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【番外編】好きのその先。その2

「深咲さーん、これは!?」

「新、そんな大きいベッド部屋に入らないわよ。」


某大型家具店にてはしゃぐ新をやや後ろから目を細めつつながめる。

なんだろうか、この、親戚の子をまぶしくみつめるおばちゃんみたいな心境は。

あんなにはしゃいじゃってまあまあ、とか心の中で呟いたりして。

馬鹿だなと自己ツッコミをしておきながらも、

それでもバカップルよろしく一緒になってはしゃぐよりは愚かな行為ではないと思う。

まあ、性格に起因しているだろうけどもね。

普通に無理だものね。バカップルの真似事とかね。


「うーん、確かにあまり大きいと離れて寝なくちゃいけないしなあ……

抱っこして眠るんだしこんなに大きくなくてもいいか。」


頭の中で色々と阿呆な事を考えていたけれど

唐突に呟いた彼の言葉に私は固まった。


こいつ、今なんつった?


「深咲さん、僕としてはセミダブルがいいと思うんだけど。

でもシングルでもけっこうマットレス奮発すればなんとかなりそうだよねえ。

なるべく幅は余裕ないほうがいいんだけどなー……。」


ぶつぶつと真剣な表情で悩む新の横顔をみつめながら

私は隣に立つ勇気が本当になかった。

そもそも体が次の日あちこち痛くなるから

広いベッド買おうって言ってるのにまたシングル買ってどうする。

っていうツッコミすらもちろんできません。

さっきから恥ずかしい言葉連発しすぎてて泣きそうです。


まあ、言ってしまえばふたりでベッド見に来てる時点で

なんかもう色々と羞恥心いっぱいになる買い物ではあるんですけどね?

