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4-4話




吉「俺の負け、だと」

吉隆は目を血走らせて反応した。

衆「お前の戦い方はどうにも安直だ。自分のアンノウンの力もあまり熟知しているとは思えない。はっきり言って、お前は馬鹿だ」

衆治のその言葉に吉隆の怒りは頂点に達した。しかし、その心とは裏腹に吉隆の口から出た声は低く落ち着いていた。

吉「何度も言わせんなよ。空気ってのは目に見えない、目に映りようがねえんだよ」

衆「まだ言うか。いい加減……」

吉「俺が風をどんなふうに操ろうがお前達は食らうまでそれがわかんねえんだよなあ!」

吉隆の操るオールド・ボーイが再び右手を掲げ攻撃の態勢をとった。

衆 (またあの暴風を起こすのか。だが引っかかる、今のあいつの言葉が)

オールド・ボーイの腕が最初同様、衆治達に向けて勢い良く振り下ろされた。が、この時は少しおかしかった。突風を起こした時の大きな音は立たず、代わりに小さく素早い音が僅かに聞こえた。

衆 (何だ?何を……)

智「がっ!」

衆治が疑問に思ったその時、後ろにいた智琉の鈍い声が聞こえた。智琉はそのまま背中から倒れ込んだ。よく見ると智琉の上着には、鋭利な刃物で切ったであろう切り傷が無数に付けられていた。

衆「智琉!」

智「だ、大丈夫、傷がいったのは上着だけだ」

無傷の智琉にとりあえず衆治は安心した。

衆「お前、何をした?」

衆治は振り返り吉隆に質問を投げかけた。

吉「ただ風を起こすだけじゃねえ。空気を圧縮して勢い良く打ち出せば、何でも切り裂く鋭い(やいば)の様な風だって起こせんだよ」

衆「それで智琉に攻撃したのか?」

吉「今のは威力を最小限に抑えた風だ、人体に被害はいってない。今からお前に撃つのはオールド・ボーイの繰り出せる最も鋭い風の刃の連撃だ。お前は何かしらで風避けみたいなもんを纏ってるみたいだが、それ諸共バラバラに切り刻んでやるよ」

衆「饒舌(じょうぜつ)だな。それにしても、俺のシザーハンズを前に"斬る"なんて芸当を見せつけるなんて、随分と舐めてんなあ」

吉「おいおい、お前が言うかよ」

衆治は背後の智琉の方を振り向き指示を出した。

衆「悪い智琉、最後にもう一仕事してくれ」

智「え、ああ。何をする?」

衆治は右側の方にある高く無造作に積まれた土砂の山を指差した。

衆「あの土砂をレッド・ドラゴンで撒き散らしてくれ。かなり派手にな」

智「ああ、分かった」

衆治の意図は分からないが、智琉は言われた通りレッド・ドラゴンを使い建設現場一帯に砂を撒き散らした。

吉「何のつもりだ一体?」

レッド・ドラゴンによって巻かれた砂は大量に空中を舞っていた。その砂たちは衆治達の周りの空気の流れを鮮明に写していた。

衆「お前は空気が目に見えないものだと言ったな。だが、見える方法が無いとは言ってなかったよな。生憎(あいにく)、見えないものへの対策は得意なんだよ」

衆治のとった手段に吉隆は少しガッカリした表情をした。

吉「発想としちゃ悪かないんだけどなぁ、いまいち分かってねえみてえだな」

そう言うと吉隆の操るオールド・ボーイが、今度は両手を頭上に掲げた。

吉「見えるか見えないかはこの際重要じゃねえ。当たるか当たらないかだ。お前に繰り出すのは三、四撃じゃねえ。両手で起こす連撃は二十を超える。一撃でも当たりゃ痛みで動きは止まる。そうなりゃ後はお察し、目も当てらんねえ惨状だ。助かるには全てを避け切るしか無い。出来るかそんな事?」

衆「じゃあ俺も言わせてもらう。次に俺が繰り出す攻撃が終わった後、お前は自分の言葉を訂正する。本当に重要なのは見えるか見えないかって事をな」

吉「あっそ」

二人の間に一瞬、僅かな静けさが流れた。その次の瞬間、シザーハンズは地面を踏み込み凄まじい勢いで吉隆に向かって行った。吉隆オールド・ボーイの両腕を瞬時に振り下ろした。オールド・ボーイが起こした風はレッド・ドラゴンが巻いた砂により明確にその形が浮き出ていた。その光景は文字通り無数の風の刃となりシザーハンズに襲い掛かっていった。

衆 (普通の相手にその攻撃は有効かもしれない。だが……)

衆治が心の中で呟いた瞬間、衆治の見ている世界が急激にその速度を落としていった。舞い散る砂も、シザーハンズの勢いも、向かって来る風の刃も、全ての速度がスローになっていった。

シザーハンズの能力は自身の体感時間を限界まで圧縮する事で、目に見える世界の動きを遅くするというものである。その為、向かって来る攻撃に対し通常の人の何倍も長く観察する事が出来、そしていち早く反応、対応する事が出来る。衆治は風の刃の一撃一撃の軌道をよく観察し、その次の攻撃も読みながらシザーハンズを上手く回避させていった。最後の一撃を躱した時、衆治の見る世界も正常に戻った。

吉「んなっ……!」

目の前の事態を受け入れられない吉隆を余所に、シザーハンズはオールド・ボーイにそのハサミによる斬撃を深々と食らわせた。オールド・ボーイが致命的なダメージを負った事により、吉隆はその場に倒れ込んだ。

衆「言っただろ、重要なのは見えるか見えないかだと。お前の攻撃が見えてなけりゃ俺も避けようがない」

そう言いながら衆治は地面に倒れた吉隆に歩み寄った。

吉「あ……あ?」

衆「俺の機転で作った砂の霧もまた大きな突風を起こせば簡単に掻き消せた。お前にはそれが出来たがしなかった。風の刃での攻撃にこだわってその選択を完全に放棄したんだ。だからお前は馬鹿だと言ったんだ」

吉「お前の戦法に……まんまとハマった……って訳か。けどな……何もかも……お前の思い通りってのだけはしたくねえ……。俺が言った言葉は……絶対に訂正しねえ……。自分がとった行動は…………決して……後悔しねえ……」

その言葉を最後に吉隆は気を失った。

衆「あっそ」

戦いを終えた衆治のもとに智琉が近づいて来た。

智「終わったのか?」

衆「ああ、お前のおかげでな」

智「よくあの攻撃を避けたな、俺じゃ無理だよ。何か能力が関係してんのか?」

衆「それに関しても説明するよ。にしても随分酷くやられたなその服」

智「ああ、もうこの服は着てられない。新しい上着買わないとな」

衆「また一つ目標が増えたな」

衆治の言葉に二人は目を見合わせながら笑った。




続く



UCアンノウンカード紹介》

シザーハンズ 身長2m

持ち主:染ヶ谷 衆治

能力:体感時間を圧縮する事で目に見える景色の速度を遅らせる。身体の動作も遅くなるが意識は衆治のみが正常のままなので、景色のあらゆる変化にいち早く反応し対応する事が出来る。また、誤差程度ではあるが能力発動中は僅かに早く動く事が可能である。


オールド・ボーイ 身長2m

持ち主:役坂 吉隆

能力:風を自在に操る事が可能。強力な突風や鋭利な風の刃など風に関して出来ない事はほぼ無い。その気になれば小型の台風を作る事も可能である。


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