シュンローの戦い 後編
「音の精霊か…つまりさっきの精霊剣や触られた奴は音で頭を揺らされたって訳か」
傭兵リザードマンの推測は完全に合っていた
自分のネタを完全に看破されシュンローは苦笑するしかない
「経験豊富な傭兵はやりづらいなぁ」
「じゃあ降参しねぇか?」
「それは出来ない…なっ!」
身を低くし駆け出すがそこに魔法使いの放った火弾が迫る
「頼んだ!」
音の精霊が指向性を持った音を放ち火弾を相殺、爆発が起きる
その煙に紛れ更に近づくシュンロー
だがそれを見抜き立ちふさがる傭兵リザードマン
大剣を振り下ろしシュンローの頭を叩き割りに来る
何とかファルシオンでの防御が間に合うが余りの圧にその場に縫い止められる
「捕まえるんじゃ……なかったのか!」
「お前は中々出来る奴みたいなんでな、これくらい防いでくれると思ったんだよ」
ジリジリとシュンローが押されていく、種族による膂力が桁違いなのだ
「武器は剣でいいのか、奪っちゃうぞ~」
「あいにくこれしか武器が無くてな、たがそんな心配はいらんようだぞ」
迫るもう一人の傭兵、熊系の獣人が斧を構え突っ込んでくる
逆サイドからは魔法使いの放った魔法糸の網が迫ってくる
だが逃げようにもリザードマンに上から剣で押さえつけられている
ならば─剣をその場に残しリザードマンの左脇を抜ける
「なにぃ!?」
シュンローは剣を手放して走り去った、ならば剣は地に落ちて当然である。しかし剣は微動だにせずリザードマンの剣を防ぎ続けている。
実は他人の剣を奪える程の力を剣の精霊は持っていない。
だがシュンローと共に打った剣であれば自在に操る事が出来る
例えそれが他人の腰に有ろうとも
「あんたいい剣持ってるな、少し借りるぞ」
熊獣人の左腰に下げてあった剣が鞘から抜けシュンローの手に収まる。精霊術士の助言を受け斧を使っているが剣を外す事まではしなかったのだろう。
それがシュンローの打った剣とは知らずに
再び剣を手に入れたシュンローはその剣でもって熊獣人の斧をしのぐ
そしてばれない様にゆっくりと手元まで戻していたダガーを空中から射出、靴を突き破り足の甲に刺さる
「ぐっ!」
もちろんこの程度で怯んだりしない、熊系獣人のウリは耐久力だ
だからこそダガーを突き刺したのだ、音を頭に届ける為に
ダガーの柄頭を踏みつけ力を送る
「グギャギャバガガギャ………」
熊獣人が仰向けに倒れこむ、ここを抜けてしまえば後は自分達は守られる側だと棒立ちしている木偶の坊達だけだ
右手の剣と左手の音で全員制圧する
残るはリザードマンと魔法使いだけだ
「……ふぅ」
振り返るとファルシオンはリザードマンに踏みつけられている
どうやら力負けしたようだ
シュンローから魔法使いを守る様に立ちふさがるリザードマン
「姐さん、他の奴等連れて逃げれるかい?」
「…無理、私がここを離れたらエイチカが死んじゃう」
「俺の事は気にすんな、どうとでもなるさ」
「なるわけ無い、酸素と温度の操作出来なくなる」
「え!?貴女が操作してたの!?」
当初シュンローは女魔法使いが防壁、代理人達が酸素と温度調整だと推測していた。だが実際は全て一人でやっていのだ
(どうりで攻撃頻度が低いわけだ)
防壁を消しても酸素・温度調整は継続しながら戦っていたのだ
本気ならシュンローは危なかっただろう
(こちらには剣とダガーが一本づつ、リザードマンはファルシオンを押さえつける為に動けない。もし動けばファルシオンも自由になる。魔法使いは調整を消せない…勝ったかな)
リザードマンが動かざるをえない様に魔法使いに狙いを定め一歩を踏み出し─
「はい、おしまい。もう良いだろう」
シュンローとリザードマンの間に空から福太郎が降りてきて止めに入る
「…何で降りて来ちゃうんですか、後二人だったのに」
その言葉に悲しそうに目を伏せ首を振る福太郎
先程の光景が目に浮かび心が苦しくなる
「命がけで背中の女を守ろうとする男とそれをニヤつきながら攻撃しようとする男……見てられん」
自らの命をかけて女を守る男、逃げずに男を支える女、そしてそんな女にニヤニヤと笑みを浮かべ襲いかからんとするのは自分の家の居候
そんな状況を作る発端が自分だと思うと止めずにはいられなかった
「…ニヤついてました?」
「そりゃもう」
「してたぜ」
「してた」
「…えぇ」
相手からも突っ込まれるシュンロー
本人に自覚は無かったようだ
「でもどうするんですか、二人も残しちゃって…」
「うむ、それなんだが…」
くるりと顔を傭兵二人に向ける福太郎
少し微笑みながら言葉を続ける
「お二方、この後お時間が有ればうちにいらっしゃいませんか?」




