堪能
シュンローに屋敷を案内するとやはり珍しいのか色んな物に興味を持った。
「このお屋敷はどこの国の物なのですか?」
「ワシの国、日本と言う。精霊達が再現してくれたんだよ」
「そのお国はどちらに?」
「遠い場所だな、ワシにももう戻れん」
一番興味を持ったのはトイレだった
「これがトイレ…こんなにキレイなのにトイレ…水で流すのか…どういう仕組みなのですか!?」
「すっすまん、ワシも良く知らん!」
そして居間で食卓を囲んで晩御飯を食べている中、シュンローがある問題を思い出した
「すいません、一つ問題が有るのを忘れていました」
「…?アレルギー?宗教上食べられないものでも?好き嫌いならあんまり誉められんぞ。」
「いえ、アレルギー?や宗教?はちょっとわかりませんが食事はとても美味しいです。この焼きとうもろこしなどかなり気に入りました。この香ばしい調味料は何なのですか?」
「それは醤油と言ってな、ワシの故郷の物だ。キーに頼んで再現してもらった」
「良いですね、少しもらってかえ……すいません、話が逸れました」
「いやいや、気に入ってもらえてうれしいよ」
そう言って味噌田楽に箸を伸ばす、どこから知識を得ているのか最近精霊達の料理の腕がメキメキと上がっている
意外な事にヒーが一番うまく、最近の料理番はほぼヒーで固定されている
ただ未だに主食は無い、数日後に訪れる米の収穫の為に我慢しているのだ
「私が調査団としてここに来た事はお話しましたが、実は後2つ調査団があるのです」
「あぁ~、四名家につき1つづつって事?」
「そうです、内1つが私の調査団と合流した後撤退したので残り2つとなります」
黒豆煮を箸でつまむシュンロー、教えたばかりなのに見事な箸裁きだ
「絶対来る?」
「この屋敷まで来れるかは分かりませんが、頂上までは確実に」
「じゃあ登ってきたら様子くらい見に行くかな」
食べ終わり湯飲みを取る、お茶っ葉の作り方がまだ分からず白湯のままだ
「そもそもなんでそんなにその四名家とやらが嫌いなんだ?…まず体を洗うんだ、長旅で汚れてるぞ。そこのタオルを使いなさい、石鹸はツーくんとキーが作ってくれた逸品だぞ」
「すごいですね立派な石鹸だ。タオルも柔らかい」
「首や耳の後ろに汚れは溜まるそうだ、良く洗いなさい」
ゴシゴシ、パチャパチャ、ゴシゴシ、ザバー………チャプン
「ふうぅぅぅ……あぁ~久しぶりの風呂、きもちイイ~」
「少しぬるめにして長く入るのがワシ好みだ」
「これでぬるめなんですね……簡単に言えば脅されたんですよ~協力しなけりゃ村を焼き精霊を奪うと~」
八重樫家自慢の檜風呂に入りながら話をする二人
シュンローは恨み言を吐いてはいるが顔はふやけている
「わざわざ火のエリクション家の次期当主様とやらが来ましたよ」
「ふむ…聞いてて面白い話じゃ無さそうだな」
「まぁそうですね、奴等への恨み言は多々ありますから」
「ならばワシから聞いておいて何だが後回しにしよう、風呂とはくつろぎながら入る物だ」
「賛成です、こんなに気持ちいいのに奴等の事など考えたくありません」
シュンローはおよそ2ヶ月ぶりの風呂を堪能した
「『断ると言うなら仕方ない、退かせてもらおう。無理強いはせんよ。だがもし不審火などで鍛冶場から火がでたらどうなってしまうかな。こんな小さな村だ、飛び火でもしたらあっという間に火が回りきってしまうだろうね。鍛冶場の主も無事ではすまないはずだ、その時は主を無くした哀れな精霊を我々が保護するしか無いだろうな』…この服良いですね、軽くて動きやすい」
風呂上がり、まるで演劇の様に身振り手振り付きでシュンローが歌い上げた
その姿はTシャツ短パンというラフな格好だ
(むかつくむかつく!ぜったいやきつくす!)
