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ドルヲタ男子高生、アイドル運営はじめました!  作者: フミヅキ
第二章 新人アイドルと愉快な仲間たちと僕
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新人アイドルと愉快な仲間たちと僕⑥

 その週末、僕は柊木さんと白樺さんと匠汰くんを連れてアイドルのライブイベントに行った。キャパ五百人程度のライブハウスで開催される、複数のグループが出演するタイプのイベントだ。


 白樺さんにアイドルのライブがどんなものなのかを知ってほしかったし、匠汰くんにライブアイドルのシーンの幅広い音楽性とお約束な楽曲の雰囲気の両方を知ってほしかったから。


「いや~、お前らすげーな!」


 匠汰くんが感心しているのはオタクのノリだった。


 だいたいどのグループのオタクも曲中のコールやMIX、ケチャというリズムに合わせて手を叩いてからアイドルに向かって腕を差し出すような動作、アイドルのダンスの真似なんかは共通のノリ方だ。ただ、ペンライトやサイリウムを点灯させていかにもドルオタらしいノリ方メインのグループがある一方で、騎馬戦のように一人のオタクをみんなで担ぎ上げるリフト、オタクたちの頭上をオタクたちが転がっていくダイブ、オタクがフロアをグルグル走り回るサークルモッシュが発生するグループもある。


「それに進行のスピード感すげーし」


 それは僕も匠汰くんのバンドのライブイベントを見に行った時に違いを感じた。転換のたびに各バンドの楽器のステージからの撤収と搬入、試奏の時間がとられるイベントと違って、アイドルのイベントでは一つのグループが終わるとすぐ次のグループが出てきて、ほとんど休みなくステージが稼働している。


「えっと~、次は誰が出るんだっけぇ? 並行物販ど~しよ~!」


 柊木さんがスマートフォンでチェックしているのはタイムテーブルだ。バンドのイベントでは出順が公にされないことも多いが、アイドルのイベントでは公開が基本。


 その理由は「特典会」の存在だろう。

 すなわち、アイドルと話したり、チェキを撮ったり、チェキにサインしてもらったりする時間。今回みたいに出演グループ数が多いイベントでは、ステージでライブを進行しつつ、フロアの外のロビーでは並行して別グループが特典会をしていることなどザラだった。


 オタクにとってはライブと共に重視される特典会。ライブと特典会を円滑に進行するためには事前にタイムテーブルを公開する必要があるのだろう。


 全グループのライブが終わると、ステージ上やフロアでも終演後物販が開始される。「物販開始しま~す!」と可愛らしく宣言しながらアイドルが並び立ち、その前にオタクたちが整然と列を作る。「アイドルの名前・最後尾」の書かれたプレートが次々とオタクからオタクへと手渡されていく、不文律のライブマナー。


 あちらでは初見のグループの特典会に参加しようとしているらしいオタクが、そのグループの物販列に並んでいるオタクに話しかけている。


「あの~、ここってレギュレーションどうなってるんですか?」

「グッズを千円買うごとに券一枚。でも、サインはなし。千円のチェキ券を買えばサイン付きになりますよ」

「ありがとうございます!」


 グループごとに特典会ルールは異なる。オタクたちはそのルールに従い、スタッフの管理と監視の元で大好きな推しとの時間を楽しむのだ。


 一方で、アイドルから見た特典会は、たくさんのファンと話をしないといけないし、ハイタッチ程度の接触もある。もちろん、相手は男性ばかりだ。


 僕は内心で不安を感じていた。


(白樺さん……実際の特典会を見たら抵抗感もったりしないかな……?)


 こういうライブイベントの場合、入場時に「お目当てのグループ」をライブハウスのスタッフから聞かれる。今日出演のグループの中に「お目当てにしてくれたらチェキ券一枚プレゼント」というアイドルもいたので、僕は白樺さんにその券を渡した。自分自身でチェキ列に並んでアイドルと話すという体験をすることで、何か良さを感じてくれるかもしれないと思ったから。


 僕はソワソワしながら、白樺さんがアイドルの女の子と話す様子を遠目に眺める。


 ちなみに、現在、匠汰くんはアイドルがどんな物販グッズを売っているかの偵察に出かけていて、柊木さんは僕が何も言わなくても自分のお気に入りグループの物販列に並んでいた。


 戻ってきた白樺さんは「少し緊張したけど楽しかったわ」と僕に言った。


「アイドルの人に直接感想を話せるのって、面白いわ。ライブのここが楽しかったですって伝えたら、すごく喜んでくれたの! わたしも嬉しくなっちゃった!」


 どうやら特典会を肯定的に受け取ってくれたみたいだ。僕はホッと胸を撫でおろした。


 でも、すぐに僕は気持ちを引き締める。白樺さんにその気持ちを持ち続けてもらうためには、平和な特典会の空気感を作って維持していかなければいけない。きっとそれはアイドル運営としての僕の大切な仕事なのだろう。

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