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第2話 装備とスキルを検証してみよう!

 □中堅の森


 夏休み初日、午前10時。


 シンとメイクはブイモンにログインした。

 足を運んだのはG2エリアである中堅の森。


 中堅の森に出没するモンスターはG1・G2を含めた全55種。

 G3モンスターが現れることはない。


 2人はデスぺナの心配がほとんどない中堅の森でやりたいことがあるのだ。


「今日は俺が手に入れた【真の覚醒者】と装備の性能を調べていこう」


 シンは少しワクワクした様子で話した。


 インフィニット・バラエティ・スライムとの戦闘で取得条件を満たし、手に入れたオリジナル・スキル【真の覚醒者】。


 インフィニット・バラエティ・スライムを討伐して手に入れたイレギュラー装備〖千変万化のアーマー〗。


 ついでに、白い仮面をつけた女子に借りた剣〖廻拓かいたくの剣・黒〗。


 上記3つの使い勝手を中堅の森で試すのがシンの狙いだ。


 仮面女子に関してはニートが捜索中。

 見つかり次第、〖廻拓の剣・黒〗は返すつもりだが。

 それまでは有難く使わせてもらおうと思い、能力を確認しておく感じだ。


「ワクワクするね~! 能力自体はスキル欄や装備欄から確認できるけど、実際に使ってみないと分からないことって多いし!」


 メイクはルンルン気分で歩いている。

 シンが強くなったことを誰より喜んでいるのが彼女だ。


「ふんふふ~ん!」


 鼻歌を歌いながら森を闊歩かっぽするメイク。

 それを微笑と共に眺めるシン。


 そうして2人が中堅の森を歩いていると見知った顔に会った。


「よぉ、ガキども昨日ぶりだな~」

「あー! 昨日のお二人さんじゃん!」


 声をかけてきたのは、昨日インフィニット・バラエティ・スライムと戦う前に出会った騎士2人組だった。


 騎士Aは190センチ近い身長のイケメン。

 金髪にライトグリーンの瞳をしており、どこか脱力した雰囲気をまとっている。


 騎士Bはピアスを複数つけたチャラそうな少年。

 暗赤色の髪と、暗い金色の瞳をしており、八重歯が印象的だ。


 騎士A・Bは治安維持を目的に活動するPKKギルド〈ライフ〉のメンバーである。


 〈ライフ〉はルーキーの保護を重要視している。

 中堅の森がルーキー用のエリアということもあって、森林内を巡回していたのだ。


「どうも」

「こんちは~!」


 シンとメイクは簡単に挨拶をしながら、騎士たちの横を通り過ぎようとする。


 昨日も言ったが、シンはリアバレを嫌っている。


 アバターメイキングで身長を4センチ盛ったことや、目を金色にしたことなど。

 リアルでの知り合いに、アバターを見られるのが恥ずかしいのだ。


 まして相手が担任と同級生ならば、学校へ行くたび気まずい思いをすることになりかねない。


 どうか気づくなよ、という思いでシンが彼らの横を通り過ぎようとした時。

 少年騎士Bが元気よく声をあげた。


「それにしてもすごいね! 君でしょ? EBM倒したシンって!」


「……っ」


 何と答えたらいいものか、迷っている間にイケメン騎士Aが反応する。


「へぇ、昨日の騒ぎを収拾したんか~? やるじゃねぇか、ガキんちょ~」


「あー、人違いじゃ……」


 何とか場を切り抜けたいシン。

 しかし、少年騎士Bが追い打ちをかける。


「でもオレ、君が戦ってるの見てたし。なんなら君、タルランタで“期待のルーキー”もとい“新星”なんて異名で呼ばれてるし!」


「そりゃすげぇな~。有名人じゃねぇか」


「ケンケンは仕事あるから、昨日すぐにログアウトしちゃったもんな!

