第5話 どこで見られているかわからない(side:イスクール)
「こちらは家政の授業で、コニファーが刺繍したハンカチーフです。私が刺したものと交換しました」
「これは見事だな!」
「…チューリップの花一輪のみですが…しかもアウトラインだけの…」
「うん、とても素晴らしい!」
彼女は昔から細々とした作業が苦手だ。
けれど、苦手なりに丁寧に仕上げようという気概が感じられる。
「あ、あのっ 私刺繍は得意で、他にもありますの。これは四隅に薔薇の花を刺したもので…」
そう言いながら、なぜか自分が刺したものを僕の前に差し出して見せた。
コニファー以外の物に興味はない。
だが、このハンカチーフを手に入れられたのは彼女のおかげだ。
一応、褒めておこう。
「ああ、いいね。それより、学院でのコニファーの様子を聞かせて欲しい。彼女に無体な事をする男性教師や事務員とか…いない? あと言い寄ってくる男とか? 彼女、大丈夫だろうか?」
「……はい、楽しそうに過ごしております」
「そうか…」
僕がいないのに楽しく過ごしている事が少し悔しい。
けど、君が笑顔でいる事が一番大切だから…我慢しよう。
デュボア嬢にコニファーの監視…んんっ、見守りをお願いしてから1ヵ月。
今日はコニファーが刺したハンカチーフを受け取るために出向いた。
郵便だと日数がかかるのでやむを得ず。
もちろん二人きりではない。
近くに侍従のルークが控えている。
先日は美術の授業で描いた絵だったな。
モチーフは胸像だったそうだが…動物に見えたのはなぜだろう?
けど、一生懸命書いている姿が目に浮かぶ。
ああ…同じ学院に通いたかった!
「どうもありがとう。また、コニファーに関しての報告ができたら手紙にて送って下さい」
僕は席を立った。
「え、もう…お帰りですか?」
「うん、必要な物は貰ったし、聞きたい事は聞いたから」
「あ、そ、そのっ ハンカチーフッ」
「うん?」
「…大切にしていたコニファーから貰ったものをイスクール様に差し上げた代わり…といっては憚られますが…できましたら…」
「…ああ、そうだね」
価値あるコニファーの手刺しのハンカチーフをいただいたのだ。
新しいハンカチーフを贈るのは礼儀だな。
「僕の侍従を伴い、新しいものを購入してくるといいよ」
「え!? い、いえ…その…ご、ご一緒に…」
僕の言葉が意外だったのか、戸惑っているデュボア嬢。
「一緒に? 僕が君の買い物に付きそう必要があるのかな?」
コニファー以外の女性の買い物に付き合いたくない。
まぁ、身内は別だけど。
「そ、れは…その…コニファー…そうっ! コニファーへ贈り物を探すのはいかがですか?」
「コニファーに? そうか…間接的とは言え、コニファーからこんな素敵なハンカチーフを貰ったんだ。お礼をしなければね」
デュボア嬢は良い事に気づかせてくれた。
危うくコニファーに対して礼儀を欠くところだった。
ここら辺なら…すぐ近くにコニファーがよく行く洋装店があったな。
そこに行こう。
僕はデュボア嬢と店を出て、洋装店へと向かった。
そこでコニファーのために厳選したハンカチーフを選んだ。
まさかこの状況をコニファーに見られていたなんて思いもせず…




