米作り
米作りは難航を極め──なかった
ヒーが気温を適温にし、スーが水を管理、フーが苗の間に風を送り空気を入れ替え、ツーが上質の田んぼを作り、キーが苗の育成を操るのだ
これで失敗する方が難しい
家の右側に作った1ヘクタールの田んぼ、4×4で16枚
そこに稲が青々と生えていた、生えてしまっていた
「またやり過ぎた……ワシはバカだ」
福太郎のかつての言葉
『管理出来たとして何を作りどこに卸すんじゃ』
そう、この異世界では卸し先が無いのだ
この量が全て実ったらとても一人では消費しきれない
キーに俵を作ってもらい保存する事も出来るが、それだと作る度に貯まっていってしまう
だからこそ卸し先が必要なのだ
それは福太郎も理解していたはず、なのに大量に作ってしまった理由──
またしてもテンション上がってしまったのだ
精霊達と芽が出たと喜び合い、泥にまみれ体を動かす
ずっと寝たきりだったのだ。楽しくてしょうがない、楽しくない訳がない
その結果が雲一つない空の青、元は荒涼とした大地が耕され生命の苗床となった土の茶、そして瑞々しく風に揺れる稲の絨毯の緑、その三色しかない美しい光景だった
「どうしたものかなぁ」
(ねぇ、おうさま?)
「どうした、キー?」
(なんでわたしにたのまなかったの?)
「…? キーには…みんなには色々頼んでるじゃないか?」
(おこめたべたいならわたしがたくさんだせたよ?)
元はキーの出した種籾から始まっているのだ
わざわざ福太郎が育てなくても頼めばいくらでも出してもらえたはずだ
だがそれをしなかったのは…
「そうだねぇ、それが一番面倒が無かっただろうねぇ。
でもワシは農家として自分の手で作物を育てたかった。
誰かに貰うだけじゃなく誰かに与えたかった。
そんな自分でいたかった
…すまないね、ワシのワガママを手伝わせて」
(だいじょうぶ!たのしい!)(わたしもたのしんでます)(あたしも!あたしも!)(たんぼつくりおもしろかった!)
「みんないたのか…みんなが食べれれば良かったんだけどなぁ」
(((((………)))))
「まぁグリフォンにお裾分けしたり下に持っていって貰うって方法もあるか…いずれにしても先の事は未来のワシに任せよう」
福太郎の出した結論はまたしても後回しだった
そして福太郎の何気ない一言が精霊達に秘密の計画をさせる契機になっていた
それからは親グリフォンに黙って遊びに来た子グリフォンをなで回し、迎えに来た親グリフォンに子もろとも怒られたり、貰っていたグリフォンのフンを撒いていた場所から何かの芽が出たり、耕して放置していた場所から芽が出たりと、少しずつ生活に変化も出てきた
そして約1ヶ月、キーの力なのかこの品種の特徴なのか、この短期間で青々とした稲は茶色に変わり黄金色の稲穂をつけ始めた