だからってそうあからさまな空気を醸すのはいかがなものかと思うわけよ。


そんな心理状態で

三メートルほど距離を置いた場所から引き攣った表情で彼を見ていたのだが

それになにを思ったのか、

新はむ、と顔を顰めてつかつかとこちらに歩み寄ってきた。

私はその迫力に一歩後退したくなったのだけれどその前に新が私の腕を掴む。


「深咲さん!」

「は、はい!?」


力強く名前を呼ばれてしまい、私は思わず同じようなトーンで返事をしてしまう。

なんなのだ、この鬼気迫る新の表情は。


「ふたりで眠るベッドなんだから、一緒に見なくちゃ意味がないでしょ。」

「っ!?な、なに言ってるのよ!」


か、と頬が赤くなるのを感じたけれどそれよりもこの状況をどうにかしてほしい。

両の手の平で私は頬を包まれたまま、彼に睨み付けられている。

なんだって人前でこんな至近距離になっているのだ。

居並ぶベッドの数々。その横に密着した男女が一組。

なんという露骨な構図なのだろうか。


恥ずかしくてどうにかなりそうです。


「あ、新、わかったからその、手を。」

「本当?ちゃんと真剣に選ぶ?」


私はぶんぶんと勢い良く首を縦に振る。

すると満足したのか、微笑んで新が私から少し距離を取った。

ほ、と安堵の息を吐くと正面の彼が苦笑する。


「そんなに困らなくてもいいでしょ。

深咲さんがちょっと冷たいから悲しかっただけなのに。」

「それは、」

「うん、今の態度でよくわかった。物凄く恥ずかしいんだね、今。」


図星を差され最早涙目で呻く私の頭に、くつくつと笑いながら新が右手をのせる。


「可愛いなあ、もう。」

「う、うるさいわね!」

「はいはい、一緒にあっち行こうね。」


隣に並び私の手を取って新が売り場まで先導する。

なんだか引率の先生みたいにも思えて果たしてどちらが年上なのか、と考えてしまった。


彼は私なんかよりずっと大人だ、と最近よく感じるようになった。

毎日のように向けてくれる笑顔は、いつだって私を包み込む。

欲望に忠実な部分は幼いなあ、と思わなくはないけれど

それだって不器用で隠したがる私に合わせてくれているのかもしれないし。

……いや、それはないか?どうなんだろう。


新の愛情表現は、彼にとって自然なのだろうか。

時々それがわからなくなって不安になる。

求められて応えるばかりの私にいつか呆れてしまうんじゃないか。

そうでなくとも、私の存在は彼を縛ってばかりだから。

いいのかな、隣にいて。


『……って最近こういう事考えすぎ。』


いかんいかん、と勢い良く首を振ると隣に立つ新が深咲さん?と首を傾げてくる。


「これとか、僕は良いと思ったんだけど。嫌だった?」

「え?」


新の言葉に、彼が示す商品を視界に留める。

割りとシンプルな作りで、悪くはない。


「へー、上の部分が棚みたいになってるのね。」

「……深咲さん、またひとりで旅行してたね?」


今初めてまじまじと見ました、といわんばかりの私の態度に

新が眉を顰めてご立腹だ。

腰に手を当てて、ん?と私の顔を覗き込んでくる。

ますますもってどっちが年上なのかわからなくて泣けてくる。やめてくれ。


ごほん、と咳払いをしつつ私は改めてベッドを検分する。


ヘッドの部分が小物なんかを収納できる造りになっていて

ナイトテーブルがいらないから部屋もすっきりするかもしれない。

枠組みも何かごてごてした装飾が施されているわけでもなく実にシンプルだ。


色はホワイトとブラックどちらかが選べるみたいだけれど、どっちもいいなあ。

あ、でもベッド真っ黒だと部屋が若干暗く感じるかしら。

いや、男の子の部屋だし白だと微妙か?

新の部屋って陽が当たりにくいわけでもないし気にしなくても大丈夫かな。


「深咲さん、気に入ってくれた?」

「うーん、新はどっちの色がいいと思うの?」

「黒にすると部屋の印象暗くなっちゃうかなあ?白にしようか。

あ、でもシミとかできるとかなり目立っちゃうだろうな……」


長く使うなら……とぶつぶつ呟き始めた新を見て私は思わず噴出す。

私と同じような事言ってるのに驚いたけど、後半が!

もう目線が主婦と一緒よね。掃除するの新だしなー。


まあ、気をつけていても汚れってつくものだし、

確かに白だとちょっと目立つかもしれないわね。


「黒にしましょうか?どっちも素敵だしせっかくなら

長く使える可能性が高い方を選ぶのが無難だわ。」

「そうだね……うん、そうしよう。あ、でも寝て確認しなくて平気?」

「は?」


間抜けな声をあげて正面から横に顔を向ければ

新がにこにこ笑ってとんでもない事を口にした。


「寝心地とか確かめておいたほうがいいんじゃない?