「その時はぜひお手伝いさせて下さい」
(いいぜ!ついてこい!)
「落ち着きなさい、ヒー坊、シュンローも乗るな」
「すいません。まぁそんな感じで脅されたんですよ」
「というか鍛冶屋だったのか。だから剣の精霊なんだな、じゃあ音の精霊の方は……ふんふんなるほど」
「やはり分かるんですね、私の精霊が…」
「音の精霊は君の鎚を打つ音が好きで剣の精霊は君の剣が好きなんだと、だから君の精霊になったと言ってる」
「……それを聞けただけでここまで来た甲斐がありました」
「それにしても何でそんなに誘われてるんだ?シュンローはそんなに優秀なのかい?」
「私が優秀と言うより精霊術士としての成り方と精霊の稀少性ですね」
シュンローの話によれば精霊術士に成るには二種類有るという。
1つが精霊に気に入られ契約する方法、本来の精霊術士の成り方
そしてもう1つが名で精霊を縛り強制的に契約する方法、現在はこちらが主流であるそうだ
前者の利点は精霊の力を使うので自分は消耗しない点、精霊が協力的なのでその力を100%使える点
最大の利点が気に入られさえすれば術士の力に関係なく力ある精霊と契約できる点
欠点は精霊が嫌がる事は出来ない点、精霊に愛想を尽かされると何も出来ない点。
最大の欠点が精霊に気に入られる様な人間が少なく成り手がほとんどいない点。
後者の利点と欠点は前者とほぼ逆
利点は精霊に強制が出来る点、精霊に逃げられない点
最大の利点が精霊を捕まえれば誰でも成れる点
欠点が精霊に命令する為に自らの魔力を必要とする点、精霊が非協力的なので100%の力は出ない点
最大の欠点が術士の力以上の精霊は従わせる事が出来ない点
つまり弱い術士は更に弱い精霊としか契約できず、その力を十全に使う事すら出来ない
「もじろんわだじばぜんじゃでずよ~」
「つまり使える精霊術士が欲しかったと言う事?」
「ぞうでずねぇ~、いっがいどめでもらっでいいでずか~」
「うむ」
「ふぅ…いやぁ身体中が柔らかくなった気がします」
バイブレーション機能&マッサージ機能を追加し、究極のその先に到達した超究極ウォーターベッド。それを満喫したシュンロー、馴染みっぷりが半端じゃない
「端的に言えば奴等が欲しがったのは戦力ですね。四名家同士で精霊の奪い合いとかしてるらしいので」
「なるほどな…精霊の稀少性というのは?」
「これは剣の精霊の事ですね。剣と言う人類が産み出した道具の精霊なので他の精霊に比べて比較的若く、今まで契約した人が居なかったらしいんです。」
「ほうほう」
「つまり自分の達の家は他の家の持っていない珍しい精霊を持っているって自慢したかったんですよ」
「え?そんな事?」
「そんな事です、カスでしょう?後になって剣の精霊の手助けで打った剣は魔力の通りが良く精霊剣や魔法剣にしやすいと高値で売れ、奴等の金策にも利用されました」
「ふぅーむ……長々と話をさせてすまなかったね。今日はもう休んでくれ。色々知れてよかったよ、ありがとう」
「いえいえ、今後も自分で答えれることでしたら何でもお聞きください。それとお願いなのですが……もう少しマッサージして貰いたいのですが…」
その途端超究極ウォーターベッドが震えだした
「止めたいときはスーちゃんに言ってくれ」
(いってくださいませ)
「わがりまじだ~ありがどうございまず~」
こうしてあっという間に馴染んだシュンローの滞在初日が過ぎていった




