自己紹介
少し更新頻度が落ちるかもしれません
八重樫亭に着きまず調査団を蔵の中に押し込み、エイチカからもらった眠り薬を使う
粉薬で吸わせてしまえば一日は眠り続けると言う強力な代物らしい
手早く吸わせ蔵を閉める、これでおよそ一日の猶予が出来た
傭兵二人は居間に通し少し待ってもらっている
「あの二人、どうするんですか」
「味方になってくれると助かるんだが…傭兵っていうからにはお金積めば良いのかな」
「単純に福太郎殿が脅せば言うこと聞くと思いますけどね」
「それはやりたくないなぁ」
「でしょうね、知ってます。でも金はどっから出すんですか?言っちゃ何ですが福太郎殿、無一文でしょ?」
こんな山の上である、金を使ったことも無ければ使う相手もいない
かろうじてシュンローが持っていたのを見せてもらった事があるくらいだ
当然金を溜め込んでいる、等ということは無い
「それなんだが…米、売れないかな?高級品なんだろう?」
以前収穫した米が蔵の中にまだ山ほど積んであるのだ
「…売れる…と思います。ただ買ってくれる商人を探すのが難しそうです。今回の件で俺は四名家の敵認定されるでしょうし、コネとかありませんから」
「…すまなかったね、俺の為に頑張ってくれたのに無駄にしてしまって」
「別に良いですよ。お世話になってますし、半分は八つ当たりみたいな物ですから」
「そう言ってもらえると助かるよ…そろそろ中に戻ろうか、客人が待ってるだろうね」
シュンローを伴い居間に向かう福太郎、魔法使いは正座であったがリザードマンは骨格的に厳しいのかあぐらをかいていた
「お待たせして申し訳ない、全員蔵に突っ込んでおきました。さて…まずは自己紹介と行きましょう」
ニコリと微笑み魔法使いを見るが仮面を着けているので顔色は分からない。口から上のみの仮面で一切の飾り気が無い、目の部分に至ってはスリットが入ってるのみで視界はかなり狭そうだ
「ワシの名前は八重樫福太郎、この家の主です。そして精霊達の王を名乗らせてもらっております」
「……精霊王?本当に?」
「疑うお気持ちは分かります。この様に子供の姿では威厳も何も無いでしょうから。」
余り信じさせる気のない福太郎に代わりシュンローが助け船を出す
「でもさっき精霊の声聞いただろ?あれは四名家が契約していたのを福太郎殿が名前を上書きして解放したものだ」
「あれが精霊の声…」
「福太郎殿、全部説明していいですか?」
「よろしく頼む」
シュンローは自分の知る事全て傭兵二人に説明した
時に精霊達自身が補足する事で信頼度も増していた
「お疑いした事、心からお詫び致します」
説明を聞き納得したらしく魔法使いが頭を下げ、それにつられエイチカも頭を下げた
「気にしないで下さい、先程も言いましたが疑う気持ちは分かりますから」
「……福太郎殿の態度にも問題あると思うんですけど…偉い人が丁寧な対応し過ぎなんですよ。もっと威厳のある態度でいて下さいよ」
「ちょっと前までただの人にそんな事言われても無理だよ…」
「え!?福太郎殿、人だったんですか!?」
「え!?言ってなかった?」
「聞いてないですよ!」
シュンローが今更ながら福太郎の過去の一端を知った時、クスクスと忍び笑いが聞こえてきた
「……っ!失礼しました」
「いえいえ、気分がほぐれたなら良かったです」
「…お気遣いありがとうございます…私達の自己紹介がまだでした、私の名前は…」
「まてまて、まずフードを外して仮面を取れ。失礼だろう」
今は福太郎に対して砕けた態度を取っているシュンローだが初対面の時はかなり礼儀正しい対応を取っていた。それを思えば確かにこの態度は無礼だろう
「シュンロー、人には人の事情がある。仮面を着けないといけない理由があるのだろう。それを無理に取る必要はない」
「………いえ、確かに失礼でした。……ですが仮面を外す前に一つお願いがあります」
「!?姐さん!」
エイチカが思わず止めに入るも魔法使いは手のひらをエイチカに向けそれを拒否する
「大丈夫…大丈夫だから」
「…お聞きしましょう」
「どうか仮面を外した後に私を捕まえる様な事はしないで下さい」
声が震えている、この条件を出すだけでもかなりのストレスがかかっているのだろう
「…分かりました、どの様な事があろうと貴女を捕まえない事をお約束します」
福太郎にはこの願いの理由はよく分からない、しかしそれが大事な約束である事は理解できる
「ありがとうございます……私の………名前は………」
手も声も震えている、それでもゆっくりと手を動かしフードを取る。
「ほぅ」
フードの下から漆黒の長髪が溢れだしその頂点には少し尖った狐の様な耳が着いていた。但しその色は髪の色と対比するように純白だった
(これが捕まる様な理由になるのか?)
しかし真の理由はそこではない
続けてゆっくりと仮面を取る、その手はガタガタと震えよほどの恐怖を感じているのだろう
やっと仮面を外し終えたその顔は─
(怪我等がある訳じゃない…指名手配でもされてるのか?)
伏せたその顔はエイチカに姐さんと呼ばれるわりに幼い顔立ちだった
綺麗な顔をしており隠す理由は無いように思える
しかし伏せた顔を上げその目が福太郎を捉えた時、その理由を理解した
「………おぉ」
あまりの美しさに声が漏れる
澄みきった青色に白く輝く点がいくつも入っている
蒼穹に星を散りばめた様に
蒼海に宝石をばら蒔いた様に
その瞳には青い星空が秘められていた
「私の名前はアウロラ、グルブ族のアウロラです」
グルブ族、それはその瞳の美しさゆえに観賞用奴隷として高値でやり取りされている一族だった