さすがにここで始めるわけにはいかないから純粋に横たわるしか出来ないけど。」

「…………店員つかまえてくるわ。」


もうさすがに処理する気にもなれなかった私は

無表情のままつかつかと売り場付近に立っている店員の所まで早足気味に歩いた。

背後で堪えるような忍び笑いが漏れていたので足音が乱暴になる。

真っ赤な顔をして怒りを露にしていた私を見て

一体なんのクレームだろうと恐らく身構えていた男性店員は、

お買い上げの吉報を耳にして拍子抜けした顔をしていた。

はあ、なんて間抜けな声をあげて数秒固まったあと、

只今在庫を確認して参ります!と慌しく店内奥へと走って行った。


……迷惑な客で申し訳ない。





「良かったねー、すぐ届けてもらえて。」

「そうねえ。明後日には来るって言っていたものね。」


電車に揺られての帰り道、私はあくびを噛み殺しながら

新と並んで座っていたんだけれど、急に眠気が襲ってきた。


彼のぬくもりを感じて揺れる車内は、なんだかひどく心地が良い。

うつらうつら、と船を漕ぎ出した私をみて、新が吐息だけで笑う。


「深咲さん、眠っていいよ。昨日無理させちゃったものね、疲れてるでしょ。」

「んー……?」


普段だったらこんな事言われれば、

色々とつっこむべき言葉を紡いでいたのだろうと思うのだけれど、

そのときはあまりの眠気に何を言うことも出来ずに

返事なのかなんなのか良くわからない声しかあげることが出来なかった。

新がそんな私に何を感じたのかはわからないけれど、

先程と同じようなくぐもった笑い声がすぐ隣から聞こえてきた。


「僕の肩に寄りかかって寝ていいよ、おやすみ。」

「んー……。」


言って、新が私の頭をゆるやかに撫でる。

公衆道徳がどうのとか、人前でバカップルにうつるのが云々とか、

寝惚けた頭ではそんなの考える事は出来なかった。


優しい手つきとこれまた優しい彼の声が響いて、私はまともな返事も出来ずに

それでも暫くは起こされても起きれなかったら悪いし、とか

ずっと寄りかかったら新も疲れるだろうし、とか

働かない頭で必死に抵抗していたのだけれど、

結局は気持ち良さに負けて、私はとろん、とした目をゆるゆると閉じていった。


「かぁわいい。」


蕩けそうな声で新が何か言っているのが耳元で聞こえたけれど、

それがひどく遠くから響いてるように思えて

私は言葉の意味を認識するまでには至らなかった。






ふわふわ。

心地良い浮遊感を覚えながら、私は身動ぎをした。

寒気と温かいのを交互に感じて、思わず目の前のそれにしがみつく。

あったかい、きもちいい。

これを与えてくれるたったひとりが、ずっと私の隣に居てくれればいいのに。

それ以上は望まないけれど、それがいちばんの贅沢だということもわかっていた。


「新……。」

「深咲さん?」


深咲さん。ああ、呼ぶ声もやっぱり優しい。

いつだってあなたは極上の安心を私にくれる。

嬉しくていつもふとした瞬間に泣きそうになってしまうのを彼は知っているだろうか。

出来れば一生知られたくはないな。

これ以上、彼に重いと思われるのは嫌だ。

私はいつも新にそれはちょっと重い、とか一線を引くみたいに言うけれど

本当は私のがずっと重たい。

依存しているのも、彼が居ないと途端に駄目になるのも、私だから。


でもそれがわかってしまったら、優しい彼はますます私の傍を離れられない。

だからね、ずっと内緒にしておくの。

こんな自分は、気付かれないようにそうっとそうっと、

鍵をかけて内側にきちんと閉じ込めてしまうから。


予防線を張るずるい私に、笑って私を許すあなたに、

私が返してあげられるものはなにかしら。

それは、きっと……


そこまで考えて、温もりが離れていくのを感じた。

唐突に覚えた寒さに身震いしながら、何かを求めて手は虚空をさまよう。

すると、何かが私の手を掴んだ。

また涙が出てきそうになって、でもいつものように堪える事はしなかった。


「…で。」


ぽつり、呟いた言葉。夢の中だから、口に出しても大丈夫。

零れる涙も、起きればきっと渇いているから。


「……どうして、あなたはずっとそうなのかな。

どうやったら、あなたの不安を取り除けるんだろうね。」


きゅ、と握られた手が温かい。

これが夢じゃなければもっと幸せだけど

起きたらまたいつもみたいに笑ってくれるとわかっているから、

私は安心して手の力を抜いた。


「愛してるよ、深咲さん。頼まれたって僕は離れてなんかあげないのに。」


