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蒼き戦姫

「――というわけだよ。状況は分かってもらえたかな?」


「……」


■薄暗い廊下の中で、黒いローブで全身を覆い、歩く女性が一人■

■彼女はサポート通信によって、ある男性と連絡を取っている■


「わたくし……まさか、こんなことになるとは思ってませんでしたわ……ええ」


「はは! それはそうだろう! 誰があの儀式場が壊れると、そんなの予想できる?」


「……それだけなら、まだしも……まさか殿方が……という意味ですわ……。分かっていて、はぐらかしていますわね……? いまいましい……」


■青いロングヘアを揺らす、彼女の名はローラ■

■ラクダノ区の地区長■

■顔が歪み、殺気を帯びたままどこかへ進む。その足取りは重々しく、ある種の覚悟が分かるものだ■


「……ま、それについては悪いとは思っているさ。かつての名残りに泥を塗るような行為だ」


「思ってはいても……止まる気は……ないのでしょう……?」


「当然。これは夢だから……それは分かってくれているだろう?」


「分かっている……と……許せるかは……別問題……ですわよ……!」


 語気を荒げるローラに、相手の男は少し申し訳なさそうな、さりとて楽しそうでもある笑いを返す。

 これから行うことに対するワクワクか・それとも?

 だが、それのせいで彼女はさらに語気を強め、ついにその名を口にする。


「――ゴールド……。殿方の……行っていることが……分かっているのですか……? 無職の勇士さまに弓引くような……愚かな行為を……ッ」


「分かっているとも。……まったく、何かというと無職の勇士だな。ははは」


■ゴールド・ロイヤル■

■乱れに襲撃を受けたはずの彼が、ローラの話相手だった■

■乱れの一派として、彼は島の敵に回った■


「それこそ当然……あの方は、神のような……存在……。ですので……わたくしが……仲間の失態を掃いますわ……」


■気力をみなぎらせ、ローラは瞳に熱意を浮かべる■

■それは、女傑という言葉が相応しい凛々しさを持ち、これから何をするのかを示していた■


「では……いざ儀攻戦へ……」


 着ていたローブを脱ぎ去り、その下の姿が露わとなった。

 身に纏うは、白を基調としたスポーツウェア。お腹の部分が露出していて、その引き締まった肉体美がありありと分かる。

 まさに女戦士・それは戦いの女神。

 発する威圧感と美は、数多の選手を従わせるかのような女王のごとく。

 事実、廊下を抜けた先で、彼女はそれを体現していた。


「……久しぶり……ですわね……。これも……」

 

■廊下を抜けた先には、多数の選手たちが在った■

■晴れ渡る青空の下に整列する彼らは、ローラに敬愛の視線を向けている■


「本当にお久しぶりです。ローラさん……。また貴女と戦える時がくるなんて……! 夢のようだッ」


「ふフ……。夢ではない……ですわよ。気を引き締めなさい……」


「はい! ……ゴールドさんの話も聞きました。残念です」


「ええ……ええ……! 殺したくなるような……酷い裏切りですわ……!!」


■全身から寒気のするような増悪を発し、それでもローラは、選手一人一人と言葉を交わしていく■

■彼らは、過去の【銀の闘技会】の準優勝チームであり、ローラはそこの主力選手の一人だった■

■集った栄光の強者たちは、ある儀攻戦に挑むために意思を固めていく■


●■▲


【儀式場を破壊する手段がある、それは分かってもらえたかな? 結構。では、どうやったら儀式場破壊を免れることが出来るのか? その条件を教えよう】


■ゴールドが、地区長や島の重要人物たちに伝えた情報■

■それを反芻しながら、彼女は戦場を駆けていた■


「は、はやッ」


「なァんだ……!? この女ァッ」


 殺風景な平原で行われている、儀攻戦による集団VS集団の衝突。

 青空の下で激突する両陣営は、共にそれなりの練度を見せつけ、実力が拮抗しているように思える。

 一方の陣営が押し込めば、もう一方の陣営がそれを返す刃で切り裂く。そんな戦況。

 そう、彼女を除けば。


「……少し……なまりました……わね……」


■彼女……ローラの持つ赤と青の二丁拳銃が、防衛する選手たちを蹴散らしていく■

■発射される弾丸は、【魔導力】を糧に生成される魔導弾■

■赤からは青い弾丸が・青からは赤い弾丸が■

■凄まじい勢いで連射され、式の柱までのルートをこじ開けていく■


「くそがァ! ぶっ殺す!!」


「バラせッ!! この銃女!!」


■凶器を持って彼女に迫りくる、二人の敵選手■

■両者ともに機敏な動きで、荒々しくはあるが速い■


「邪魔……ですわ……」


■だが、彼女はもっと速く・鋭い■

■2つの刃をしなやかな肢体の動きで回避し、彼らの間を通り抜ける■


「ぐッ!?」


「ががッ!?」


 ローラに攻撃を仕掛けた男二人が、叫び声を上げ、吹き飛んだ。

 彼女はその結果を見もせずに、持久力を保った走りでゴールへと向かう。

 撃破した2つの壁がなくなった分、この戦況はローラ達の有利へと傾く。

 周囲にもそれが伝播し、彼女に敬愛の視線を向けるは味方。畏怖の眼差しを向けるは敵。

 動きの一つ一つが・彼らを惹きつけるほどに美しい。


「……」


■彼女は、ゴールドに告げられた言葉を回想する■


【儀式場を破壊されない条件は——勝つことだ。こちらでセッティングしたチーム同士の試合で……乱れたちを倒してみせれば、その儀式場の破壊を中止すると約束しよう。信じてもらえないだろうが、ワシは一応中立な立場だ。……まあ、妙な真似をすれば即座に破壊されることは分かっているだろうから、どちらにせよこちらに従うしかない。ははは】


■ゴールドは、島の各地にある【重要】な儀式場を脅しの材料に使っている■

■彼は以前に島を巡ったことがあり、儀式場の場所……まだ発見されてないものも知っている可能性が高い■


「本当にふざけた……男……ッ。すべては……この【趣味事】のための……準備だったということですわね……」


■優雅に戦場を舞う、美しき銃使い■

■空中で連射された弾丸の雨が、怒りを乗せて敵選手たちを貫いていく■


「すごい……!! ブランクがあるはずなのにっ」


「相変わらず惚れ惚れするような動きだ、あの人は!」


 敵のブロッカーを排除し、ゴールへと進んでいくローラ。

 優雅さと気高さ・強さと美しさ、それらを兼ね備えた女王の進撃。

 そんな彼女の姿を見て、当然味方たちの士気も上がり、勢いよくアシストをしていく。

 そうなればもはや、乱れたちに止める術はない。


「ゴール……ですわね……。やはり……有象無象では……相手になりませんわ……」


■結果、大差をつけてローラたちのチームが勝利した■

■試合時間は一時間にも満たない■

■乱れたちとの戦い、その先鋒である魔弾の女王は、気高い眼差しを未来の強敵へと向ける■

■彼女の活躍は、決して乱れたちに負けない島の勢力を、しっかりと見せつける事となった■

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