二人のアイドルとあの軍団と僕②
花水木先輩のダンスレッスンは、デビュー前ほどの詰め込みレッスンはしなくなったものの、それでも週一で時間を取ってもらっていた。僕の方も運営の仕事が落ち着いているので、最近はほとんどのレッスンに立ち会っている。
「なんだよ、その怠いダンスは! ダンスの素人だってバレバレになるだろ。しっかりカウントをとれ!」
いつもの体育館正面の練習場所で、先輩の怒声にも二人は必死に食らいついていく。
レッスンがひと段落を迎えると、花水木先輩が手を叩いて十分ほどの休憩となった。その間、白樺さんは汗を拭きつつ水分補給。柊木さんは裏庭の草木をガサガサと漁っていた。
「おい、そろそろ再開するぞ」
花水木先輩の言葉に、白樺さんはすぐに元の場所に戻ったのだが、柊木さんは僕たちに背を向けて、草むらに手を突っ込んだままだった。
「柊木、何してるんだ! 早く戻ってこい!」
「見て見てぇ! 大発見~! 超クール!」
僕たちを振り返った柊木さんの手には、茶色いトカゲが握られていた。
「ひゃ!」
両生類や爬虫類が苦手な僕は、女の子みたいな悲鳴をあげてしまった。花水木先輩は呆れたように頭を抱えながら溜め息をつく。
「小学生男子か、お前は!」
「可愛い可愛い、トカゲきゅ~ん!」
マイペースな柊木さんはトカゲのしっぽを掴んでプラプラさせながら頬ずりしている。
(げぇ……。よくあんなことできるなあ……)
「いいから戻してこい!」
「やだやだぁ! ズッキーのいじわるぅ! あ!」
一瞬の間に、トカゲはしっぽだけを柊木さんの手に残して草むらの中へと走り去っていった。
「柊木、もういいだろ。戻れ!」
「ぷううう!」
柊木さんは不服そうな顔でダンスレッスンに戻ってくる。
そんな彼女の一連の行動を、白樺さんはずっと黙って見ていた。僕はそのことに少し違和感を覚える。
花水木先輩が練習再開を宣言したら、いつもだったら白樺さんが柊木さんをレッスンに連れ戻してくれるはずだ。トカゲのことだって、逃がしてあげるようにやんわりと諭してくれるのがいつもの彼女ではなかろうか。
(白樺さん……? どうかしたのかな?)
ダンスの練習を再開した二人は花水木先輩の手拍子に合わせてステップを踏み始める。いつもと同じく、二人とも真剣だ。
でも、柊木さんの隣で踊る白樺さんの顔が、いつもの柔らかい表情ではなくて少し硬いものに僕には見えた。気のせいだろうか。




