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知らないのは、あなただけ  作者: Kouei


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5/11

第5話 どこで見られているかわからない(side:イスクール)

「こちらは家政の授業で、コニファーが刺繍したハンカチーフです。私が刺したものと交換しました」


「これは見事だな!」


「…チューリップの花一輪のみですが…しかもアウトラインだけの…」


「うん、とても素晴らしい!」


 彼女は昔から細々とした作業が苦手だ。

 けれど、苦手なりに丁寧に仕上げようという気概が感じられる。


「あ、あのっ 私刺繍は得意で、他にもありますの。これは四隅に薔薇の花を刺したもので…」


 そう言いながら、なぜか自分が刺したものを僕の前に差し出して見せた。

 コニファー以外の物に興味はない。


 だが、このハンカチーフを手に入れられたのは彼女のおかげだ。

 一応、褒めておこう。


「ああ、いいね。それより、学院でのコニファーの様子を聞かせて欲しい。彼女に無体な事をする男性教師や事務員とか…いない? あと言い寄ってくる男とか? 彼女、大丈夫だろうか?」


「……はい、楽しそうに過ごしております」


「そうか…」


 僕がいないのに楽しく過ごしている事が少し悔しい。

 けど、君が笑顔でいる事が一番大切だから…我慢しよう。


 デュボア嬢にコニファーの監視…んんっ、見守りをお願いしてから1ヵ月。


 今日はコニファーが刺したハンカチーフを受け取るために出向いた。

 郵便だと日数がかかるのでやむを得ず。


 もちろん二人きりではない。

 近くに侍従のルークが控えている。


 先日は美術の授業で描いた絵だったな。

 モチーフは胸像だったそうだが…動物に見えたのはなぜだろう?

 けど、一生懸命書いている姿が目に浮かぶ。

 ああ…同じ学院に通いたかった!


「どうもありがとう。また、コニファーに関しての報告ができたら手紙にて送って下さい」


 僕は席を立った。


「え、もう…お帰りですか?」


「うん、必要な物は貰ったし、聞きたい事は聞いたから」


「あ、そ、そのっ ハンカチーフッ」


「うん?」


「…大切にしていたコニファーから貰ったものをイスクール様に差し上げた代わり…といっては憚(はばか)られますが…できましたら…」


「…ああ、そうだね」


 価値あるコニファーの手刺しのハンカチーフをいただいたのだ。

 新しいハンカチーフを贈るのは礼儀だな。


「僕の侍従を伴い、新しいものを購入してくるといいよ」


「え!? い、いえ…その…ご、ご一緒に…」


 僕の言葉が意外だったのか、戸惑っているデュボア嬢。


「一緒に? 僕が君の買い物に付きそう必要があるのかな?」


 コニファー以外の女性の買い物に付き合いたくない。

 まぁ、身内は別だけど。

 

「そ、れは…その…コニファー…そうっ! コニファーへ贈り物を探すのはいかがですか?」


「コニファーに? そうか…間接的とは言え、コニファーからこんな素敵なハンカチーフを貰ったんだ。お礼をしなければね」


 デュボア嬢は良い事に気づかせてくれた。

 危うくコニファーに対して礼儀を欠くところだった。

 ここら辺なら…すぐ近くにコニファーがよく行く洋装店があったな。

 そこに行こう。


 僕はデュボア嬢と店を出て、洋装店へと向かった。

 そこでコニファーのために厳選したハンカチーフを選んだ。


 まさかこの状況をコニファーに見られていたなんて思いもせず…


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