呟いた言葉は、虚しく空間に響くだけで眠る私の耳には届かない。

頬と唇に何かが触れた感触がしたけれど、特に不快だとは思わなかった。


「いってきます。」


その言葉のすぐあとに閉じられた扉の音が寂しくて、私はまた繰り返した。


「いかないで……。」


先程紡いだ言葉をもしもあなたが聞いていたなら、

どんな感情を私に抱くのだろう。


そんな事、現実で訊けるはずもなく答えは出ないままだろうけれど。


どうして。

両想いだとわかっていて、過分なまでに気持ちを貰っていて。


いまだ満たされない心は、どうして。


これ以上、私は何が欲しいというのだろう。







――――――――――――――――





「んー……?」


何時だろう、今。

なんかすっごくたっぷり眠ったような気がする。

ぼんやりとまだ動かない頭をなんとか奮い起こして、私はゆっくりと瞼を開ける。

何かが身体にのっかってて動けない。掴んでみるとそれは人の腕だった。

少し驚いて声をあげそうになったけれど、なんとか堪える。

隣で眠っている新が、私の身体にぴったりとくっついていた。

眠る時はこういう状態も多いけれど、珍しいな朝もこんな風になってるの。


『確か今日は夜勤だったのよね。』


ということは、きっとまだ1、2時間しか眠れていないはず。

だから私の体に巻きついているのか、と合点がいった。


「……8時か。」


なんとかサイドボードの携帯電話を確認して私は呟く。

起こさないように細心の注意を払いながら、そうっと腕をどかして

私はベッドから抜け出した。


着替えを持ちバスタオルも一緒に抱えて部屋を出る。

しっかしおかしいわねえ。昨日の記憶がすごく曖昧なのはなんでかしら。


ベッドを決めて、電車で帰って……からの記憶がない。

確か、寝ちゃったのよね、車内で。

それからどうやってここまで帰って来たのかがわからない。


「……新に訊けばわかるかしら。」

「なにを?」


後ろから発せられた声に驚いて私は短い叫び声をあげた。

鏡に映った新が立ってこちらをみている。


ってなんで普通に入ってきてそしてそこに留まってんのよ!


「ちょっと新、出てってよ。私シャワー浴びるんだから。」

「僕も浴びる。」

「まだ寝てなさいよ、あんまり眠ってないでしょ?

確か今日も夕方から仕事だって……」

「でも深咲さんの朝御飯作らなきゃ。休む時間はまだあるし。」

「そんなのいいわよ!寝てなさい、体壊すじゃないの!」

「じゃあ、一緒に寝よう。」

「私はもう起きるの。」

「やだ。だったら僕も起きる。」


なんだ、この駄々っ子炸裂な雰囲気は。

……昨日、別になにもなかったわよね?記憶がないだけに自信が持てない。


とりあえず目の前の男をどうにかしなければ。

ひとつため息を吐いた私は、外していたシャツのボタンを再びかけ直した。


「新……シャワーが浴びたいんなら先に浴びていいから。

きちんと睡眠を摂りなさい。本当に体に悪いわ。」

「……僕が眠ったら深咲さんは嬉しいの?」


新の質問に、私ははあ?と首を傾げる。

何を言いたいんだ、こいつは。


「……嬉しいというか、新が倒れちゃうのが心配なのよ。

だから休息はきちんと摂って欲しいわ。」

「そっか。」


頷く私に、新は微笑むとわかった、と呟いて何故か私の服に手をかけた。

先程留め直したボタンを、第一、第二、第三、と順番に外していく。


「……って新君?」

「うん?」

「うん?じゃなくて。なにしてるのよ。」

「だから、きちんとお休みをしようと思って。」

「じゃあなんで私の服を脱がすの。」

「深咲さんと一緒にシャワー浴びて深咲さん抱っこして眠るのが

僕にとっていちばんの癒しで休息だから。」

「なにわけのわからないこと言ってるのよ!?

ってちょっと会話しながらどんどん脱がすな!」


今更だけどこんな明るい所で見られるの普通に恥ずかしい!

ただでさえ年齢差あるっていうのにまじまじと裸を見られるのは嫌だ!!


「深咲さん真っ赤だよ。」

「な、ちょ、ほんとやめてよ!」

「可愛いなあ。そんなに激しくするつもりなくても我慢出来なくなりそう。」

「ななななな何を言ってるのよ!!」

「お互いに気持ちを確認してからの深咲さんて初々しくて可愛いよねー。

ちょっとしたことにもすぐ赤くなるからその反応たまんない。」

「たまんないとか言うな、どこぞのおっさんか、あんたは!」


って言ってたらもう下着だけになってる!なんでこんな手際が良いんだこの男はっ!


