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4-1話




夜、星空の下、智琉と衆治は屋上で煙の上がる七輪を囲んで座っていた。七輪の上では手羽先が焼かれている。

衆「そら、こっちは焼けてるぞ。食え」

衆治は香ばしく焼けた手羽先を三つ、紙皿にのせ智琉に手渡した。

智「サンキュー」

智琉は手掴みで手羽先を持ちかぶりついた。

智「うん、美味いな」

衆治は箸で七輪の上の手羽先をひっくり返しながら喋りだした。

衆「で、お前はアンノウンに関して何が知りたい?」

智「何がっていうか……」

衆「質問が悪かったな。お前はアンノウンに関してどのくらい理解している?」

智「一応、徹さんから一通りの事は聞かされたくらいだけど……」

衆「そんじゃ(ほとん)どの事は分かってる訳だ。それ以上俺が教えれる事なんて無いと思うが」

智「そうなのか?」

智琉はほんのしばらく考え込んだ。そんな智琉に対し、衆治の方から質問が来た。

衆「逆に俺から一つ質問させてもらってもいいか?」

智「え、ああ、どうぞ」

衆「俺との戦いで、お前は最後シザーハンズのハサミにエネルギーを付着させたよな」

智「やったな」

衆「あの時どうしてお前はそのエネルギーを重くさせたんだ?」

智「……どういう意味だ?」

衆「あの場面ならエネルギーを重くさせる以外にもっと方法があったと思うんだ。炎なり爆発物なりに変化させてシザーハンズにダメージを与えるみたいな、もっと効率の良い手段が。そうすれば俺とお前の勝敗も変わっていたかもしれない」

智琉がその問いに答えるのに、さほど時間はかからなかった。

智「まあなんて言うか、そんな複雑な物にはまだパッとは変えられないってのもあるけど……」

衆「けど?」

智「衆治言ってたよな、アンノウンを悪用する奴にしかハサミは向けないって。俺もそんな感じだ。俺は衆治に対して敵意を持ってる訳じゃないし、そんな相手に大怪我させる様な事はしないってだけだ」

衆「そうは言うが、俺はお前が疲弊するくらいはレッド・ドラゴンに対して攻撃したぞ。そんな相手でも怪我はさせないってか?」

智「ああ、しない。もしそれで、俺が少し怪我するだけで済むならそれで良いんだ」

衆「危険な考え方だな。誰かと戦う上でそういう考えは捨てた方が良い。……が、個人的にはそういう性格は嫌いじゃない」

衆治は呆れつつも、智琉の考え方に僅かに同意した。

智「じゃあ衆治、アンノウンに関してじゃなくてお前に関しての質問でもいいか?」

食べ終わった手羽先の骨だけがのった紙皿を渡しながら、今度は智琉が質問した。

衆「俺の事か。別に良いが大した話は無いぞ」

七輪の上の手羽先にタレを塗りながら衆治が言った。

智「衆治ってさ、五年前の災害の被害にあってるんだよな?」

衆治の手が一瞬止まった。

衆「……それも徹から聞いたのか?」

智「うん、まあ……」

衆「で、それを聞いてお前はどう思ったんだ?俺に同情や哀れみでも向けたか?」

その問い掛けに智琉は何も言えなかった。衆治はすぐにまた手を動かしながら語り出した。

衆「五年前、未知の厄災で俺はいろんなものを失った。家も家族も友達も、ありとあらゆるものが消えた。けどな、失ってばかりじゃない。その経験を踏まえて得たものもある。少なくとも俺はそう思う様に心掛けている。だから俺に同情なんてするなよ」

衆治は新しい紙皿に焼けたばかりの手羽先を四つのせ、智琉へと渡した。

智「俺もさ、両親はいないんだ」

衆「…………」

智「三年前、家族三人で行った遊園地で事故があって、それで……」

衆「……そうか、お前も気の毒だな」

智琉の話に衆治はあまり多くの言葉は使わなかった。

衆「智琉、俺はあの時、全てを失った時に自分に目標を立てたんだ。大したものは無い、ほんのちっぽけな目標だ。それでも人ってのはな、目標があれば頑張れる。向かうべき場所があれば前に進める。だから俺も今こうしてここにいる。お前も何かしらの目標を持て。それが今俺が言える事だ」

衆治の言葉に智琉は笑顔を取り戻した。

智「ありがとう。そうするよ」

智琉は新しく渡された手羽先にかぶりついた。

衆「そういやお前はアンノウンに関してもっと詳しく知りたいって言ってたな」

智「ああ、そう言った」

衆「じゃあとりあえずはそれが目標だな。しばらくは俺と一緒に行動してくれ」

智「そうする。というかそのつもりだったし」

衆「決まりだな。じゃあ明日からだ。残った仕事の処理を手伝ってくれ」

智「残った仕事?」

衆「徹から依頼されてた案件が一つあってな、ある奴を捕まえてくれって話だ。勿論、そいつもアンノウンを使う奴だ。詳しくは明日また徹に聞くがあまり難しくはないと思うぞ」

智「難しくないってのは衆治にとってであって俺からしても簡単って訳じゃ……」

衆「とにかく手伝ってくれ。人手不足ってやつだ」

智「そう言うもんなのか」

二人は晩飯を終えると、それぞれビルの中にある部屋で泊まり明日に備え就寝した。




翌朝。二人は昨日泊まったビルの前で集合した。

智「とりあえず徹さんを待つのか?」

衆「いや、もうこのまま出発する」

智「出発って、捕まえる奴の事は聞かなくていいのか?」

衆「その事ならさっき携帯であいつに聞いた。もう直接会う必要は無い」

そう言うと衆治はどこかへと歩き始め、それに着いて行く様に智琉も歩き出した。

衆「そうだ。これから一緒にいる以上、お前の連絡先も把握しとかないとな。智琉、お前の携帯出してくれ」

智「俺携帯持ってない」

衆「………………は!?」

衆治は智琉に出会ってから一番の驚きを見せた。

衆「持ってないってどういう事だ、携帯無しでどうやって生きてきた!?」

智「俺が住んでた所すげー田舎だったし知り合いもあんまりいないから、無くても特に困らなかったけど」

衆治はあまりの事実に絶句すると共に、智琉に哀れみの眼差しを向けた。

智「何か言われの無い同情を向けられてる気がするんだが」

衆「仕方ない、これが終わったらまずお前の携帯の購入だな」

智「また一つ目標が増えたな」

衆「……ああ、そうだな」

衆治が智琉の楽天家な部分に呆れながらも、二人は歩みを進めた。




続く


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