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CRON:     City out ;loveyou-カルミア-Mountain laurel-Kalmia 解けない熱と愛しい貴方を。

――穏やかな時間はそんなに長く続かないモノなのかしら、どれだけ強く願っても。

 かたかた、かたかた、風によって窓の揺れる音と、刺すように明るい陽のひかりが、

眠りに入っていた顔を苦くするくらいに思いきり顔を照らして。


――眼を開けた、朝になったのか昼になったのか、そう考えるより先にぼんやりとした視界のまま、

起き上がる事をしないで、眼だけ動かしてみる。明るい――眩しいくらいに。

周りがこうならきっと、この屋敷に来たときは真っ暗だった部屋の大部分が、

今は見違えるほどに陽に照らされているのかもしれない。


動かしていた眼を元に戻して、横に寝ている彼の顔をジッと眺める。

昨日はとても身体に負担がかかっただろうしもう少し寝かせてあげたいなと思ってしまう。

わたしたちは別々の道を歩んでいながら同じように一種の呪いとも言える、記憶と力を持ってしまった。

表向きには彼の持つ能力は【内部把握】建物の中や性質を把握するというもので広まっているけれど、

本来の能力である【観測】というものは、彼が存在している限り、生物でもそうでないモノでも、事柄でも、世界でも、大抵のモノは彼が【望む場合に限り】把握できるという能力だと言われた気がする。

簡単に考えればすごく万能な能力なのかもしれないけれど、彼にかかる負荷も呪いも強く、

あまり酷使してほしくはなかったりするのがほんねで。

ふう、と少しだけため息をついて彼の寝顔をみる。

規則的な寝息とは異なって、表情は苦しそうにしていたり穏やかな感じを繰り返している。

怖い夢でもみているのかなと思って、ゆっくりと彼の硬めの髪を撫でて、

辛い事だったとしたら、せめて夢の中だけでも穏やかなものに変わればいいのにと。願う。


それにしても、彼が気を張っていない寝姿なんて久しぶりにみた気がする。

初めてクロン家、レオナルド家という檻の中から抜け出したいつかの日を思い返すようだった。


彼には、いつも心配と気を遣わせばかりで、そのお返しをわたしがちゃんと出来ているのか心配になる。

なによりも……「わたしはあの時より成長できているのかな――ルヴァイン。」

さらりと自分の口からこぼれた言葉に少しだけ驚いて、弱気になってはいけないと、

ひと眠りしてすっきりしようと思って、彼の頭から手を離す。

途端に、パチりと眼を開いた彼は、まだまだ眠い表情のまま「ん……?」と声を発した後、

わたしを見て自分の方にグッと私を引き寄せた。

「ルヴァイン……?」わたしがそう声をあげても、ルヴァインがわたしをほどくことはなくて、

「どうした……泣きそうな顔をしてたようだったが……大丈夫だからな、オレがそばにいるから、

だから、泣きたいならここでなくといい、笑いたいならここでわらうといい。

それが終わったらまた寝よう。」彼がそうと呟いて、撫でる力を強めるものだから。

少しだけいたくて、声を抑えながらも、しっかりと彼のシャツを濡らしてしまった。

「ルヴァイン――わたしね――っ」


やさしく抱きしめてくれた彼に共鳴するように、

自分の腕に力を込めて、わたしも彼を離さなかった。



――――「おはよう、ミーア。」そんな彼の言葉で眼を覚ましたわたしは、

未だに残る彼の熱で身体が熱いのをなんだか恥ずかしく思ってしまって。

そんな恥ずかしさを隠すように彼の動きを見ていたら、

てっきり調べていない一階と地下を探索するのかと思っていたけれど、

彼がちょいちょいと、指でゆっくり窓の外の下を見るようにジェスチャーしてきたので、

息をひそめて出来る限り慎重に窓の外の下を見てみた。


――――窓の外では緑の色の髪をした褐色肌の男が一人と、

建物側にスッと立っているサングラスとスーツ姿をした人の姿があって。

「スーツ姿はわからないが、あの緑髪の男は間違いなく――敵だろうな。

距離があるというのに刺々しい感じがこっちまで届いている。

探索をするにしろ、此処から立ち去るにしろ、鉢合わせになる可能性がある。

俺が隙を作ってミーアを逃がしたところで、

どうなるかはわからない。少しの間、用心しながら様子見になるが耐えてくれたらありがたい。」


こくこくと彼の言葉に頷いて、窓の向こうから目線を外すことなく、

彼の横にくっついて、考える。

もしあの二人のどちらかが能力を気配を探知するモノなら厄介だ。

ある程度の休息をとったとしても、今の彼を戦わせるなんてわたしにはできない。

それならと――ある種の決意を秘めて双方が動くのを見定める。



先に動いたのは――緑色の髪の男のほうだった。


緑髪の男の動きが速すぎて、

窓が朝と同じようにかたかたと鳴り響いたのを私はどうしても拭えなかった。


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