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ドルヲタ男子高生、アイドル運営はじめました!  作者: フミヅキ
第三章 二人のアイドルとあの軍団と僕
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二人のアイドルとあの軍団と僕⑤

 どうして嫌な予感というものは当たるのだろうか。


 真夜中のドールズクローゼットのライブをそれほど楽しんでいるようには見えなかったレッドくんとその仲間たちは、なぜか真夜ドク物販列に並んでいた。


「あれ? スタッフさん、どっかで会いましたっけ? 他のアイドルのスタッフとかしてた?」

「いいえ。僕はここだけです……」


 物販席で僕と対面したレッドくんは、幸いと言ってもいいのか、僕のことをあまり覚えていないようだった。あの事件は彼にとってはその程度の出来事だったのかと思うと、心の中がチクチクと毛羽立つような不快感があったが、僕はなんとかそれを飲み込んだ。


「まあいいや。これ全部チェキ券で」


 万札二枚でチェキ券二十枚。仲間たちも十枚前後購入していった。

 うちのお客さんで今までそんなに買い込んだ人はいない。ある程度の枚数を買ったとしても、毎回買うのが億劫な人がストック目的で買うのがほとんどだった。


「オレ、今日これ全部投入しちゃおーっと」

「やっぱすげーなレッドくん」


 ワイワイと盛り上がる軍団を見て、僕はチェキ列を整理していた匠汰くんを呼び寄せて小声で耳打ちする。


「匠汰くん、あの赤い髪の奴とその仲間に気を付けて」

「あ?」

「よくない客なんだ。変なことしたら即出禁にするから」


 僕の言葉を聞いて、匠汰くんは奇妙な生物を見るような目を僕に向けた。


「え? 匠汰くん、どうかした?」

「いや、お前がそんなこと言うの珍しいと思ってよ。なんか奴らに個人的な恨みでもあんの? アハハ!」


 匠汰くんが冗談めかして言った言葉に僕はドキッとした。瞬間的に「推し」の顔が僕の頭に浮かぶ。


(私情が入りすぎ……?)


 ファン全員に対して公平であるべき運営としては、こういう色眼鏡みたいなことはよくないだろうか。レッドくんが必ずしも問題行動を起こすとは限らないのだから。


 僕が悶々としていると、匠汰くんに頭をはたかれた。


「なにマジになってんだよ。わかったよ、よく見とくよ。お前が気になるんならそうなんだろうし」


 そう言ってニヤリと笑った匠汰くんは、三白眼をいつも以上に厳しく吊り上げてレッドくん軍団を見つめた。



 レッドくんは、始めはルルカ列に並んだが、次にはミソラ列に並び、以降はずっとミソラ列を周回した。僕はチェキ券販売の対応をしながら、彼らの動きをそれとなくチェックする。


 はじめましての挨拶でミソラとチェキを撮った後、再び並び直したレッドくんと再会したミソラは少し驚いた顔をした。


「また来てくれたの? ありがとう……」

「あれ? もしかして引いてる?」

「そんなことないわ。嬉しい。ありがとう」


 ミソラは気を取り直したようにいつもの笑顔を浮かべる。二人でチェキを撮る段になり、レッドくんは彼女の肩に軽く腕を回すようなポーズを取った。


(アイツ……!)


 思わずカッとなった僕が物販スペースから身を乗り出しかけると、チェキ対応スタッフである匠汰くんがレッドくんの肩を叩いた。


「お客さん、あんまくっつかないようにねー」


 言葉は軽い調子だったが、匠汰くん持ち前の三白眼が厳しくレッドくんを睨み付けている。


「あー。あいあい。すいまっせーん」


 不真面目な調子ながら、思いの外、素直に手をどけたレッドくんとミソラのツーショットを匠汰くんが撮影する。


 匠汰くんはカメラから吐き出されたチェキをミソラに渡すと、次はルルカ列の撮影に移る。匠汰くんが再びミソラ列に戻ってくるまでがレッドくんとミソラのトークタイムとなる。


「みー、ごめんね。馴れ馴れしくしちゃって」

「みー?」

「ミソラのこと『みー』って呼びたいんだけど、いい?」

「え?」


 首を傾げるミソラに、レッドくんはにっこりと笑う。悔しいが、彼はそこら辺のオタクとくらべるとイケメン度が高い顔面レベルであり、僕の面白くない気持ちがさらに増す。


「みんなが『みーたん』って呼んでるみたいだからさ、オレだけの呼び方したいんだ」

「なるほど。わかったわ、みーって呼んで。そんな風に言われたの初めてで、嬉しいわ」


 ミソラもにっこり笑って頷いた。


 それからレッドくんと仲間が何度もミソラを巡回して、最初は他人行儀だったミソラもだんだんと打ち解けてしゃべるようになっていった。僕は物販でチェキ券やグッズを売りながら、その様子を複雑な気持ちで見守る。


 特典会が終わってルルカとミソラは楽屋へ帰っていった。匠汰くんと僕とで物販席の撤収作業をしていると、匠汰くんが僕にこぼした。


「どこがってわけじゃねぇけどさ。赤髪のアイツ、俺はいけ好かねえな」


 僕はまったく同じ気持ちで頷いた。

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