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5-1話




吉隆を倒した後、二人は徹に吉隆を引き渡すとその足で二つの場所に向かった。一つ目はファッション店。先の戦いで傷だらけになった智琉の上着の代わりを探しにやって来た。ここで衆治は赤色を基調とした上着を智琉の為に購入した。

智「少し派手じゃないか?」

衆「いいじゃないか、似合ってるぞ。それにレッド・ドラゴンとお揃いだし」

智「……ワザとか?」

次にやって来たのは携帯ショップ。ここで約束通り衆治は一台のスマホを智琉に買ってあげた。

智「とりあえず無難な白を選んだけど正解だったな」

衆「ここまで来たら携帯も赤いのにしろよ」

智「絶対ヤダ」

買い物を一通り済ませた二人は昨日自分達が宿泊していたビルへ向けて町を歩いていた。しかし智琉は手に入れたばかりのスマホから目が離せずにいた。

智「これをこうして……ここをあーして……」

衆「おいスマホ初心者、歩きスマホだけはするな!」

智「何だそれ?」

衆「知らないのか。歩きながら携帯いじるなって事だ」

衆治に言われしぶしぶ智琉はスマホを新しい上着のポケットにしまった。

智「んで衆治、これからはどうすんだ?」

衆「この町にももう用事は無いからな。一応出て行くつもりだ」

智「て事は俺も一緒に出て行く事になるのか?」

衆「俺はそう考えてるが、はっきり言ってそれはお前の自由だ、別に強制はしない。一緒に来るって言うんなら多少の面倒は見てやる」

智「ありがとな。俺もそのつもりだ、お言葉に甘えさせてもらうよ」

衆「そうか。となりゃ早速出発したい所だが、とりあえず徹に挨拶ぐらいはしとかないとな」

智琉と衆治は徹に会う為にビルを目指した。

智「あ!」

衆「どうした?」

智「これ」

衆「ん?」

智琉は自分の着ている新品の上着の一部を指差した。そこには買った時の値札が付けっ放しになっていた。

衆「今かよ」

智「どうしよう、これ」

衆「んなもん、買った時に切ってもらえよ」

智「あー失敗した、本当どうしよう。切れそうな物も持ってないし…………。衆治、ちょっとだけシザーハンズ貸してくれ」

衆「断る」




ビルに到着すると丁度良く徹が待っていた。

徹「よっ、お二人さん」

衆「どうしたんだ?」

徹「あいつを捕まえてもらった礼をまだお前さん達にやってなかったろ。だからこうして待ってたんだぞ」

衆「そうか、丁度良かった。俺も言う事がある」

衆治は徹からの礼を受け取りつつ、この町を出発する旨を伝えた。

徹「何だもう行っちまうのか?」

衆「相当長居したからな。もう充分だ」

徹「智琉、お前さんもか?」

智「とりあえず衆治に付いて行くつもりだ」

徹「そうか、そりゃ結構」

徹はこの言葉に安心した。それは恐らく、アンノウンの知識が乏しい智琉の身の安全が一先ず確保された事にだろう。

徹「衆治、次の目的地は決まってんのか?」

衆「ああ、決めてるぞ」

徹「方角で言うとどっちだ?」

衆「……西かな」

徹「んじゃあ案山子男でお前さん達の重力を西側に向けて送ってやるよ、一瞬で着くぞ。まあ壁にぶち当たったら即お釈迦だけどな」

衆「分かってるならするな」

徹「冗談冗談」

徹の軽い悪ふざけもそこそこに三人は一番近くのバス停に向かった。丁度やって来たバスの乗車口が開くと二人は徹と最後の挨拶を交わした。

衆「世話になったな、色々面白い事も体験出来たぞ。特にこいつの事とか」

智「そうだな。俺も衆治のとこに来れたのも徹さんのお陰だしな」

徹「そこまで言って貰えると誇らしいなあ。この町にならいつ来てくれても良いからな。歓迎するぞ」

挨拶を終えると智琉と衆治はバスに乗り込んだ。バスが出発した後も徹はバスが見えなくなるまで二人を見送っていてくれた。




バスの車内で智琉は衆治に次の目的地に関して聞いていた。

智「衆治、これからどこに行くつもりだ?」

衆「ワンテーブルホームってとこだ」

智「ワンテーブルホーム?ってどういう場所だ?」

衆「小さな孤児院だ。俺も少し世話になった場所だ」

智「て事は衆治はその孤児院で生まれ育ったのか?」

衆「初めからそこにいた訳じゃない。俺は家族や友達を無くしたんだよ、五年前に」

それを聞いて智琉はハッとして、意味を理解した。

衆「未知の厄災で数え切れない程の人が死んだが、その中でも俺みたいに運良く生き延びた人もいる。そして助かった人達を救済したのが保安局であり、その時の俺みたいな小さな子供を保護した施設がワンテーブルホームという名の孤児院だ」

智「そんなとこがあったのか」

衆「今の俺にとっては、そこが帰るべき故郷ってな感じだな。そこにお前を連れて行く。て言ってもそこではアンノウンで何かするって事は無い。単に今後に向けて体を休めるってのと、後はまあ、たまには顔を見せるって約束だからそれを果たしに」

智「約束って誰とのだ?」

衆「ワンテーブルホームの管理人兼、俺達を面倒を見てくれた人。心壱(しんいち)さんって人でな、優しい人ではあるんだが少し真面目過ぎるとこもあるから気をつけないとって感じだ」

智「顔を出す様に言うって事はその人は相当過保護なんだな」

衆「いや、俺は特別って言うか、異例というか」

智「どういう意味だ?」

衆「…………実はな、俺一回だけその孤児院を家出した事があってな」

智「は!?家出!?」

衆「帰って来た時はまあ怒られてな、それからは孤児院を巣立っても俺だけ定期的に帰って来いって事になってんだ」

智「そりゃ完全にお前が悪いって話じゃねーか」

衆「んな事は分かってんだよ!だからこうして会いに行こうとしてんだろ!」

バスの車内にいる他の乗客の事など気にせず、二人は互いに声を張り上げた。

衆「兎に角だ、そこまではまだ時間がかかるから、とりあえず大人しくしてろ」

智「分かったよ。それにしても衆治って案外不真面目だったんだな。意外だよ」

衆「うるせー」

迷惑な客を乗せたままバスは走り続けた。




続く


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