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爆裂対峙

「……やはりな。まさかこれほどとは」


 ゼノは歯噛みしながら、ハーディンへの距離を一気に縮めていく。彼さえ突破すればゴールはすぐそこで、何も遮るような壁はないだろう。

 そう、突破することが出来れば。だが。


「そこを通させてもらう。ハーディン」


「ぐふ・フ――言う必要はない。結果で示せよ」


 そのつもりだと、ゼノの肉体が無言で駆動し、ハーディンとの近接戦に突入した。

 初手はどちらか?

 最初に仕掛けたのは。


「ぬうッ!?」


■激しいパンチの連続が、ハーディンの肉体に炸裂する■

■あまりに鋭い攻勢■


「おおおッ!!」


■乱れを取り逃してしまった、その責任■

■それを果たすかのように、ゼノは凄まじい気合いを発する■


「ぐ、ぬゥ。爆裂魔導だけでは、ないかッッ。厄介ッ」


 顔を歪めて、相対する敵の脅威を認識するハーディン。

 ソルジャーとして、爆裂魔導で活躍してきた人物ではあるが、それがなくても十二分に強力であった。

 島を守護する者たち、そのトップの名は伊達ではないと、そう認めざるをえない強敵だ。


「だがァ。その攻撃もどこまで続くかァ、なァ?」


■それでも、乱れのトップは揺るがない■

■邪悪な笑みを深めて、チームの核としての余裕を崩さぬ構え■


「……!!」


 ハーディンの言う通り、ゼノの連撃は徐々に勢いを失っている。さっきの魔導力吸収+消耗激しい爆裂魔導の連続使用。

 ここまでの戦いで、スタミナ切れを起こさない方がおかしい負荷を背負っていた。

 それに加えて。


(なんという、強靭な防御力……!! これほどの連撃を受けて、ダメージによる崩壊の兆しさえないのかッ)


 ゼノの拳を受ける肉体の強度は、今まで見たことのないレベルのものだった。偽ハーディンから推測できたこととはいえ、オリジナルのそれはさらに強大・鉄壁・不動。

 情報として聞いている悪辣王にも匹敵するのでは?そう思わせる防御力の高さ。

 斥候役から聞いた情報を合わせると、ハーディンが能力超過しているのは確定。

 改めて、彼の脅威性を肌で感じる。


「化け物がッ」


「なぁにィ。この程度で化け物扱いは心外だァ。——本当の化け物どもを知らんのか」


「!!」


■カウンター気味に放たれた、ハーディンの右拳■

■思ったよりも素早いそれを、ゼノはギリギリで回避する■


「ちィッ!!」


 舌打ちはどちらのものか。

 なんにせよ、状況は少しの頓着の兆しを見せていた。

 ハーディンの防御力が高すぎるせいで攻撃はまともに通らず、対してゼノも、彼の攻撃を回避できるほどの速力は持っている。

 なので・スタミナ切れを考慮すると策は一つ。


「ぬぉオッ!?」


■ハーディンが攻撃を受け、わずかに揺らいだ隙にゼノは駆けた■

■何も倒す必要はなく、ゴールさえすればいいのだと■

■敵をすり抜ける形で、全力疾走による攻勢を開始した■


(完全にこっちの方が速いッ。これならッ)


■ゼノが、ハーディンを完全に抜き去るために足を踏み出す■


「——なんだァ? 正面戦闘が好みかァァ・騎士道めッ」


■その直後、真正面に抜き去ったはずのハーディンが立っていた■


「ッ!?」


 瞬時にワープした?

 一気に速力を上昇させた?

 疑問がゼノの頭を埋め・続けて強力な衝撃が彼の体を貫いた。


「ごアッ!?」


 あまりに強烈な一撃、破砕の拳。

 ハーディンの攻撃がカウンター気味にHITし、体勢を保てずによろめいてしまう。

 それは明らかに肉体を砕く威力で、事実として彼の脇腹部分は砕かれ、そこからひび割れが胴体全体に広がっている。

 後一発食らえば、確実に消滅に追い込まれるレベルの威力だ。ゼノの防御力は決して低くない……にも関わらず。


(あり得ないッ。なんだこの一撃は……カウンターとしても重すぎる!)


 体が思うように動かない、受けた攻撃が強力すぎた。

 意識が明滅しているかのようで、完全に復帰するには分単位の時間がかかる。

 それはあまりにも・致命的。

 ゼノはそれを悟った。そして。


「……!」


 ハーディンの近くに立っている、敵選手の集団。そこにゼノの視線は向く。

 より正確には、彼らが持ち上げているものに。

 それは、口枷と目隠しをされ、体にフィットした黒い拘束衣を着せられた少女。両腕と両足はベルトでしっかりと固定され、完全に身動きを封じられているようだ。

 その桃色の美しい髪は、クライスの大切な存在である、乱れに拉致されたジャスミンで間違いなく。


(いた……やはり。近くにッ)


 拘束衣に装着された、いくつもの厳重な錠。髪に飾り付けられた、高級そうな花飾りのきらめき。

 彼女を持つ男たちの気配も、何か慎重なものになっている気がした。

 

「——ハーディン。お前の奴隷たちは元気にしているかな?」


「……なに?」


■不確かな意識の中で、ハーディンに放った言葉■

■それを聞いた乱れの男は、確かな緊張感を顔に示した■


「どういうことだァ……ッ。一体、儂の愛しき者たちに何をッ」


「さあな。留守の間に、【お出かけ】しているかもしれん、と思っただけだ」


「……ッッ!!」


 見る見る内に、青く染まっていくハーディンの顔。体は震え、口からはかすれた声らしき音を発している。

 どう見ても動揺していて、さっきまでの余裕そうな感情は消えてなくなったかのような、急降下の有様。

 彼の敵意と殺意が膨れ上がっていく。


「貴様ッッ!!」


「……お前には好きにさせん。この試合もなッ!!」


■裂帛の気合いと共に■

■ゼノの最期の一撃がさく裂した■


「ぬゥウ!??」


■最後の爆裂魔導は、ゼノの背後に向けて発動され■

■同時に、混乱と・ある命令が伝わった■

 

「……撤退の合図だッ!! 一旦、引くぞ!!」


「逃げろ!! 次の作戦に移る!!」


 次々に撤退していくクライス達のチーム。あまりにも急速な撤退行動に、多かれ少なかれ敵選手は動揺した。

その様子を見て、乱れ側は混乱する者と追撃する者に分かれた。

 リーダー格のハーディンは、混乱はしているものの、確かな意思を固めて声を発する。


「そんな簡単に……逃がすと思うかぁアああッッ!! たわけ共がァあああああああッッ!! 乱れの同胞たちよ・この場ですべて叩き潰せッッ!! AAAAAGGGAAAAAAぁああああ!!」


■眼から出血を起こしながら、ハーディンは一心不乱に指揮棒を振る■

■狂気に染まったその迫力は、味方の士気を刺激するに充分であった■


「おオッ!!」


「逃がすなァ!! 追えェ!!」


 追撃を開始する乱れの軍勢。

 純粋な能力値以上に、その乱れ特有の暴力性・残虐性が表出した、闘争スタイルが敵に圧迫感を与えることだろう。

 競技性を否定するような混沌の進撃は、勢いを増しながらクライス達へと襲いかかる。


「ぐ、はははハはッッ!! さあさあッッ!! 行け行けーッ!!」


■バカみたいな高笑いを飛ばす、乱れの首領■

■その姿はあまりにも■


「隙だらけ……ですわね……!!」


■疾風の暗殺者が動いた■

■彼女の振るう無色の刃が、ハーディンへと襲いかかる■

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