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魔女?いいえ錬金術師です  作者: 東風になりきれない春
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異世界でヤンデレに出会った

「ええい、うっとうしい!風よ!!嵐よ!!!」

エレオノーラが気合で放った超巨大暴風竜巻が、周囲の魔物を飲みこんで空のかなたへ吹っ飛ばした。


ここはエレオノーラ以外の人型の生物が住んでいないのではないかと思われるほど、前人未到の未開の地だった。

そこでは人ではなく、魔物たちの天国といっていい。

弱肉強食。

ヤられる前にヤれ。


今日もエレオノーラをごはんにしようと近づいてきた魔物たち相手に、攻撃魔法を放ったのであった。


あれからエレオノーラはすぐに荷物をまとめてあの森を離れ、転移につぐ転移を重ねて人のいない場所へたどり着いた。

エレオノーラの目的は次の居住地ではなく、そろそろ在庫の尽きてきた材料集めにあったので下手に人目に触れない場所の方が好都合だったのだ。


ちなみに狩ってはぎ取った材料は、パソコンのファイルのように圧縮して別空間に仕舞ってある。武器を入れているわけではないが、中身は竜の骨やら巨大魚の牙など物騒で高価なものであふれかえっていた。


エレオノーラは頭上を見上げて、ちょうど果物があるのを発見すると透視の魔法で分析した。この世界で一番多用している魔法なので、慣れたものである。

毒ではないなら食べる。毒なら材料にする。

夜は周囲に結界を張って眠りにつく。

とんでもないサバイバル生活だが、材料集めも終盤に差し掛かっていたので特に不自由は感じていなかった。




火の魔法で枯れ木の束に火をつけ、採った魚を焼きながらエレオノーラはまったりしていた。

人と触れ合いすぎて疲れていたエレオノーラには、今くらい孤独な方が楽だった。

とはいえ、文明人らしい生活をするには人が暮らす場所へ行って金を稼がねばならない。


「次はどこ行こうかなぁ・・・。寒い地方もいいよねぇ。この世界でもオーロラってあるのかな」


いや、それより風呂だ!とエレオノーラは思い直した。

この地ではせいぜい水浴びしかできないし、前にいた森でも川で汚れを落とすくらいしかできなかった。


「風呂・・・いや、温泉のあるところとかいいんじゃない?うん、そうしよう」


うきうきとしながら探索魔法で大地の地脈を探る。

山のあるエリアを中心に探索。水脈を見つけては無害なのか、そもそも温泉なのかを判別していく。

やがて休火山のふもとに広がる温泉街を発見した。


この未開の地から西へ数百キロは離れているが、自身で飛べる転移の範囲内である。

それ以上の情報は現地に飛ばないとわからないだろうが、おそらく観光客でにぎわっているに違いない。

何故なら街のあちこちから硫黄の気配がするし、人間の気配も多いのだ。

温泉か、それに付随するものを目当てに人の流動があるとみていい。


「お風呂・・・温泉・・・楽しみだなぁ」


うっとりしながら、エレオノーラは焼きあがった魚にかぶりついた。




偶然も必然のうちということだろうか。

なんの運命のいたずらか、温泉街で数日すごしたエレオノーラの前にはキールが立ちはだかっていた。


「え、えと。数か月・・・ぶり?」


動揺のあまりよくわからない挨拶をしてしまう。

キールはじっとエレオノーラを見つめたまま動かない。


彼はあきらかに憔悴していた。

目元にはくっきり隈が浮かびあがっているし、頬もこけている。

はちみつ色をしていた髪は若干くすんでいた。

それでも陰のある美形にしか見えないのはイケメン特典とかいうやつだろうか。


でも、らんらんと光る緑の目がコワイ。

じりじりとエレオノーラが数歩下がると、その分キールは前進した。


エレオノーラはさらに後退した。

キールは前進した。

エレオノーラはもっと後退した。

キールは前進した。


なにこれこわい。


ついに路地裏の壁にまで追い詰められたエレオノーラは、冷や汗を流しながらキールを見た。


「えれおのーら?」


かすれて拙い口調でキールが問いかけた。

反射的にうなずくと、力いっぱい抱きしめられた。


「ふぐぅ!?」


女らしからぬ声がもれたが、キールはおかまいなしに力を緩めることはない。


「えれおのーらえれおのーらえれおのーら」


うわああああああああああああ!

ヤンデレだぁあああああああああああああああ!


エレオノーラは前の世界のアニメやらで見たキャラクターの症状を思い浮かべた。

これは懐かれてるとか好かれてるとかいうレベルじゃない。

もっと恐ろしいヤンデレだ・・・。


急にがくりとキールが膝から崩れ落ちた。

抱きしめられたままのエレオノーラも引きずられて地面に座り込む。

魔法は反則級でも肉体的には平凡なままなのだ。

大の男を抱えられるわけがない。


いったい何が起こったのかと、そっとキールの顔を覗き込むと目をつぶっていた。

眠ったのか、気絶したのかわからないが、意識はないようだ。


しかしエレオノーラを抱きしめる力は一向に緩まる気配がない。

当然魔法を使えばこの戒めから逃れられるけれど、なんだかこの状況で蒸発するとさらに恐いことが起こりそうな予感がした。


ヤンデレ恐い。


とりあえずキールを逆に抱え直して、逗留地にしている宿の部屋へと転移で飛んだ。


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