 オレは〈ライフ〉の仕事も終わったし、騒ぎを見てたんだよ! 野次馬根性だな!」


 騎士たちはそう言って笑い合っている。


 ともかく『シン』が『晋』であることはバレていないらしい。

 騎士達の反応からシンとメイクもそれを察する。


 それはいいとして、少年騎士Bの話を聞いてシンは1つ面倒に思ったことがあった。


(誰だよ、俺を“新星”なんて呼んでるのは……)


 有名になるとゲーム攻略に支障が出かねない。

 シンはメイクとゲームができていれば満足なのだ。

 不要な問題が起こらなければいいのだが……。


「あのー、もう行ってもいいですか?」


 なるべく顔を隠しながらシンが質問すると、騎士A・Bは揃って笑みを浮かべた。


「お~、うちのキョースケが呼びとめちまって悪かったな~。それと夏休み楽しめよ、ガキども~」

「じゃあね、お二人さん! それとケンケン、この二人は学生じゃないかもしれないぜ。アバターなんて若く設定できるんだから!」


 大人騎士Aはケンケン。

 少年騎士Bはキョースケと言うらしい。


 シンは2人の名前を記憶しつつ、口を開いた。


「お仕事、頑張ってください」

「またね~!」


 シンとメイクの返答を受けて、騎士達は楽しげに森の中へと消えていった。



「はぁぁぁぁぁ……」


「シンにしては珍しく長い溜息だね~」


「リアバレは恥ずかしいから。細心の注意を払わないと……もうあの2人には会わないと思ってたのに……」


 ブイモンの世界は広大だ。


 昨日、2人が訪れた棍棒巨人の集落は全周が1000キロ程ある。

 そのようなエリアがブイモンにはいくつも存在するのだ。


 つまり、この世界で同一の人物と連日出くわす可能性は極めて低い。


「とにかく色々と検証してこうか。走る準備できてる?」


 シンは騎士達と会ったことを忘れるように、思考を強引にシフトする。


「もち! モンスター見つけて色々と検証して見よ~!」


 メイクはシンの質問に元気よく答えた。


 そうして2人は中堅の森の中を走り出す。



 その後、シン達はスライム種やゴブリン種、コボルド種やスケルトン種などを相手にスキルや装備の性能を試した。

 考え付く限りの使い方で、活かし方を模索するように。


 そうして30分ほどが経って、シンとメイクは諸々の検証を終えた。


「いや~! いろんなモンスター相手に戦ったね~! 早速、検証結果まとめよ~!」


「そうだね。まずはインフィニット・バラエティ・スライムの討伐報酬〖千変万化のアーマー〗から」


 シンは上半身に身に着けた漆黒の鎧を見やる。

 装備の基本情報は以下だ。


 ――――――――――

 装備名:〖千変万化のアーマー〗

 種別:上半身

 等級:G4


 内容:インフィニット・バラエティ・スライムの討伐報酬。

 VIT+537(使用する度に補正値が緩やかに上昇)


 装備者の思考に伴って形状を自在に変化させる。


 敵を倒した時、倒した敵からリソースを吸収・貯蔵する。


 保有スキル:【インフィニット・インカーネーション】


 〖千変万化のアーマー〗に蓄えられたリソースから魔法球を具現化・放出する。

 魔法球の威力は消費リソースの3乗となる。


 スキル発動後、〖千変万化のアーマー〗に貯蔵されていたリソースは0となる。


 現リソース・ストック→『1%未満』

 ――――――――――


 基本情報はこんな感じだ。


 なお、イレギュラー装備は使用するごとにステータス補正値を向上させる。

 EBMがレベルを上げて成長するように、イレギュラー装備も成長するという特徴を持っているのだ。


「使ってみた感覚はどんな感じ~?」


「面白い装備だと思うよ。スキルはリソース不足で満足な威力は出なかったけど、形状を自在に変えられるのが面白い」


 イレギュラー・スキル【インフィニット・インカーネーション】は、インフィニット・バラエティ・スライムが戦闘終盤に使った最終奥義を模したものだろう。


 〖千変万化のアーマー〗に十分なリソースが溜まれば、強力な魔法球を生み出すことができるはずだ。


 なお、リソース・ストックが『100%』の状態で【インフィニット・インカーネーション】を発動した場合、魔法球の威力は『100×100×100』となり100万となる。

