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4-2話




衆治の後ろを着いて行く智琉は、前方の衆治に質問を投げかけた。

智「衆治、今から捕まえる奴の情報は俺には教えてくれないのか?」

衆「ああ悪い、それを言うのをすっかり忘れてた。まあそれだけ携帯を持ってないってのが衝撃的だったからな」

智「まだ言ってる」

衆「名前は役坂(やくさか)吉隆(よしたか)、性別は男、歳は俺達より少し上だそうだ。徹から顔の写った写真も送られてきたぞ」

衆治は自分のスマホの画面を智琉に見える様にして向けた。スマホには一人の男の全身とその(かたわ)らに(たたず)む人型のアンノウンが写った写真が見えた。

智「こいつが吉隆、俺達が捕まえる相手だな。で、一緒に写ってるのが……」

衆「吉隆のアンノウンと見て間違い無いだろうな」

智「名前は?」

衆「分からん。勿論能力もだ。だが吉隆自身の情報は少しある。そいつはアンノウンを使って強盗紛いな盗みを働いたり人に怪我を負わせたりと、典型的な悪人だそうだ」

智「嫌な典型だな」

衆「仲間とかはいないと聞いてるからそこまで手間のかかる仕事じゃないと思うぞ」

衆治は諭す様に智琉に言い聞かせた。

智「そういや仕事って言ってたけど、これって捕まえたら報酬が出るのか?」

衆「ああ、徹から受けた仕事だからな。報酬というか謝礼も徹から出る筈だ。保安局から出る報酬に比べたら貧相な額だろうけどな」

智「金の為、ってか?」

衆「人が行動を起こすきっかけってのは大概金だ」

若干引っ掛かるとこもあったが、智琉は衆治の言葉を納得した。その後、しばらく普通に歩いていたが、急に衆治が口を開いた。

衆「智琉、お前はこれからいろんな連中と戦っていく事になるだろうが、アンノウンの戦い方に関して一つ教えておく」

智「なんだよ、いきなり?」

衆「昨日の戦いで俺もお前も取らなかった戦法が一つある。アンノウンの持ち主本人への攻撃だ」

智「持ち主への攻撃?」

衆「アンノウンってのは強大な力や異質な能力を持っている。こちらもアンノウンで対抗するにしても真正面からやり合っても勝てる可能性が低い事もある。そんな時に殆どの奴が取る行動が持ち主への直接攻撃だ。自身のアンノウンを自在に操れるってだけで持ち主自体の力は普通の人間だ。アンノウンを相手するよりもよっぽど確実だ」

智「確かに、そうかもしれないな」

衆「だから智琉、お前も覚悟しておかないといけない」

智「覚悟って、俺自身も攻撃受ける可能性に対しての覚悟か?」

衆「それもある。が、俺が言ってるのは違う。お前が勝てないと感じた相手に、お前自身が相手の持ち主を攻撃する事への覚悟だ。相手に怪我を負わせる、最悪殺してしまう事もある、その事に対して覚悟を持てって意味だ」

衆治は他者を傷付けると言う野蛮な行為の重要性と責任を説いた。しかし、智琉はどこかバツの悪そうな顔をした。

智「えっと、覚悟っていうものがあるかで聞かれたら、多分まだ無い……。けど、持ち主への攻撃っていうのなら……実はもうある」

衆「は?あるってどういう事だ?」

智「一番最初に戦った時、相手のアンノウンの攻撃でじいちゃんが致命傷を負って、その事に我を忘れてレッド・ドラゴンにそいつの片腕を食い千切らせちゃってさ」

衆「ちゃってさって……。まあ良い、そういう経験があるなら多少の心配は減る。大事な事だ」

衆治の言葉には感嘆と呆れが混ざっていた。それを聞いて少し得意げな表情の智琉に対して衆治は言った。

衆「俺が思ってる以上に、俺がお前に教えてやれる事って無いのかもしれないな」




昼前になり、ようやく二人は目的の場所に到着した。そこは何かしら大掛かりな建物の建設現場だった。鉄骨で建物の骨組みなどが作られてはいるが外壁はまだ作られていない。が、所々シートが掛けられていて建物内は全ては見通せない。建物の周囲には予備であろう鉄骨や鉄パイプ、砂の山などがあった。

智「ここってまだ建設途中じゃないのか?」

衆「ショッピングモールが立つ予定みたいだが、どうやら建設中止になってるみたいだな」

智「この建物?の中に吉隆は潜んでると?」

衆「徹の情報ではここらしい。とりあえず入ってみるぞ」

二人は目の前の未完成の建物に足を踏み入れて行った。吉隆がこの建物のどこにいるのかは分からない為、二人は周りを注意して見ながら音を立てずに進んで行った。

智「こんな時だけど衆治、徹さんはどうしてお前にこんな事頼んだんだろうな?」

衆「さあな、それは俺にもよく分からん。だが別にそこまで大きな問題じゃない。分からない事を無理に理解する必要は無い。大方おおかた俺の力を知った徹が奴をとっ捕まえるのに都合が良いって判断したんだろう」

智「衆治ってさ、一体……」

智琉がそこまで言いかけた時、衆治は急に智琉を黙らせた。

衆「静かに。ゆっくり覗いてみろ」

衆治に(うなが)されるまま、智琉は曲がり角から先を覗いた。智琉の視線の先には衆治に見せられた写真に写っていた男の姿があった。

智「吉隆!」

衆「とりあえず居るのは分かったな。さて、こっからどうやってあいつを捕まえるかだな。捕まえるだけなら不意打ちって手もある。が、あいつもアンノウンを持ってる以上捕らえた後に反撃してくるのは明白だ。まずは奴のアンノウンを無力化させる必要がある」

智「て事はつまり……」

衆「不意なんか突かず正面からやり合う。なんだかんだでこれが一番単純で良い」

智「結局それか。まあ、その作戦には俺も賛成だ」

衆「よし、行くぞ」

衆治と智琉は角から出て吉隆の前に姿を現した。

吉「な、なんだお前ら!?」

突然の来訪者に吉隆は慌てた。

衆「一応確認しておく。吉隆ってのはお前の事であってんだな?」

吉「だから何なんだよお前らは!?」

衆「……もしお前が吉隆だってんなら、俺達はお前を捕らえに来た」

衆治はその言葉と共に自らのカードを具現化した。それを見て智琉もカードを具現化させた。

吉「……あー、そういうアレか」

衆「俺はお前の質問に答えた。お前も俺の質問に答えろ」

衆治は鋭い目付きで吉隆を睨み付けた。

吉「そうだ、俺の名前は吉隆だ。お前らが来た訳もなんとなく分かった」

衆「アンノウンを出すんなら待ってやる。抵抗せずに降伏するんならそれでも良い。選ばせてやる」

吉「親切だな。後悔すんなよ」

吉隆の手にも具現化されたカードが出現した。




続く


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