八重樫家
「何でここにあるんだ…」
八重樫家は田舎特有の広い土地に建てられた二階建ての近代和風建築、部屋数は30を超え土蔵も4つもある
中身は何度もリフォームされバリアフリー化も完了している
福太郎が生まれてから死ぬまで暮らした我が家
それが何故か異世界にあった
「…家も…転生?」
もしかしたらそういう事もあるのかも知れないが今回は違っていた
(おかえり!)(おうちできた!)(はやくはやく!)(はいってみて!)(がんばったよ!)
精霊たちの声が響く、みんな自慢げだ
「…これもみんなが作ったのかい?なんでうちを知ってるの?」
(神様にいわれた)(つくってあげてって)(こういういえだって)(王様のおうちだって)(みんなのおうちだからって)
「…そうか、花代が教えたのか。…色々気を使わせてるな。だがいつ聞いたんだ?」
今日の朝だろうか、木が生えてなくても交信できるのか、ワシにも話しかけてくれても良かったじゃないか
と少しふてくされかけていたが精霊たちの返事は考えていたものとは違っていた
(神様がいたころ!)(ずっとまえ!)(もうずっとずっと!)(だから王様まってた!)(ずっとまってた!)
福太郎が転生したのが昨日、八重樫家が建てられたのが約100年前、しかし精霊の言う『ずっと』は数千年以上前である事が意思疎通の力で伝わってきた
(…これも時間を操れるとか言ってた奴か、時間の流れがおかしい。だが─)
「ずっと待っててくれたのか…だから最初から傍にいてくれたんだな、本当にありがとう。みんながいなければ生きていけなかった」
(((((えへへへへ~~)))))
素直に感謝を言う所は転生しても変わらない。
精霊たちもみな一様に照れてかわいかった、そしてその照れ方は花代とほとんど同じだった
「さて、早速家の中に入ってみるか」
八重樫家は敷地を塀で囲んでいたがここは塀が無い
だかちょうど境の場所から土も変わっている。耕した土ではなく元の世界の土が再現されている
ただ庭園の形は再現されていても草花は生えていなかった。
玄関を開け中に入る
「おぉ~、そっくりじゃないか」
家の中を見回ったが柱や壁の傷やシミ、家具家電の一部、その他こまごまとした物が無いことを除けばほとんど元の八重樫家と一緒だった
「しかしこれはどうなってるんだ?」
水や電気が問題なく使えるのだ
キッチンの蛇口からは水が流れて、IHクッキングヒーターも点いた
今は八重樫家ご自慢の檜風呂にお湯を貯めている所だ
「水道設備も電気設備も一切ないはず…」
実は全て精霊の仕業である
水は上水から送られているのではない、精霊がその場その場で流しいているのだ
IHクッキングヒーターも冷蔵庫もレンジも精霊が熱を操作している、明かりも精霊が光らせている
家電の機械部分は全てハリボテである
故に複雑な家電、それ単体では意味を成さない家電、パソコンやゲーム機、テレビや電話機等は再現されていない
しかし、それ以外は精霊が操っているのでやろうと思えば声だけで操作できる
つまり八重樫家は異世界にてスマートホーム化に成功していた




