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雷鳴激突

「うわああッ!?」


■フィールドに響く悲鳴■

■場所は、ベント達が守っている防衛ライン・闘技場内■


「ひゃはははッ!!」


■高らかに笑う乱れの選手■

■彼が持つナイフが、ぎらりと光る■


「――どいてください。私はジャスミンさんを助けないといけないんです」


■それを、彼女は即座に対処した■

■その身に纏うは氷結・星の輝きを示すもの■


「ぐ、ああああッ!?」


 乱れの男は、ナイフを持っていた腕が瞬時に凍りつき、動揺を強く露わにする。

 目前で相対する少女の仕業であることは分かるが、あまりに強烈な攻撃に対処することは出来ない。

 人数は乱れ側の方が多いが、闘技場の防衛ラインを突破することが困難になっていた。

 

「ここは通しません。我が誇りに懸けて」


 彼女の流れるような黒い髪は、美しくフィールドを彩っていく。

 着ている赤いスポーツウェアは、彼女が秘めている熱意を示しているかのようだ。

 輝く星の一人、ポーラの加勢。

 それによって、完全に乱れ側が不利な状況に陥っていた。

 侵攻者の中に混ざった二人の傑物。

 鋭く凄まじい二つの刃が、邪悪な竜の群れを切り裂いていく。


「邪魔だぁ!! こっちはダチの為に戦ってるんでな!! 負けられないのさ!!」


■ポーラとベント■

■クライスに助力するべく、星が輝く■


「な、なんで。こんな奴らがいるんだァア!?」


「トップクラスの選手がッ!? くソッ!! ちくしょうがァッ!!」


 弾け飛ぶ魔導の勢いに押される乱れサイド。

 二つの星は肉体の動きと共に自然の言を用いて、その威力を倍増し、敵集団の攻撃に穴を空けていく。

 この優勢は、二人が経験によるテクニックをそれなりに積んでいることも理由だろう。

 敵の攻撃を瞬時に見極め、正しい順序で確実に対処していくセオリー通り・それを狂いなくやっていく絶技。

 ただでさえ総戦力で負けている乱れ側に、勝てる道理なし。


「舐めていますか? 【そんな攻撃】では、到底こちらのブロックは崩せません。積んできた日々の重みが違います」


「はッはァ!! そういうこったァ!! なにやら妙な強化されてるみてーだが、その程度で逆転されるほどやわじゃねーよ!!」


 躍起になって突破しようとする乱れ達だが、それが既に逆効果。

 逸ることで動きが単調になり、二人の防御技術はそれを見逃すことはない。

 ポーラの足技が迫る敵選手の顔面を凍らせ、即座に砕いて迎撃した。

 顔面の一部を破壊された彼は、失った左側の視界に怯むも、まだ消滅することなく叫ぶ。

 

「この女ァ!! コロす!!」


「……」


■躍起になってポーラを止めようと、掴みかかる男■

■しかし■


「うおアっ!?」


■男の右腕が凍りつく■

■その一瞬の隙を狙って、ポーラは再度蹴りを食らわせた■


「ぐ、はァッ!?」


「その程度では無理ですよ」


■氷の女王は、クールな対応で侵攻者たちを食い止める■


(相変わらず、惚れ惚れするほどの技の冴えだ!!)


 ポーラの戦法はベントと同種のものだ。

 肉弾戦に自然の言を混ぜ合わせた格闘スタイルは、多種多様な効果を生んで敵対者を翻弄する。

 儀攻戦における彼女の必勝戦法は、敵選手を自然の言で動揺させて、勝利への道を切り開くというもの。

 どんな人間も自身の肉体が凍りつけば、一瞬以上の動揺は避けられない。

 そこにファイターとしての速力がマッチすれば、鬼になんとやらだ。


(それなりに強いけれど、やはり足りない。私の敵じゃない)


 選手としてのスイッチが入って冷静になったポーラは、的確に敵チームを分析・脅威ではないと判断。

 クライスに怪我を負わせたハーディンならともかく、その他の選手には負ける気がしなかった。

 スターライト・ファイターとしての圧倒的な格を見せつけ、敵の攻勢ラインを牽制する。


(クライスさん、こっちは任せてください)