 もちろんリソースをストックするには手間がかかり、一度使えばストックもなくなるために連発はできないが、強力なスキルと言える。


 シンの感想を聞いたメイクも〖千変万化のアーマー〗に対する所感を述べる。


「肝は“思考に伴って”形状を変えるところだよね~。

 シンの反射神経なら攻撃される箇所に〖千変万化のアーマー〗を集中させて、敵の攻撃を完全パリィできるし!」


 メイクの言うように〖千変万化のアーマー〗を完璧に使いこなせば、敵の攻撃をパリィすることも容易になる。

 例えば、攻撃される箇所が腕なら〖千変万化のアーマー〗を腕へと流動させてパリィするのだ。


 実際、シンもG2モンスター相手にはパリィできたが……。


「持ち上げすぎだよ。今日パリィが成功したのだって、相手がG2モンスターだったからだと思うし……」


 自信なさげなシンに対し、メイクは胸を張って告げる。


「シンの方こそ、これからはウチと肩を並べてくれるんじゃなかったの?

 自信もってこ~よ。大丈夫、シンなら使いこなせること間違いなし!」


 メイクの眩しいほどの笑みを受けて、シンの口角も自然と上がる。


「……そう言われると返す言葉がないな。完璧に使いこなせるように頑張るよ」


「その意気だ~!」


 〖千変万化のアーマー〗の話はこれにて終了。


 続いて、話題はシンが右手に握る剣〖廻拓の剣・黒〗に移った。


「次はシンが謎の“女の子”に借りたっていう〖廻拓の剣・黒〗だね~」


 メイクはなぜかムスッとしている。

 気のせいか『女の子』という言葉をやけに強調していた気がする。


「何か怒ってる?」


「別に~。怒ってないけど~」


(ああ、怒ってるな)


