初めてのお出かけ
「ここらへんだったよな」
「ですね」
昨日の戦闘場所に到着しシュンロー達をゆっくりと下ろす
代理人達は適当に放り出す
ここがお米の販売計画の始動場所になる
まず代理人達を起こした後にアウロラ達が帰還を促し、下山させなければならない
「とりあえずここから先に前とは比べ物にならないくらい強い砂嵐発生させるから、それを言い訳に下山させてくれ」
「…わかりました」
「それとこれ」
福太郎が取り出したのは小さな紙袋だった
「昨日使った眠り薬って植物の花粉らしいね?キーが言ってた、これを吸うとすぐ起きるってキーに渡されたんだ」
代理人達に吸わせた眠り薬が切れるまであと一時間近くある
それが待ちきれないなら使えという事だ
アウロラが受け取り礼を述べた
「よし、じゃあ砂嵐出すから近づかないようにね」
そしてその言葉通りに激しい砂嵐が巻き起こる
それは最早砂嵐と言うよりハリケーンに近い
確かにこれなら言い訳に使えるだろう
ここに突っ込むのは例え防壁が有ろうと命の危険を感じる
まともな感性をしていれば撤退を選ぶだろう
「じゃあ俺達は先に下に降りてるから、調査団からはぐれる事ができたら呼んでくれ。ヒビキが届けてくれるらしい」
超長距離だろうと任意の音を拾い伝える、これが強化された音の精霊の力の一つだ
商談が成立した際にもこの力で福太郎に連絡してグリフォンが届ける手筈になっている
「じゃあ待ってるから」
再び福太郎とシュンローの体が浮かび上がり崖の方向へ向かって飛んでいく
このまま行くと崖で待機しているはずの調査団の一部と遭遇してしまう為、更に上昇していく
少し進むと下方に見えた調査団が突然発生した砂嵐に狼狽している様子が見て取れた
そのまま頭上を通りすぎ、麓に降りようかと言うときシュンローがボソッと呟いた
「あいつら…来ますかね?」
「……さぁな、どうだろう」
その呟きに対して福太郎の顔は変わらない。その可能性はちゃんと考えていた
彼女らが裏切らない可能性を
彼女等が大金を手に入れようと言うので有れば腕輪を持ち逃げし四名家に福太郎達の情報を売るのが最も良い
八重樫亭から色々な雑貨を持ち出したのも売るためかも知れない
合計すれば福太郎の報酬のゆうに十倍以上の金額になるだろう
アウロラが一族の為に金が必要であるならその方法を取る可能性は十二分に有る
「…良いんですか?」
「正直それでも良いと思ってる。女の子が自分の一族を助ける為に頑張ってるんだ、それくらいの事は許すさ。そもそも裏切らない方が正しいんだからそこは責められんな」
「でも腕輪は?精霊達が作った物を売られたりして良いですか?」
その質問に対して福太郎は笑みを浮かべた
質問自体が可笑しかったのではない、似た質問を福太郎も精霊達にしていた。そしてその時の精霊達の答えは福太郎の心を暖かくしてくれる物だった。それを思い出したのだ
「似たような質問をワシもあの子達にしたんだよ。そしたら何て言ったと思う?」
昨晩精霊達に腕輪を作ってもらう際にアウロラ達が裏切らないかも知れない事、腕輪を持ち逃げし売るかも知れない事を話した。
福太郎はそれに対する対応策は無いかと相談するつもりだったのだが精霊達は──
(じゃあたかくうれるようにごうかにしないとね)
「腕輪の宝石も本当はいらないらしい。でも見映えを良くするために付けたんだと。自分達も囚われてたからかアウロラの一族に同情的でな、その助けになるなら別に構わないそうだ。そんな事言われたらワシも許す気になるってもんよ」
「………は~~!皆さん心が広い!」
「これが本当に大事な物ならこうもいかんが、言ってしまえば1日で作った物だからな。そこまで惜しくないってのもあるな」
「あれだけの品を惜しくないってすごいですね」
そんな話をしている内に地面が見えてくる
ついに福太郎が下界に降り立つ時が来た




