二人のアイドルとあの軍団と僕⑦
そこから歯車はどんどん噛み合わなくなっていった。
まずは花水木先輩のダンスレッスン。基礎レッスンはまだしも、振り付けに関連した練習では二人の噛み合わない状態がはっきりと表出した。先輩は二人が対称的な息の合った動きになるように稽古をつけてくれるのだが、その時に白樺さんは柊木さんと目を合わそうとしなかったのだ。
「みーたん……?」
不安げな表情になる柊木さん。
花水木先輩は二人のバラバラな動きに眉をひそめ、その元凶である白樺さんに厳しい目を向けた。
「おい、白樺。わかってると思うけどな、そんな態度をするなら練習してる意味ないぞ。ただの時間の無駄だ」
「……はい」
「態度を改められないなら帰れ」
いつもみたいに怒鳴るのではなく、先輩は静かに宣告した。僕はそれが逆に心にきた。
白樺さんはどう感じたのだろうか。彼女は黙って花水木先輩に頭を下げると、僕たちに背を向けて校舎に向かって歩き始める。
「み、みーたん……どぉしたの……? ほ、ホントに帰っちゃうの~? どぉして!」
柊木さんが白樺さんの腕を掴んで引き留めると、白樺さんは今まで見たことがないような引き攣った顔でそれを振り払った。
「みーたん……? ダンスはぁ……?」
「帰るわ」
「ダ、ダンス終わったら一緒にお勉強……いつもみたく、みーたんがルゥに教えてくれるよねぇ?」
「わたし、一人で先に帰るわ。あなたの補習には付き合わない」
白樺さんの声は冷え切っていた。
「え、で、でも、みーたんいないとルゥは何にもできないよぉ」
「ねえ、ルゥちゃん。どうしていつもわたしがあなたの面倒を見たり、気に掛けたりしないといけないの?」
「え……?」
「いつもいつも、子供の頃からわたしはあなたの『お世話係』。同級生も、学校の先生だって、あなたのフォローを面倒くさがっていつもわたしに丸投げ。あなたのママさえも『美空ちゃん、ルゥをよろしくね』だもの。うちのママだって、指針は示してくれるけど実際のあれこれは全部わたしがやらないといけない」
「みーたん……?」
目を丸くする柊木さんに、白樺さんは睨みつけるような視線を向けて――それから、ふいっと視線を逸らして吐き捨てるように言った。
「もうたくさん。もうあなたの面倒を見るのがいやになったの」
白樺さんは小走りに校舎に向かって行く。
「みーたん……? みーたん、待って! 待ってよぉ! どおして急にぃ!」
柊木さんの悲痛な問い掛けにも彼女は答えなかった。柊木さんの瞳には涙が滲んでいた。




