強化
精霊の加護の腕輪の効果は大別して五種類
ヒーの加護:赤色の宝玉
周りの熱を吸収及び貯めた熱を放出し装備者の周囲を一定の温度に保つ
またこの効果の過大解釈として敵対者の熱を吸収もしくは熱を送り込む事が可能
スーの加護:青色の宝玉
水面歩行及び水中呼吸
フーの加護:無色の宝玉
周囲に風の幕を作り投擲物ならびに煙幕、毒ガスなどを弾き飛ばす
ツーの加護:黄色の宝玉
ストーンゴーレムの作成
キーの加護:緑色の宝玉
果実の生成、飲食物の毒の除去
「という効果らしいぞ」
淡々と説明する福太郎の話を聞きながら三人は呆気にとられていた
その効果は劇的と言うには今一つ足りない、だがこれだけの効果が複数、消耗なし、無制限で小型の腕輪を装備するだけで使えるというのはこの世界での前例が無い
「…これは…すごいですね」
「…戦闘…逃走…不意打ちへの対策…雑事…食事…」
「何でもござれじゃねぇですか、旅が格段に楽になりますぜ」
その反応を見て福太郎は満足げな顔だ。せっかく用意したのだから喜んで貰えるならこの上ない
「良かったなみんな、喜んでるぞ」
(((((エヘヘヘ~)))))
だがシュンローが音もなく近づいて来た。その雰囲気は何やら張りつめている。
「ひとつご相談が有ります」
緊張した面持ちで小声で福太郎に話しかける
何か重大な事なのだろうか、もしかしたら腕輪に欠陥が有るのかも知れない
福太郎は気を引き締めるが──
「…スーさんに頼んでウォーターベッドを出せるように出来ませんか?」
「………お前ぶん殴るぞ」
真面目な顔でふざけた事を言い出したシュンロー、だが本気である。本気でウォーターベッドを出せるようにして欲しいのだ
八重樫亭で暮らし始めて数ヶ月、風呂上がりのマッサージ、就寝時はウォーターベッドが日課になっていた
最早普通のベッドには戻れない、一端生活の質を上げてしまうと簡単には下げられないのが異世界だろうと同じ様だ
「殴られたら頼んでもらえますか?」
「お前…そこまで本気か…」
「本気です」
福太郎の顔が多少引きつる。シュンローのウォーターベッドに対する熱量を受け止め切れない
押しきられる形でスーに頼むことになってしまった
「スーちゃん、出来る?」
(できますけどすこしじかんいただけます?)
その台詞を聞いた瞬間、シュンローは両手を突き上げ天を仰いだ
歓喜の叫びを上げているが誰も触れない
「じゃあ一回腕輪を回収するからお願い出来るかな?」
(おまかせくださいませ)
傭兵二人と叫んでいるバカから腕輪を回収し居間に運び、スーにもう一度を加護を与えてもらう
その間にもう一つの強化案を実行する
「おい、バカ。こっちこい、精霊に名前つけるぞ」
やっと叫び終わったシュンローを呼び、精霊の命名の用意に入る
しかし福太郎がする事は特に無い、せいぜい精霊達の心構え位だ
本来ならしかるべき時、しかるべき場所で準備に数日、命名に数時間かける大儀式だが、精霊王の力ならそんな事はお構いなしに数秒で済む
福太郎の向かいに立つシュンロー、さすがに顔を引き締めた
「おいで」
福太郎の前に二つの光球が現れる
「君たちに名前を付けたいんだけど良いかな?……ありがとう、これからもシュンローの事を頼むよ………ハハッそうだね、嫌に成ったらいつでも止めていい。その時はシュンローが悪い……………うん、じゃあその時までお願いするよ。だからこそその為の力をあげよう」
周りに精霊の声は聞こえないがどうやら名前を付ける事を受け入れた様だ
「剣の精霊、君の名は『カタナ』ワシの国で使われた剣の名だ
音の精霊、君の名は『ヒビキ』ワシの国で音が伝わる様子を表した言葉だ……どうだろうか?」
恐る恐る聞いてみる福太郎、自分のネーミングセンスの無さは自覚している
それでもいつか名付ける事になるだろうとずっと前から考えていた名前なのだ
(…ウレシイ)
(チカラガアフレルゥゥー!!)
どうやらシュンローの精霊に文句は無い様だ
シュンローの精霊には!
(なんかさー)
(あたしたちのときより)
(こったなまえのつけかた)
(してませんか?)
加護を追加しているスー以外の福太郎の精霊達から文句が出た
彼等も今の名前が嫌な訳ではない、むしろ気に入っている
だが他の者が自分達より考えられた名前を付けられると少しは嫉妬してしまう
「ちっ、ちがうよ~、それは時間があったからだよ~、みんなの名前だってちゃんと考えたよ~」
実際時間をかけても今の名前以上の物は出なかっただろう
今回の少し凝った名前が出た事が奇跡に近い
精霊達をなだめる為に言い訳に終始している福太郎の反対方向では、ついに話せる様になった精霊とシュンローの初めての会話がなされていた
「やっと話せる…これからもよろしく、ヒビキ、カタナ」
(…ウン)
(キリキザムゼー)
「ヒビキは大人しくてカタナはやんちゃだなぁ」
(…ウン)
(ハヤクキリサキタイゼー)
音の精霊なのにあまり音を出さないヒビキ
剣の精霊らしく危ない事を言い続けるカタナ
「これから旅に出る、二人の力が必要になる。どうか俺達を助けてくれ」
(…ウン!)
(ブッタギルゼー!!)
「………カタナは少し落ち着こう」
先程までの自分の醜態を棚に上げ自分の精霊をたしなめるシュンローだった




