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次の人生も女神嫁と共に  作者: 八木杉 ケイシ
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シュンローの戦い 前編

 近くある岩に完全に体を隠すシュンロー

 当然彼方から見えず此方からも見えない

 そこから精霊に指示を出す


「フーさん、ツーさん、砂嵐消してください」

(けすよー)

(きをつけてね)


 その途端、調査団を覆っていた砂嵐が掻き消えた

 もちろん調査団は驚いたがこれを好機と見て一気に進行する様だった

 しかし、防壁の中では言い争いが始まっていた


「だから防壁を消せと言っているだ!無駄な力を使うな!」

「…これはおかしい…何でいきなり砂嵐が消えたのか様子を見るべき」

「そんな必要は無い!なぜ砂嵐が消えたのか、それは我等四名家の血が選ばれているからに他ならない!」

「いってぇ何に選ばれたっつうんだよ、良いから大人しく姐さんの言うこと聞いとけや」

「貴様!傭兵の分際で我等に楯突くか!」

「てめえらの妄想に巻き込まれて怪我でもしたらたまんねぇからな、姐さんに従えや」

「我等は結果を出さねばならぬ。その為には防壁を張りながら進んでいては遅いのだ。女魔法使いよ、使い魔を出し我等を乗せ移動せよ。その為の汝だ」


「これだから四名家の依頼は受けたくなかったんだよなぁ」

「でも金払いは良いからな」


 調査団の声が良く聞こえてくる、これはシュンローの音の精霊の力だ。盗み聞きなどお手の物だ

 どうやら防壁を消して速度を上げたい代理人側と様子をみて慎重に進みたい傭兵側の対立らしい

 言い争っている傭兵側は仮面を着けた魔法使いとリザードマン、残りの二人は否定的ではあるようだか表立って対立はしない

 対する代理人側は一人のみ静観している状況だ


(四名家の奴等、かなり焦ってるな。何をそんなに焦る事がある?)


 彼ら代理人は四名家の血を引いてはいるが分家の者達だ

 決して本家を継ぐことはない。

 だが千載一遇のチャンスがやって来た。本家が力を失いつつある今なら本家に食い込める。もし本家に代わり精霊の力を手に入れれば自分達が本家になれる。しかし自分達以外にも狙う者が居るかもしれない。それが焦りの元だった

 そして言い争いは代理人側が勝った様だ

 魔法使いがため息をつきながら杖を振り防壁を消していく

 それがシュンローの狙いだった

 防壁は内外からの干渉を妨害する、中から攻撃は出来ないが外からの攻撃も受けない

 叩き続ければ壊せるが多対1でそんな事すれば良い的だ

 だからこそ本人に消してもらう為に砂嵐を消したのだ

 しかし──


(かなりやり手だな、砂嵐消しただけで怪しさに気づいた)


 魔法使いは既に何か警戒しているだろう、相棒らしきリザードマンも同様だ

 だがここで様子見を続ければ代理人のいう通りに速度を上げて行ってしまうだろう


(ふぅ……行くか)


 シュンローはファルシオンを抜き放ち集団の後方、精霊術士に向けて全速で駆け出した

 人間が走ればそれ相応の音がする。息づかい・足音・衣擦れ等抑える事は出来ても消す事は無理だ

 しかしシュンローは精霊の力で全くの無音、一切気づかれる事なく精霊術士達に接近し─


「フンッ!」


 右手のファルシオンの腹で一人目の後頭部を強打、殺す気は無いが死んだら死んだでしょうがないという心づもりだ。

 そのまま横を駆け抜け後ろから左手で二人目の首を掴む、その瞬間に相手は昏倒、崩れ落ちた


(二人!)


 ここまでの事をして未だ無音、流石に傭兵達は気づき振り替えるがもう遅い。既にシュンローは代理人達に迫っている。体を低くし、代理人の足を狙いファルシオンの腹で薙ぐ様に振る。代理人は反転し地面に頭を強打、気を失う。同時に隣の代理人の足首を左手で掴み力を使う。頭から遠いので先程より力を込める


「ガギャギガガゴガァ……」


 喉から声にならぬ声を上げて失神する代理人


(四人!)


 そのまま魔法使いに狙いを定め向かっていくが─


「オラァ!!」


 リザードマンの体当たりに吹き飛ばされるシュンロー

 地面を転がりながら左手で腰のダガーを引き抜き、回転が止まり体勢を立て直した瞬間に傭兵の一人、鬼人の戦士に投げ放つ

 だが相手は戦闘を生業にしている者、鍛冶屋とは戦闘技術に大きな差があった。ダガーは避けるでも弾くでもなく掴まれ止められた


「遅いな」

「まさか受け止めるとは…助(・)か(・)る(・)よ(・)」

「なに!?…グギギゴゲゴギャァ…ァ…ァ」

(五人!)


 四人目の代理人と同じ様に奇声を上げ倒れる鬼人戦士、ここで傭兵を減らせたのは僥倖だった


「魔法…いや!精霊剣だ!」


 精霊術士が叫んだ。

 《精霊剣》己の武器に精霊の力を流す、又は溜める技(・)術(・)の事である。ダガーに精霊の力を溜め投げたのだ。相手が防御した際に力を流す予定だったが受け止めてくれたので想定以上に威力が出た

 これで五人、半数近く倒す事が出来たが吹き飛ばされ、集団と距離が出来てしまい傭兵達が武器を抜き態勢が整ってしまった。


(あと一人くらい減らしたかったんだけどな)

「貴様、見た事がある顔だ。エリクション家所属の精霊術士だろう。何故こんな事をしている。何故精霊の力を使える。」


 残ったエリクション家の精霊術士が問うてくるがまともに答える義理は無い


「知らねえよ、俺の血が認められたんじゃねえの」


 代理人が話していた事を引き合いに出し軽口を叩く

 だがこれは失敗だった、この発言が代理人に何かあるのだと確信させてしまったのだ


「!!奴を捕まえろ!殺すな!情報を聞き出すんだ!!」

「奴の精霊は音と剣だ、剣は使うな、奪われるぞ」

「……ばらすなよ」


 出来れば魔法使いには防御に専念して欲しかった所だが、軽口のせいで捕獲の方に動いてしまった


(少し…キツいかも…)


 シュンローは心の中で弱音を吐いた

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