■氷結と共に繰り出される、美しき足技・洗練された強さ■

■それは仲間の士気を上げ、乱れ達の波動の影響を緩和していく■


●■▲


【ふむゥ……そうかァ】


■仲間の連絡を受けながら、ハーディンはフィールドを走る■

■彼は自身の足元に視線をやると、何かを思案するように眉を下げた■


【なァるほどォ……!! 2つかァ、分かりやすいィイのはァ】


■小さくしぶきを散らしながら、にやりと笑う■

■その狙いは……■


【……同時だなァ。やるとしたらァッ】


●■▲


「島に来て、はじめて触れた……あの漫画に出てくるようなヒーローを」


■不自由の少女は願った■

■自身を助け出してくれるような、幻想の存在を■


「ああ」


■村を救った英雄は、まさしくそんな風に思える存在だった■

■なので焦がれた■

■理由なんてそんなものなのだろう・それで充分■


「そして」


■いつからだったか■

■友人である少年に、重なった英雄の影■


●■▲


「ぐっひひひひ、ひひひひッ!!」


■ハーディンは不気味に笑うが、その顔には冷や汗が浮かんでいた■

■結論から言うと、乱れ達は確定的な敗北寸前であった■


「なんという……ッ。なんという……窮地か……ッ!! ぐふッ」


■彼の目前では、少し荒れた平地での選手たちの激突展開中■

■その頭上では、ハーディンの気分を示すような曇り空が展開中■


「いけるッ!! このまま押し切れーッ!!」


「ゴールは目前だ!!」


■自身の背後に在るゴールへと、迫ってくる敵選手たち■

■それを見て、ますます焦る乱れの首領■


「ぐ、アああ……ッ。なんという……なんという……しか言えん……ッ。ぞ……ッ!!」


 片膝を突いて屈しそうになるギリギリで、彼はなんとか耐えていた。

 だが、まさか己の【指揮】によって強化されている軍隊を、ここまで見事に対処されるとは思わずに驚きを隠せない。

 即座に切り返してくる、この脅威は【最終的障害】を連想させるものだ。

 自身に足りないものがあるような気もするが、それを素直に反省するような性格でもない。


「強い……ッ。強いのは認めざるをえんがッッ。しかしッッ」


■彼の頭を巡るのは、様々な思いや欲望■

■その中で、特に強く発せられる声がいくつかあった■


【——儀攻戦って言うんだ。そのつまらない競技の名前は】

 

■頭に、自然と強く響いた言葉■

■そこで彼は奮い立つ■

■ジャスミンという最愛のヒロインを、取り戻すため……だけではなく■


「……ぐッはっはッ!! はハはッ!! 【当然】であろうッ!! それは!!」


 叫びと共に、ハーディンは己の覇気を取り戻した。

 このまま負ける訳にはいかぬと、再起の熱意を瞳に宿して、指揮棒をしっかりと強く握る。

 状況が不利には違いない・しかしまだ諦めない。

 ああそもそも、こういう状況は過去に経験済みであると。


「ぐふッ。……ああ・ああ。分かっているともッッ。ぐははッ!!」


■勢いよく指揮棒を振り出し、躍動する肥満体型■

■彼の周囲に渦巻く気配が変質する■


「まだまだッ!! 勝てるチャンスはあるッ!! ぐははあはッ!! 弾けろ乱れの使い達よッ!! 儂の手足となってなッッ!!」


■ハーディンが指揮棒を振る・その様は、まるで狂気に彩られた踊りのようにも見える■

■だが、彼の瞳は勝利に向けてギラついていた■


「……なんだ!! さっきよりも何かっ」


「強くなっている……? いや、間違いないっ」


 ゴールに向けて侵攻する選手たちが、確かな違和感を感じ取った。

 自身たちを阻む敵選手たちの壁が、徐々に強くなっている。前にもあった現象だが、その強さの上昇速度はさらに上に思えた。

 突破できないレベルに到達するほどに。


「ぐッ……! まずい! 早く!」


 剣を持った男性選手が、目前の乱れ達の構えた盾による壁に、全力の一撃を加える。

 しかし、攻撃は弾かれて無効化される。

 あまりに強固なそれは、時が経つほどに強化されている。その事実が侵攻者側の共通認識となった。


「ならば……!! 魔導だ!!」

 

■壁と白兵戦を行っていた選手たちが後退し、その後ろで待機していた魔導師たちが攻撃準備に入る■

■迅速な攻撃方法の変更、息の合ったコンビネーション■

■練習の深みが伝わってくるその動きに、ハーディンはぴくりと眉を揺らした■


「放てー!!」


■次々と撃たれる魔導の数々■

■直撃し、炸裂していく様々な力■

■それは、確実に敵の壁を揺るがしている■


「……がァ、しかしィ」


■揺らぐだけで壊れない■

■その壁は、魔導攻撃にも対応している■


「こうなるのはァ、まァ必然ではあったナァ。ぐはッ。【筋道】は見えたァ!」


 完全に立ち直ったハーディンは、遠くをちらりと見遣る。

そして、事前に【物理・魔導】両方の防御を固めたチーム編成にしたことを、成功と確信した。

 幅広い攻撃に対応する、その方向性。

 それは、ある人物のアドバイスもあって完成した形である。


【まー、素人のオマエに出来ることは、そんなになイ……。とりあえず、分かりやすい強みを生かす方向性にしておけヨ】


■元、異世界競技の経験者は語る■

■完全に初心者であるハーディンでは、おそらくクライス達のチームには勝てないだろうと■


「ぐッふ……マリオの奴め……!! 舐めたことを言ってくれる……ッッ。儂が負ける……?」

 

