした三種類の小魚の群れだった。その無数の小魚が達八の周りの空中をさも水中かの様に泳いでいた。達八の攻撃に身構え衆治も自身のカードからシザーハンズを出現させた。
達「そうだそれでいい、たっぷり足掻いてもらわないとな。一方的なのは気分が良くないからよ」
達八は魚の群れの中から一匹の黄色い小魚を衆治に向かわせた。衆治は一瞬気を張ったが、その魚の動きは向かって来るというよりも気まぐれに泳いで来るといった動きだった。その動きに衆治は僅かに自分でも意図せず油断してしまった。魚が近くに寄って来た時衆治はシザーハンズの左手の甲でその魚をはたいた。その瞬間その魚は大きな音を上げて爆発したのだ。突然の爆発に衆治とシザーハンズは少し右側に吹き飛ばされた。
衆「痛って……今のは……」
達「この魚には触れない方がいいぞ。何せ俺の冷たい熱帯魚は触れれば即座に爆発する。生き物だろうが無機物だろうが関係ない。敵も味方も問答無用。触れられたその瞬間に爆発は起こる。つっても、めちゃくちゃでかい爆発じゃない。一発二発喰らってもそうそう死にはしねえよ。まあ、魚の数はほぼ無限大だけどな」
衆「まったく、なんつーカードの組み合わせだ」
達「だろ、お前もそう思うよな。俺もこのCCと出会った時はちょっとした感動があったくらいだからな。その分相当手強いぞ」
達八は今度は大量の魚を衆治に突撃させた。衆治は立ち上がり、中心の広い台から離れ溝を飛び越えながら周回する線路道の方へ避難した。その速度に魚達はついて来れないでいた。
衆 (奴のアンノウンはあまり素早い動きはしない。触れさえしなけりゃさほど脅威でもない)
衆治が立ち止まり後ろを振り返ると、魚の群れとの差はかなり開いていた。安全を確信した衆治は視界の端にこちらに向かって来る物体を捉えた。それは青色の冷たい熱帯魚が三匹、衆治が想定していた以上のスピードで右側から迫って来ていた。
衆「何!?」
衆治は向かって来る魚をシザーハンズを盾にして防いだ。防がれた三匹の魚は爆発を起こし、衆治とシザーハンズを軽く吹き飛ばした。
達「冷たい熱帯魚には三色の種類がいてな。中でも青い色の魚が一番素早く動けんだわ。黄色は普通、赤は最も遅い。ただし爆発の威力はその逆。青はそれ程でもないが赤がやばい。当たりどころが悪けりゃ一発で死ぬ事もあるかもしれねえぞ」
衆「随分色々教えてくれるんだな。親切のつもりか?」
達「言っただろ、一方的なのは嫌いだってよ」
衆「……ほんと変わってるなお前」
達「親切はここまでだ。お前の身体もすぐに透明にしてやるよ」
衆治はシザーハンズを構え態勢を立て直した。
続く
《人物紹介》
麻締 達八
身長167cm 18歳
嫌いなもの:漬け物
《UC紹介》
冷たい熱帯魚 体長0.07m×無数
持ち主:麻締 達八
能力:赤、青、黄の三種類の魚の大群。魚は全て何かに触れる事で爆発を起こす。色の種類によって機動力と爆発力が異なってくる。
《CC紹介》
アトミック・トレイン
特質:半径五十メートル程の円形の空間。中心の足場の周囲を蚊取り線香の様に一本の線路道がグルグルと周回している。車庫から発進した大量の爆薬を満載した列車、アトミック・トレインが線路を伝い猛スピードで中心部に迫ってくる。中心に到達した列車は大爆発を起こし下を流れるニトロに誘発して空間全域を破壊する。発車から到達までの猶予は五分前後とされている。




