餞別
最低でも二日に一回は更新したいと思います
昼前になり旅装に着替えた三人を居間に集め福太郎がやっと策の説明を始めた。その顔はどことなく自信ありげだ
「追っ手が来た際の対応策、それは…みんなが強くなって返り討ちにすれば良いんじゃなかろうか!」
「「「…………」」」
グッと拳を握り力説する福太郎
それを聞いた三人はたっぷり5秒ほど沈黙した後、クルッと背中を向け車座になり──
「やっぱり見つからない様にするのが一番かな?」
「…街道から逸れると…時間がかかる」
「装備と食糧を考え直さねぇとな」
福太郎を省いて新しい策を考え始めた
「…その反応はないひどくないか?」
チラリと振り替えった三人はジトッとした目で福太郎を見つめている
「だって…なぁ?」
「今強くなれって言われてどうすりゃいいんですかい」
「…無理」
福太郎の策に否定的な三人だが福太郎の余裕の表情は崩れない
どころかしたり顔を浮かべ、うむうむと頷いている
「そう言われる事は予想していた…確かにすぐに強くなるのは難しい、だが難しいだけ無理な訳ではない!そしてその方法を……シュンローは知ってるはずだろう?」
シュンローに目を合わせ問いかける
少し思案した後、精霊術士たるシュンローは答えにたどり着いた
「……命名?」
「そうだ、人が強くなれないなら精霊を強くしてしまえば良い!もちろん名付けるのはワシだ、もう名前も考えてるぞ」
「…よろしいのですか?」
本来精霊の命名は大儀式である。
名付ける事によりその存在を強め、現実への干渉力を高める。
場合によっては強めた存在を逆手に取り、縛り隷属させるが今回はその様な目的は無い
また名付ける側に大量の力の消費が伴い、この様に気軽に行える物ではない
しかし福太郎はこの世界の開闢以来初めて生まれた精霊王である。すでに五体の精霊への命名実績があり、それに伴うはずの力の消費は彼からすれば微々たる物、力を使ったという自覚すらない
「お前が精霊達を厚顔無恥に使役する様な奴なら絶対しないけどな、そんな奴じゃないだろ?」
既に数ヶ月を共に暮らしている。シュンローの人となり、精霊の扱い方を見てこれなら大丈夫との判断を福太郎は下したのだ
「………ありがとうございます、その信頼には絶対に応えます」
その声は少し震えていた
「まぁワシが名付けちゃったら精霊達の方が圧倒的に強くなってシュンローには縛れないからそんな心配はいらないんだけどな」
「……もう少ししんみりさせてもらえませんか?」
湿っぽい空気はあっという間に払拭されてしまった
そしてそのまま福太郎は強化策第二段を告げる
「ただ精霊の命名だとシュンローしか強くなれない。これから一緒に旅をするのにそれじゃいかん。そこで二人も強くなる方法を考えた!」
「「………」」
ゴクリと唾を飲み込み緊張するアウロラ、エイチカ
自分達も強くなれる、それは今後の事を考えても逃がす訳にはいかないチャンスだった
「人が強くなれないなら道具で強くすればいい!そんな訳でこんな物を作ってみました」
福太郎が取り出したのは銀色に輝くブレスレット、小さな五色の宝玉が嵌まっており細かな彫金までされている
それが三人分で三個
一目で高価な代物と分かる一品である、だがこれの真価は金額ではない
「三人の為に精霊達が作ってくれたぞ。細かな彫金はツーがしてくれた」
(これおもしろいね、ぼくのしゅみにするよ)
一人づつ手渡して行く。持ち主に合わせ意匠が違っておりシュンローのは剣と音符、アウロラのは杖と仮面、エイチカのは爪と牙がデザインされている
「何でもそれを着けてるとみんなの加護が貰えるらしいぞ」
福太郎は軽く言っているがこれはかなり重大な効果である
現に受け取った三人はそれを聞いた途端にそのままの姿勢で固まった
「……これは…依頼が終わったら…返却?」
「あぁ!なるほど!驚きやしたぜ、こんな物をポンと渡すなんて旦那も人が悪い」
「…?いや、三人の為に作ったって言っただろう?そのままもらってくれて構わないよ」
またしても硬直し無言になる二人、そんな中シュンローは福太郎との付き合いも長い分復帰も早かった
「…はぁ、何でこんなすごい物をぽんぽん人にあげちゃうんですか」
「これそんなにすごいのか?」
「これミスリル製ですよね?更に五人の精霊の加護が付いてくる?これ一つで米全部の金額の数倍しますね。それどころか王家にでも献上すれば即貴族にでもなれるでしょうね」
「そんなに凄いものだったのか…でもせっかくみんなが作ってくれたんだ、使ってくれよ」
「…ありがたく受けとります」
こうして精霊の強化、装備の強化を軸に福太郎の立てた策は実行されて行く