 力を貸してくれた同胞に対する感謝の念はあれど、それはそれとして敗北予想されているのは、かなり不服ではあった。

 この儀攻戦自体に思い入れなどない。

 だがしかし。


「——状況は劣勢ッ。しかししかし!! 勝てる可能性がないわけではないッッ」


■声を張り上げるハーディン■

■その瞳の熱は・加速度的に強まっていく■


「燃え上がれッ!! 同胞たちよッッ!!」


■指揮棒が、縦横無尽に振られていく■

■より激しく・より強く■

■防御壁が強化されていく■


「……!! さらに強固にッ」


 乱れ達の強化によって、攻勢の勢いはどんどん落ちていく。さらに、彼らが放つ波動までもが強くなっていく。

 その状況に、侵攻者たちは明確な焦りを顔に浮かべた。

 突破しようとする勢いが強まり、強固な壁に立ち向かっていく。


「うおおお!!」


「早く!! このままだと……!!」


■攻勢は勢いを増していく■

■突破口を開こうと、鬼気迫る迫力であらゆる攻撃手段を行う侵攻者たち■

■そして■


「よし……ッ。いける!」


■敵の壁に空いた穴■

■その侵攻ルートを逃さず、走り出す速力突出タイプの選手■


「おおお!」


 その走りは、クライスほどではないにしても充分な領域にあった。

 鋭くキレのある攻勢走法は、見事に壁の隙間を突破し、その先にあるゴールへと向かう。


「ぐ・ハァ」


「なっ!?」


■出現する影■

■ハーディンの右腕による、強烈な打撃がランナーに迫る■


(思っていたより、かなり速いっ。しかし対処できない攻撃ではない!)


■攻撃を回避するように、彼は鋭いステップを刻む■


「——?」


■が■


「ぐあっ!?」


 激しい衝撃と共に弾き出される体。

 敵陣へと切り込んだ男性選手が、回避行動に失敗して、巻き戻りのように自陣へと戻される。

 強烈な一撃は彼の芯まで響き、大きく体力を削った。

 その様子を見た味方選手に動揺が走る。


「ばかな……!! なんだ今のはッ」


「完全に避けれるタイミングだったはずっ。なぜ……?」


■ハーディンとの接敵を見ていた者たちは、侵攻が失敗したことを疑問に思う■

■どう考えても突破できる壁だった。のにと■


「はははッ!! 儂の【力】を舐めるなァ!!」


■演説するかのように、自身の力を誇示するハーディン■

■その体から発せられるオーラは、自信にあふれていて、威圧感を与えてくる■

■得体の知れない存在感は、敵選手を委縮させる独特の気配を持っていた■


「くそ……!! これが乱れの一角かッ」


 さっきまで勢いを保っていた侵攻者たちの動きが、急にそれを無くしていく。

 ハーディンという存在を強く意識すればするほど、うかつに攻め込むことは難しい。あるいはそれが……?と、思う気持ちはあっても足止まる。

 あっという間に、乱れ達にペースを破壊されてしまったようだ。


「ひゃははは!! どうしたァ!!」


「うおッ!?」


■次第に押し返されていく、攻勢側のライン■

■それもそのはず■


「ぐ・ハッはッ。強化された同胞の波動はァ……!! 貴様らにとって毒だからなァッ!! 時間を考えるとキツかろうゥッ」


■乱れ達の放つ波動■

■強化されたそれが、攻撃を行う選手たちを蝕んでいく■


(守りは固いィイ。そう、こういう展開になることを望んでッ、固くしたァッ。とにかく早期決着を防ぐことがァッ。儂の勝機ィイ!!)


 終点到着による、試合の速攻決着。

 敵側のこれまでの攻勢から、その狙いを読み取ったハーディンは、まずはそれを崩すことから開始した。

 特殊な【指揮棒】による統率で、ゴール前の守りを固め、敵の侵攻を遅らせる・その分、波動による影響は強まっていく。

 

(そうなればァ。両チームの戦力差を埋める……きっかけの一つにはなァるゥ!! そう、これはきっかけの防御態勢ィ!!)


 ハーディンの脳内で巡る、試合に勝つための方法・策略。脂汗を流しながら、こめかみをストレスで痙攣させ、必死で頭を回している。

 正直言って、現在の彼は変わらずまるで余裕がなかった。

 追い込まれているのはクライス達ではなく、間違いなく乱れ達のチーム。

 ならばこそ、勝利するための好機をなんとしても掴まないとならない。


「ぐ・フふふふふッ!! 思い出すなァッ。かつての苦境ををォッ」


■顔を歪ませながら、笑みを深める邪悪の者■

■彼は次の一手を打とうと■


「——あははは!! なんだか停滞してるね!! 思ったよりやるー!!」


■ハーディンの思案を断ち切るような、能天気な声響く■


「……ぬゥッ」


■彼は、声のする方へ視線を向ける■

■そこには、防衛を砕く【雷鳴】の輝きが広がっていた■


「どいたどいたー!! 邪魔しないでよー!! 今はあんまり楽しめない状況なんだ!!」

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