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-3

 

 その日もロゼッタと雨竜は、禁じ手で一勝した。

 その後一目を忍び、ある場所へと向かって行った。

「ここって……」

 

 校門へ続く道の途中には、鬱蒼とした森が存在する。禁止エリアには指定されてはいないゾーンであるが、立ち入りは規制されている場所である。本来なら、正規ルートから森を抜け、校門から外へ出られるのだが、この森は巨大な面積を占めるため、一度迷えば出てくることはないと言われている。

「べつに校舎の外に出るわけじゃないし、構わないわよ」

 そこが禁止エリアよりも危険な場所だということも気にしていない様子で、ロゼッタは悠々と森へ入って行った。

「戻ったほうがいいんじゃないか」

「ここしかないもの、仕方ないじゃない」

「ま、そうだけどさ」

 雨竜も渋々跡に続いて行く。


「さ、始めましょう」

 森にはいって数分後、ロゼッタは森の中の少し開けた場所で立ち止まる。

「そうしよう、そしてさっさと帰ろう」

 雨竜は地面に腰を下ろし、大地からの魔力を引きだし始める。

「小文字之木々依怙地……」 

 雨竜の言葉が途切れる。

「なにか言った?」

「いや、何も言ってないわ」ロゼッタは首をちいさく振る。

 その時だった。

 グゥ、とう沼の中から噴き出たような気泡のような声。

「やばい」一瞬にして背筋が凍りつく。暗闇の木々の隙間から、白い何かがこちらを見据えていた。

 血のように赤い瞳、骨のような白く細い身体。生の匂いをまったく感じさせない。逆に死の予感すら感じさせる人ならざる者。

「グールだ」

「なんでこんな所にいるのよ」

「猫又!」

 雨竜は式神を出現させる。太めの三毛猫は、先ほどまで眠っていたらしく、大きな欠伸をした。

「烈火斬だ」

「うにゃー」

 猫又の爪に小さな火が灯り、まるで生き物のように、グールへと降り注がれる。

 グールは苦しそうに身体を揺らし、呻く。

「いいわよ、効いてるわ」

 崩れ落ちるグールの後ろから、数えきれない屍達が見えた。 

「数多くない?」

「逃げよう!」

 二人は逃げだそうとした。まっすぐ走れば出口だ。しかし、前の方からもグールの白い影が見え、斜めに向かったのがまずかったのか、二人は見事に森で迷ってしまった。

「もう、なんでこうなるのよ」

 苛立った様子でロゼッタは地面をけった。

「だから言ったじゃないか」

「何? 私が悪いって言うの! あんただってねぇ」

 掴みかかられようとした瞬間、目の前の草むらが揺れた。

 周りを見渡すと、何十という数のグールたちが、うめき声をあげながらロゼッタと雨竜を囲んでいた。

「囲まれた……」

「神様、仏様……」

 その時だった。

「まったく、何をしているんですか」

 アンデルセン講師が颯爽と雨竜たちの目の前に立つ。

「Hnouoi aohto」

 グールの身体から炎が立ち上がり、勢いよく燃え上がる。

 その火は他のグールへとまるで生き物のように燃え移る。

「先生!」

「す、すごい」

 数十秒後、グールで埋まっていたその場所は、焼け跡が残るのみとなった。

「全滅ね」

 ロゼッタは呟く。アンデルセンはその言葉に首を振り、

「彼らはすぐに息を吹き返しますよ、今の内に逃げましょう」


 森の入り口、アンデルセンは二人を前に説教を延々と続けていた。

「まったく、誰が言い出したんですか」

「僕です」

「なっ、なに恰好つけているの!」

「僕で良かったですね」

 アンデルセンは、一変してにこやかな表情になった。

「星ひとつ減点で許してあげましょう」

「いいんですか」

「私も、雨竜君が退学になるのは辛いですからね」

 うんうん、と頷くアンデルセンを訝しげな表情で眺めながらロゼッタは、

「バカ言わないで、そんな甘い制度、あるわけないじゃない」

 それをきいて、アンデルセンは、温和な表情を崩さず、

「それと、ロゼッタミルドレッドさん」

「貴方が呪術にかかってることは、上はみんな知っていますよ」

 え、と二人は固まった。

「どういうことですか?」

「貴方の腕を見れば、分かりますよ。私たちはそれを黙認しているのです」

「悪い言い方をすれば、貴方を泳がせるのが、学長の狙いです」

「本当、胸糞悪くなるわね」

 ロゼッタは舌打ちをし、アンデルセンを睨みつける。赤い瞳が静かな怒りに燃えていた。

「行くわよ、雨竜!」

 ロゼッタは踵を返す。

「ありがとう、先生」雨竜はアンデルセンに頭を下げる。

「生徒を守るのが、講師の務めですからね、それに、さっき言ったことは本当ですよ、雨竜君、君は立派な才能をもっている。あなたはもっと、強くなれるはずです」

 アンデルセンは、優しく微笑んだ。

「はい」

 雨竜はそういうと、もう一度頭を下げた。

「こら! そんな奴と喋らない!」

 向こうからロゼッタの声が聞こえる。

「では」

「ええ」

 アンデルセンは二人の後ろ姿を見送った。その表情は嬉しそうに微笑んだままだった。



    ウイッチズ×カマード 三日目終了―――

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