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手を取ろうとして、雨竜はその手を振り払った。
彼の瞳はロゼッタの両手に絡みつく漆黒の蛇を凝視する。
「やっぱり、これが見えるのね」満足そうにロゼッタは尻もちをついたままの雨竜を見下ろした。
「魔法封じ」ぽそり、と雨竜は声を洩らす。その声を聞き洩らさずに、口の端を上げる。
「その通り」
「でもこれは……」
「白魔法を封じるには、対する黒魔法しかないわ。つまり、この学内に黒魔術師が存在して、私に術をかけたってワケ」
冗談だと思った。何故なら黒魔術師、道師はとうのむかしに滅んでしまっていて、彼にとってはおとぎ話の世界での存在であったからだ。
「冗談だと思ったでしょ、あたしだってそう信じたいわよ」嘆息し、ロゼッタは腕を組んだ。
「道師に相談してみたら」
「嫌よ! そんなことが知れたら『ウイッチズ×カマード』が中止するじゃない!」
ヒステリックに、声を荒げるロゼッタ。どうやら黒魔法をまんまとかけられたことに対する怒りと『ウオッチズ×カマード』が中止するかもしれないという危惧。かつて世界を救った栄光の魔道師、ガルドノフ・ミルドレッドの血を引く彼女にとってそれは、屈辱でしかないだろう。
「これは挑戦、よ」ロゼッタは不敵に笑みを溢す。
「かつて黒魔法をこの世から絶滅させた我がミルドレッド一族へのね」
ふん、と鼻を鳴らし挑発的な瞳を輝かせる。
「そこで、雨竜。あんたには『ウイッチズ×カマード』の期間中ずっと私の傍にいてもらうからね」
「は」
「だってそうでしょ、対黒魔法は時代遅れで、今ではあんたの住む国にしか存在しないんだもの。つまり、この学内に魔法封じを解くことができるのはあんただけなの」
「調べたんですか」
「あたりまえじゃない」当然のようにロゼッタはそう言うと、指をパチンと鳴らす。すると、雨竜の目の前に一枚の紙がヒラヒラと舞い降りてきた。それは、契約書であった。
「僕なんかでいいんですか」
ぼんやりとした表情でロゼッタを見上げる。いまだに腰を下ろした状態で。
「あんたみたいな雑種と組んであげるんだから、感謝しなさい」
ロゼッタは勝ち誇った表情をしてみせる。
「ありがとう、けれど」
少し間を開けてから、雨竜はゆっくりと口を開いた。
「もう、僕の相手は決まっているんです」




