発芽
その日、八重樫亭、更に世界の一部は大変な騒動になった
いつも通りに起き、日課のラジオ体操を済まし、じょうろを持って種の元まで向かった福太郎
だがおかしい、何かおかしい、何かと言うかどうみてもおかしい
種を植えた場所が光輝いている。目を焼く光ではない、包み込む様な暖かな光が辺りを照らし出す
小走りで向かったその先に─
「芽が…出てる!芽が出てるぞ~~!!」
花代の分身足る神樹の芽がひょっこり出ている
まだ小指の先程度、とても小さいが真っ白な芽が自分が芽を出した事を知らせるように光輝いていた
福太郎の叫びで気づいた精霊達もその光景を見て騒ぎ出す
(でてる!?)(でた!?)(めだ!)(ほんとに!?)(ほんもの??)
「え!?偽物とかあるの!?」
(え!?しらない!)(あるの!?)(でもひかってる!)(ひかってるね!)(ひかるだけならほかにもある……)
「じゃあこれ偽物??」
この後全員の知識を持ち寄った喧喧囂囂の会議を十分以上にも行い、この芽は神樹の芽であると確定された。
福太郎は芽の前に正座で座りゆっくり顔を近づけていく。格好だけ見れば土下座と変わらない。だが別に芽に謝る訳ではない。声を聞かせる為だ
「……花代~聞こえる~?……聞こえますか~?……聞こえてませんか~?………ダメか」
かつて花代はこの樹が育てば自分と交信くらいなら出来ると言っていた。だがその言葉の前には”ある程度育てば”とついており芽が出た程度ではダメな様だ
「まぁ、芽が出たという事は今の育て方でとりあえずは良いという事だ。各員、気を抜かずにこの芽を立派な樹に育てるぞ~!」
(((((おーー!!)))))
時を同じくして各地では神の再臨の予兆に気づいた『王』達がにわかに慌ただしくなる
『王』、それは福太郎と同じ様に種族を束ね率いる者として神に力を与えられた者達
人王
龍王
獣王
魔王
そして精霊王
但し人王のみ増えた人類に対応する為に力を分け複数人存在している
力を分けられ遠方にいる人王ですら数人が気づいた
しかし神の愛故に他の王に比べ、えこひいきとも言われても言い訳の出来ないくらい格段の力を与えられ、更に一番近くに住んでいるはずの福太郎が実際に目で見るまで気づかなった理由、それは単純に福太郎がにぶチンなのだ。
そしてそのにぶさ故に今まさに神樹への謁見を求めてこちらに飛んできている龍王にももちろん気づかない




