剣の精霊
福太郎が降りた山の麓は裸木が乱立する寒々しい場所だった
雪こそ降ってはいないが気温は低い、シュンローは早速腕輪に感謝した
「なんか寂しい場所だな」
初めて山を降り見た光景がこれでは少しガッカリだろう
「まだ冬真っ盛りですから仕方ないでしょ、俺が来た時は中々綺麗な森でしたよ」
「そうか…冬か…」
そう呟きながらも福太郎は心の中で根本的な事を考えいた
(やっぱりこの世界にも季節はあるんじゃな…)
山の頂上は田んぼ周辺のみ稲の育成の為に通常の気候を再現してはいるが、それ以外は常春と言って良いだろう
常に暖かく心地よい風が吹いている。
この世界に来てからずっとそこで過ごしている福太郎は季節の存在すら疑っていたのだ
(上でももう少し季節感を出しても良いかもしれんのぉ)
そんな贅沢な悩みはさておき、ここでアウロラ達を待たねばならない
福太郎は神謹製の体で、シュンローは腕輪の力で寒さを感じないがこのままここに突っ立っているのも据わりが悪い
二人は少しは居心地良くする為動き出した
「天幕でも張りますか?」
「それだと他の人に見つかりやすそうだなぁ…よし!」
福太郎はおもむろに歩き出し山肌に手を触れる
シュンローは間違いなくそれを見ていた、手が触れた瞬間も目を離してなどいない
しかし福太郎の手が触れた場所に巨大な穴、洞窟が出来た瞬間を観測する事は出来なかった
「ここで待ってよう」
中は広く光源も設置してあり寝泊まりも出来そうだ
「どれくらい待ちますか?」
「…不足の事態も考えて明日の朝くらいまで待ってみようか。ただ、来なかった場合は一人で行くことになるが大丈夫か?無理なら止めても良いぞ」
「多分大丈夫です。…これ見てもらっていいですか?」
そう言って腰からダガーを引き抜き剣先に指を押し当てる
すると剣は指に刺さらず、逆に押し負ける様に縮んで行く
次に剣先を掴み腕を広げると剣も大きくなって行く
「剣の大きさを自由に変えれる様になりました。更に──」
シュンローがダガーを腰に戻し腕を軽く振る
その瞬間何も持っていなかったはずの手に剣が握られていた
「どうも俺が打った剣を召喚してるらしいです」
シュンローが腕を振る度に違う剣が現れ足元には何本もの剣が散乱していく
「なのでこんな事も出来ます」
シュンローは洞窟の中から見える木に向かって縮小した剣を投げつける
小型であるが故に力も要らず速度も出る、反面当たった際の威力も小さい─はずだった
木に当たる瞬間にシュンローは剣を巨大化、自身より大きくなった剣は目標の木はおろか周辺の木もなぎ倒していく
そして次の瞬間には既にシュンローの手の中に戻っている
「更に……」
シュンローは巨大化した剣を一本、地面に置きその上に座る
そのまま剣を浮かしまるでほうきに乗る魔女の様に空中浮遊してみせる
「こうやって移動すれば追手にはまず追跡出来ないでしょう、例え戦闘になっても負ける気もしません。おつかいも簡単に出来そうです」
福太郎が名付けた事によりカタナはここまでの事が出来る様になっていた。更にシュンローにはヒビキまでいるのだ。余程の事が無い限り危険は無いだろう