「こんな明るい所で裸みるのそういえば初めてかもね。」

「だから嫌だって言ってるんじゃないの!」

「……ねえ、深咲さん。」

「な、なによ!?」


半ばパニック状態に陥りながら叫ぶと、新がふ、と微笑む。

寂しそうなその顔に驚いて私は一瞬固まってしまった。


「昨夜の事、やっぱり何も憶えてないんだね。」

「え?あ、そういえば、昨日って私どうやって帰って来たの?」

「んー、電車で深咲さん眠っちゃったんだけど。

あまりにも気持ち良さそうに寝てるから起こすの忍びなくて、

駅からおぶってここまで帰ってきたんだよ。」

「えええええ!!?ど、どうして起こしてくれないのよ!」


驚いて叫ぶ私を他所に、新はひょうひょうと答える。


「何回か控えめには起こしたんだけどね。」

「にしたって……駅から10分は歩くのよ!?重いじゃないの!」

「別にそんなことなかったけど。温かかったし。」

「それに目立ってしょうがいないじゃないの!

し、しばらく表歩けないっ……」


真っ赤になって頭を抱える私に、大袈裟だなあ、なんて新は呑気に言う。

別に大袈裟でもなんでもないと思うんだけど。

だって電車から大人一人担ぎながら誰か出てきたら……

私だったら見る。確認の為に二度見する。


近所の人に見られたかなあ。うわあー、恥ずかしい……!


「過ぎたことをあれこれ気にしたって仕方ないでしょ。」

「そうだけど……っていつの間に!?」


気付いたら目の前の新が一糸纏わぬ姿になっていた。

あまりの早業にすっとんきょうな声を上げてしまう。


……でも相変わらず綺麗な肌だなあ。若さってやっぱり眩しい。


「深咲さん、そんなに見られると照れるんだけど。」

「全っ然表情に説得力がないわよ。」

「僕の身体、見惚れる程綺麗?」

「そういう質問をするな、馬鹿!」

「まあ深咲さんの身体とは比べ物にならないけどね。」

「!!」


言って、新が私の背中に手を回す。ついにブラジャーが脱がされてしまった。

あまりの羞恥に両手を前で交差させるけど、

なんかもうこの行為自体も恥ずかしい。何を恥ずかしがってるんだ、私は。


「深咲さんの肌、白くて綺麗。」

「あ、新。」

「声震えてるよ。そんなに恥ずかしい?……ああ、鎖骨まで真っ赤だね。」

「わ、わかってるんなら、も、もう……」


やめて、と言おうとしたところで、新の手がショーツにかかった。

私がびくり、と身体を強張らせる。


「ここまできてやめる男が居るとしたら、聖人か同性愛者くらいだよ。」

「何言って……、」

「そんなに震えて真っ赤になって、瞳まで潤ませて。

どれだけ男の劣情を煽ってるかなんて、あなたはわかってないんでしょう?」

「そんなの、反応するのなんて、新だけでしょ……!」


私の言葉に、新がぴくり、と反応する。

止まった手に私も身体を揺らしたけれど、安心なんて出来なかった。

その双眸が、私を鋭く捕らえていたから。


「……冴島は違うとでも?」

「あ、新?」

「それとも他の付き合った男たちの話?皆そんなに淡白だったの?」

「そ、そういうことを言っているわけじゃなくて!

新は私をかいかぶりすぎだっていう意味よ!」

「まだそんなこと言うの?……深咲さん、言っておくけど。

あなたの身体は男の欲望を十分煽る魅力があるよ。」

「!!」

「もう、他の男になんて一切見せてやらないけどね。」


言って、最後の一枚に手をかけた新は、そのまま私に獣のようなキスをした。


「愛してる。この先一生、僕以外があなたに触れるなんて許さないから。」


くらくらする彼の言葉に酔いながら、

新がふとしたときに見せる苦しそうな表情の意味を

いくら考えても今の状態では到底答えなんて出せなかった。




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