 シンはメイクと幼馴染だ。

 ゆえにメイクが腹を立てていることくらい分かる。

 こういう時はそっとしておくのがベストだということも。


 なお、シンは恋愛方面では鈍感だ。

 というよりも、自分に自信がないために『自分なんかを好きになる人はいない』と思い込んでいる。

 そのため、メイクから向けられる恋愛感情には気づいていない。


 とりあえず、シンはメイクの顔色を窺いつつ口を開いた。


「えっと……まず〖廻拓の剣・黒〗の基本情報をまとめようか」


 〖廻拓の剣・黒〗の基本情報は以下だ。


 ――――――――――

 装備名:〖廻拓の剣・黒〗

 種別:剣

 等級:G5


 内容:サトウジンによって作られた〖廻拓の剣・白〗と対になる剣。

 STR+1001。


 保有スキル:【ブラック・リヴォルブ】


 〖廻拓の剣・白〗で受けたダメージをストックし、〖廻拓の剣・黒〗の威力に加算する。

 スキル発動後、〖廻拓の剣・白〗のダメージストックは0になる。


 現ダメージ・ストック→『20万1045』

 ――――――――――


 〖廻拓の剣・黒〗について、まず驚くべきは装備の等級だ。


 グレードは脅威のG5。

 最高グレードの装備となっている。


『サトウジン』というプレイヤーが〖廻拓の剣・黒〗を作成したようだが、シンもメイクもそれが誰なのかは分からなかった。


 ちなみに、ブイモンにはモンスター攻略に重きを置かないプレイヤーも存在する。

 例えば、鍛冶や菜園、カジノや釣りなんかを楽しむ人達も多い。


 それを踏まえて、鍛冶師について説明しよう。


 現時点で、鍛冶師が作れる装備はG4が限界だと言われている。

 これにはシンプルな理由が付きまとう。


 G5装備を作ろうとすれば、希少な素材と高次元の鍛冶スキルが要求される。


 最強ギルド〈フロクロ〉でさえ先日G4を制覇したばかり。


 G5装備を作るためのG5素材を獲得するのは至難なのだ。

 ゆえに、市場に出回る鍛冶師作の装備――通称『スミス装備』はG4が限界と言われている。


「〖廻拓の剣・黒〗はステータス補正という面では強いけど、分からないことも多いね」


 シンは仮面女子に悪いと思い【ブラック・リヴォルブ】というスキルを使っていない。


 ちなみにスミス装備に付随するスキルを『スミス・スキル』と呼ぶ。



 ――ここで今まで出てきたスキルを簡単に振り返っておこう。


 まずSSPによって獲得できるのが通常のスキルだ。

 強化系スキルや支援系スキル、魔法系スキルなど基本的なものが揃えられている。


 次に、鍛冶師によって作られたスミス装備に付随するスミス・スキルだ。

 スミス・スキルはSSPによって獲得できるスキルはもちろん、【ブラック・リヴォルブ】のように特異なスキルも存在する。

 要は鍛冶師の腕次第だ。


 そして、イレギュラー装備に付随するイレギュラー・スキルもある。

 こちらはEBMの特性を引き継いだ特殊なスキル内容となる場合が多い。


 また、シンが獲得したオリジナル・スキルや、都市伝説のように語られるユニーク・スキルやレジェンダリー・スキルといったものもある。



「〖廻拓の剣〗は黒と白で二振りあるっぽいしさ~。その仮面の女の子が〖廻拓の剣・白〗を持ってるんじゃない?」


 唐突にメイクがそんなことを言いだした。

 未だにムスッとした様子である。


「なんでメイクはあの子が〖廻拓の剣・白〗を持ってると思うの?」


 そう問われると、メイクの眉間に刻まれるしわがより濃くなった。

 シンは相方の異様な雰囲気に少し肩を震わせる。


「女の勘ってやつかな~。もしウチの仮説が当たってるなら新たな恋敵登場か……。

 円ちゃんのことといい、シンは女たらしだから……でも仮面女子の正体に覚えはない……。

 剣にペアルック的な意味合いが込められてたら流石にキレていいよね……」


 メイクは珍しく何かブツブツと呟いている。

 シンはなぜだか寒気が止まらないので、さっさと次の話題へ移った。


「それじゃ最後。インフィニット・バラエティ・スライムとの戦闘中に獲得したらしい【真の覚醒者】について」


 シンがそう言うと、メイクはムスッとした表情を少し緩ませ、顎に手を当てた。


「ホントに謎だよね~。オリジナル・スキルなんて聞いたことない種別だし」


 ここでオリジナル・スキル【真の覚醒者】の基本情報を見ておこう。


 ――――――――――

 オリジナル・スキル:【真の覚醒者】


 内容:現時点では、世に2つと存在しないオリジナル・スキル。


 敵に比べて劣っているステータスに限り、敵のステータスをコピーする。


 ※使用者のパーソナルを読み解き、来るべき時に新たな力を授ける。

 ――――――――――


 スキル内容はステータスのコピー。


 シンは遥か格上の攻撃をも捌く超絶技巧を持っている。

 そのシンが敵にステータスで後れを取らないとなれば、ゲーム攻略はかなり楽になるはずだ。


「ステータスのコピーは予想通りだったかな。でも“使用者のパーソナルを読み解いて力を授ける”っていうところが気になる」


 スキル欄に表示されている注意書き。

 それによれば今後、シンは新たな力を得る可能性がある。


「パーソナルに介入してくるあたり、エーダブが絡んできそうだね~。

 わざわざ“パーソナルを読み解く”って言ってる以上、シンのパーソナルにアジャストした力が手に入るのかも」


 メイクの言う通り管理AIのエーダブならば、シンのパーソナルを読み解くことも可能だ。

 メイクの考察は中々に確信を突いている。


 そこで今度はシンが所感を述べた。


「そうだね。オリジナル・スキルは情報としての価値が高いだろうし、気軽に言いふらさない方がよさそうだね」


「そうだね~。MMOにおいて情報は武器になるから!」


 世界にたった1つしかないスキルならば、情報としての価値が高いのは確実だ。


 面倒事を嫌うシンとしては、オリジナル・スキルの存在を知られたくない。



 そこで一旦、2人は装備やスキルの検証をまとめ終わったのを見て取った。


 そして新たな力を宿したシンが提案する。


「装備やスキルの性能も確認したし、ビルドの再構築をしたいんだけど付き合ってくれる?」


「もち! とりあえずシンはSSPでスキルを3つ獲得した方がいいね~。【真の覚醒者】もあることだしさ!」


 シンは【真の覚醒者】によって、敵のステータスをコピーできるようになった。

 つまり、SSPをステータスに振らずとも、相手と対等な力を得ることができるのだ。


 それならばSSPをスキル獲得に使った方が賢いというもの。


「それじゃあ、一旦タルランタに戻ろうか」


「OK!」


 そうして2人は〖転移の翼〗を使用し、タルランタへと帰還した。

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