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知らないのは、あなただけ  作者: Kouei


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2/11

第2話 どうしてこんな事になったんだ!?(side:イスクール)

「…………」


 ペタッ


「ハッ!」 


 おでこに張り付いたものに触れる。


「…葉っぱ………ぼ、僕は…?…」


 立ったまま、気を失っていたのか?


 そうだ!

 さっきまでコニファーがいて…


「ま、待ってっ コニファーッ! ま…っ」


 ドサッ


 慌ててコニファーを追いかけようとしたが、足に力が入らずへたり込む。

 もうとっくにコニファーの姿はないというのに…


 コニファーは、あの男と共に去って行った。

 僕以外の男と腕を組み、僕以外の男に身を寄せ、僕以外の男と……



 言葉が出ない。

 身体が動かない。



「きゃああああ!」


「人が倒れたぞ!」


 女性の劈(つんざ)く悲鳴と騒めく喧噪(けんそう)が、どこか遠くで聞こえた。


 そして…

 次の瞬間、世界が真っ暗になった――――――…




「…お気づきになりましたか、イスクール様」


 目を開くとそこには侍従のルークがいた。

 その向こうには見慣れぬ天井。


「ここは…」


 場所を確認するように、左右に首を振る。


「病院でございます。イスクール様は公園でお倒れになり、こちらへ運ばれました。身分証明書を確認した病院から連絡を受け、お迎えに上がりました」


 病院…

 どうやら僕は、あのまま卒倒してしまったようだった。

 そしてまたあの悪夢が頭の中に蘇る。



『私は婚約者のあなたがいる身にも関わらず、他に好きな人ができました。なので、私との婚約は破棄して下さい』



 なんで…どうして僕以外の男を好きに?

 僕の何が嫌になったんだ?!



『けど、あなたも他に好きな人ができたのですから、慰謝料に関しては相殺して下さいね』



 他に?

 誰の事言ってるんだ?!



『これでイスクール様は本当に愛する方を迎える事ができますわ』



 本当に愛する方って…君だよ、コニファー!

 君以外にいるわけがないだろ!?


「なぜ…っ!」


 僕は両手で目を塞いだ。

 受け入れがたい現実を拒絶するかのように。



 突然の婚約破棄。

 おまけに恋人ができたという衝撃の告白。

 さらにはその男にしな垂れかかり、立ち去って行ったコニファー。


 君以外に愛する女性なんかいるわけないのに…それなのに君は僕以外の男の腕を取り、その腕にっ!……どうして、どうしてこんな事になったんだ!!


 理解できない出来事に、僕の心はどうにかなりそうだった。


「…イスクール様、こちらが傍(そば)に落ちていたそうです」


 そういって差し出されたのはリボンが付いた小さな箱。

 コニファーに贈るために買ったハンカチーフ。


 彼女と男の姿が、脳裏をかすめる。


「こんなもの!!」


 ガンッ!


 それを乱暴に受け取ると、病室の壁へ投げつけた。

 僕は頭を抱えて、愛する人の名を呟く。


「コニファー…」

 


 僕たちが初めて会ったのは7歳の時だった ―――――



 春を映し出したような桃色の唇。

 爽やかな新緑を映し出す瞳。

 やわらかな秋色の髪。

 雪景色を彷彿させる白い肌。

 そしてぷっくりとした頬。


 君の愛らしさに僕の心は秒で奪われた。


 慣れないカーテシーをしようとして倒れてしまったコニファー。

 そのしぐさもたまらなく可愛かったな。


 僕は倒れた彼女の隣で、一緒に横になった。


 そのまま挨拶をしたら、面白そうに笑ってくれたよね。

   

 祖父たちが勝手に言い合っていた婚約。

 でも僕は真剣だった。


 祖父たちの話を聞いてコニファーも笑顔を返してくれた時、彼女も同じ気持ちだと思った。



『結婚? コニファーと?』

『ずっと一緒? イスクと?』

『『うん、結婚する!』』



 その想いは成長しても、互いに決して変わる事はない。

 …そう思っていたのに。


 なのに、僕以外に好きな男ができたと…


 僕に君以外に好きな…人…が…?


 ……どうしてコニファーがそう思ったのか分からない。

 けど…誰の事を言っているのかは察しがついた。


 コニファーの友人であるデュボア・コンソールだ。

 


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