連鎖の火花
迸る電撃の嵐が、乱れ達を蹂躙していく光景。
雷光を纏う彼女を止めようとする選手たちは、電撃に弾かれて接近できず、その前進を止めること叶わない。
その攻撃的なプレイスタイルに、ハーディンは覚えがあった。
「エレジー……ッ。麗しき雷鳴の姫ッ」
■クライスとも戦ったことがある、スターライトファイター・【雷神】のエレジー■
■長い黒髪を後ろでまとめ、白のタンクトップ+ホットパンツスタイルの、魔導具完全装備状態■
■雷鳴を響かせる美姫が、混迷のフィールドに推参した■
「変わらず美しい……がッ。ここを通すわけにはいかんなァッ!! ぐはハはッ!! 守備陣形ッ!!」
■指揮棒が縦横無尽に動かされる■
■それに呼応するようにして、乱れの選手たちの動きが変わった■
「おっ。なんかいきなり守り上手くなった?」
エレジーの電撃の中を、負けじと突き進んでくる選手たち。
ダメージがないわけではないが、耐性系のスキルでも使っているのか、なんとか堪えながら彼女をブロックしようとする。
それは闇雲に突っ込んでいるわけでもなく、ある程度電撃を回避するように立ち回りながら、あくまで効率的に防御を行っている。
「ひゃハはは!!」
「その首もらったァッ」
■数人の選手が、その刃を光らせる■
■鋭く走る一閃■
「あはは!! 結構速いねー!!」
「!?」
■選手たちの攻撃は、すべて空振り■
■エレジーの速力によって、攻撃が当たらない■
■彼女は敵を抜き去り、ゴールへと着実に接近していく■
「ぬゥウ……!!」
ハーディンはエレジーの動きを見て、やはりと顔をしかめた。
過去の大会で目に焼き付いている、【雷鳴の騎兵団】の主力である雷神の走り。女神と見間違うほどの、強く・美しい魔導走破。
電撃爆走突破——あの破壊力は、現在の戦力で止められるものではない。フィールドを【見】ながら、そう結論を出した。
「ぐふッふふッ!! だがァ!! まだッ!!」
■ハーディンは負けじと、指揮棒を振り回す■
■その瞳に宿る熱が・より勢いを増していく■
「守備変更・重点防御ォッ!!」
■ハーディンは叫ぶ■
■それに呼応……というには、あまりに不自然な動きと共に、選手たちが一斉に壁を構築する■
「むむ! これはちょっと、数多いね! 思ったより対応早いじゃん!!」
大きな盾を持った選手たちが、エレジーの走行ルートを塞ぐように立っている。いくら彼女が速いと言っても、ここまできっちりと妨害されたら、さすがに容易くは突破不可能。
スピードで止めるのは不可能と即座に判断し、ある程度防御を偏らせてでも、雷神を止めるための壁を構築する。ハーディンの戦術。
「初心者って聞いていたけど……なかなか才能あり?」
■エレジーはハーディンの脅威を、さらに強く評価した■
■乱れの波動によって、ある程度有利になったことで得られたリソース■
■それを逃さず即座利用し、上手く脅威の抑制に繋げる様はまるで……■
「全体が見えている——そっち系の素養持ちね」
ハーディンが秘めているポテンシャル。
それは、ここにきて急速に成長を続けているようで、エレジーが警戒を抱くほどにまでなった。
そう、彼女がさっきまで抱いていた認識を変えざるを得ない・乱れ達の急速的な脅威上昇。
「余裕勝ち……はキツくなってきたかも。まぁ、負ける気はないけど!!」
■あくまでエレジーは前向きに■
■彼女の纏う電撃は、より強烈に敵陣を崩そうとする■
■敵選手の盾部隊は、それをなんとか防いでいた■
「ぐっふ・思った通り。こういう【防御】があの電撃天使には有効かァッ。……ひやりとしたわッ」
魔導に対して強い耐性を持つ選手たちによる、対エレジーの防衛ライン。
彼女の攻撃スタイルが、あくまで電撃による結界+速力によるものであると見抜いたハーディンは、とにかく走行ルートを塞ぐことに集中した。
「爆発的な魔導攻撃力……! それによって道を開くタイプではないィい……ッ!! ぐッはッッ!!」
エレジーの電撃は防衛ラインを崩せない・揺るがしてはいるが、決定的な崩壊を起こすことはない。
彼女は強固な壁を前にして顔をしかめ、その走りを止めざるを得ない。
それを見たハーディンはにやりと笑い……一筋の汗を顔から落とした。
彼は内心びびっていた。彼女を奴隷として捕らえることを、考える余裕もないほどに。
それはそれとして、その美しさを鑑賞してはいる。
(美しい……ではなくッ、なんだ……ァ。あのデタラメなァ……電撃魔導の威力はァッ。かなりの速力に加えて、この壁を揺るがすほどの威力だとォッ)
流れる汗が少しずつ、その量を増していく。
痛む心臓を無理やり無視しながら、ハーディンは次なる策を構築しようと必死だ。
だが、まだ勝機はあると確信しているからこその、その行動。
「ぐ・フははは!! 勝つッ!! 儂は勝つッ!! 天命は傾いているッッ!! この覇者にッィィイ!!」
■高らかに叫ぶハーディン■
■彼が刻むは・主人公としてのHISTORY■
■それは誰にも止められない・PASSION ROAD■
「儂の快進撃はここからッ!!」
■やたらと暑苦しく、彼はガッツポーズを取った■
■完全に自分に酔っているが・それを指摘したところで、それがどうした?と返すだろう■
「——嫌な熱気を感じるな・燃え尽きろ」
■ハーディンの背後で、凄まじい熱波が発生した■
「な、にィッ!?」
肌を焦がすような威圧感を感じて振り向く彼は、フィールドを貫く紅蓮の炎を目にした。
それは明らかに魔導による灼熱で・しかし、あまりにその威力は強烈に感じられる。熱波が肉体に浸透していくようだ。
冷や汗を流しながらハーディンは見た。火炎によって倒れていく選手たちの奥、そこに立っている銀髪の麗人の姿を。
「あの美しさはッッまさかァッ……!! 灼熱の勇士!! ミリアムッ!!」
■銀の長髪をなびかせて、彼女は威風堂々と君臨する■
■身に纏うは、白を基調にした衣服。上半身は、肢体がはっきり分かる上着で覆われ、下はショートパンツと両足に巻かれたベルトが対照的で映える■
■天使か悪魔か・ミリアムは鋭く両目を光らせる■
■右手から放たれる紅蓮の炎は、フィールドを輝かせていく■
「強者はどこだ? 忌々しい乱れの首領は……どこにいるッ!!」
強烈な灼熱の中を進んでくる、驚異的な魔導の使い手。
敵のブロックを破壊しながら進むスタイルのため、エレジーのような速攻性はないが、違う意味での攻撃力は間違いなくあった。
その戦闘スタイルも含めて、ハーディンは焦りを顔に浮かべる。
「美しき女神が……!! 両側から迫ってくるだとォオ」
こんな状況なのに喜びも隠せないのは、さすがは乱れの主力の一人と言ったところか。
それはそれとして全身を滝のような汗が覆っていて、余裕のなさが全面から伝わってくる。
普通にピンチであった。
ピンチなのに興奮も隠せない、彼の内面は現在ぐちゃぐちゃだろう。
「ぐひょォ!! たまらん光景ィ!! ぬぬぬゥッ!! まだァまだァ!!」
■指揮棒を振る彼は、既に必死の形相■
■想定以上の敵チームの戦力に、どんどんと心臓が痛くなっている■




