種植え
この世界において朝日が昇るという表現は間違っている
太陽の役割をする巨大な球体は常に頭上にあるのだ
しかし、常に明るいわけではない。一定時間になると明るくなりまた暗くなるのだ。まるで時間設定でつく照明だ
朝日が点く、これがこの世界における正しい表現だろう
そして今日も朝日が点いた
ウォーターベッドから這い出る福太郎。その姿はスライムに補食されながも懸命に逃げる子供、という感じで少し不気味だ
「おはよう、ヒー坊、スーちゃん、フー、ツーくん、キー」
精霊達に挨拶する。その愛称は昨日、名前を呼び続ける内に決まった物だ
色んな呼び方を試し、これが良いと精霊自身が決めたのだ
ただ決まるまでには戦いもあった。
フーとキーが呼び捨てで被ったのだ。
やはりみんな自分だけの呼ばれかたが良かった。
多少言い争いもあったが最終的には仲良く二人とも呼び捨てにする事が決まった
全体的にみた場合、この戦いの勝者は少し特殊な愛称を手に入れたヒー坊かも知れない
「今日は種植えをしたいと思う、花代の…神様の木の種だ」
本当は福太郎が耕した場所に植える予定だった
しかし精霊達が八重樫家を再現した際に庭の土も作ってしまった
一度育った実績のある土だ、植えるのであればそちらにするべきだという判断を福太郎は下した
ツーにスコップを作ってもらい庭に小さな穴を掘る
「それでは!これから神様の種を植えます!」
(いえーい!)(かみさまー!)(うえてうえてー!)(おうさまー!)(わーい!)
姿があれば片手を上げノリノリで騒ぐ精霊が見えただろう
精霊達は長い間待っていたのだ。
自分達の産みの親たる神の再臨を
福太郎が右の手のひらを見る。
そこにはくるみのような木の実が乗っていた
花代に渡されていた種だ
福太郎の体と一体化しており植える時に取り出して欲しいと言われていた
それを穴の中に入れ土を被せ、水をかける
(…おわり?)(これだけ?)(することないの?)
どちらかと言うとせっかちなヒースーフー三人組から拍子抜けしたような感想が出てきた
対してのんびりツーキー二人組は何も言わない
「これでおしまい、あとは種が自分で頑張るのを待つんだよ」
(どれくらいで芽がでる?)
「分からないなぁ、はやく出てくれるといいね」
(はやくかみさまにあいたいあいたい!)
「そうだね、楽しみに待ってよう」
ヒーとフーに応える福太郎
精霊達に負けず劣らず福太郎も花代に会えるのを待ちわびている
(さて…やるべき事はやった、これから……やっぱり畑じゃな)
今現在無駄に耕しただけになってしまった広大な農地、これ等の利用に取りかかる事を決めた福太郎だった




