火炎の魔人
少し前、セレナの村では不穏な空気を感じ、セレナ
の父・母を含め村人たちは上空を眺めた。
山の方向、遠方に数多くの竜らしき者が村に向かって
くるのが見えた。
近づくにつれ、それが竜であり、赤色である事から
赤竜と呼ばれる竜である事が分かった。
そして、その上に人らしきものが乗っている。
赤髪で頭の両脇に角が確認された。
「北の魔人。火の魔人だ!」
セレナの父は元冒険者たちや、村の若者達に指示して
戦いの準備を始めた。
村の唯一の教会に年寄り、女、子供たちをかくまい。
その入り口付近にはセレナの父親をはじめとして
剣で戦える男達を配置した。
その前方には騎馬隊を配置。
騎馬隊の前方に扇状に弓を持った部隊を配置。
槍を持った部隊が弓の部隊の間に交互に配置した。
そして、その前に大盾部隊を配置する。
それ以外の者たちは、家々の路地に隠れ、魔人達が
通り抜けた後ろから襲い掛かるとした。
そして赤竜に乗った魔人達が村の上空に到達した。
北の魔人は、火を使う魔人である。その攻撃に
備えて、防衛団の周りには水を入れた樽が多く置かれ
ている。
赤竜の先頭にいる魔人が今回の指揮官は、火炎の魔人と
呼ばれる魔人であったが、闘いを好み皆殺しをいとわない
冷酷さから、業火の魔人のお気に入りの一人であった。
火炎の魔人は部下の魔人達に指示した、火は使うな、
村を焼くのは最後だ、武器で殺して楽しんでいこう。
但し魔王様の命令でヒーラーだけは殺すな連れ帰る。
そして、全員降下して暴れろ、赤竜は上空で待機させろ、
「かかれー!」
と叫んで戦いが始まった。
弓部隊が降下してくる赤竜や魔人達に向けて矢を放つ。
3匹の赤竜が羽を射抜かれ地上に降り立ち地面に伏せる。
魔人達が飛び降り向かってくる。
魔人達は、赤髪で頭の両側に角が生えている。皆2m超の
巨体である。
弓矢部隊が矢を放つ。魔人達は大盾で防ぎつつ剣で矢を切り
落としながら向かって来る。魔人1体の額に矢が突き
刺さり倒れた。
魔人達が大盾の側にやってきたので、弓部隊を後方に下げ、
槍部隊が盾の横から槍を突き刺す。魔人の2体に槍が突き
刺さって倒れる。
魔人達は、大盾を構えた部隊兵を掴みだし切り捨てていく。
魔人の後方から男達が強襲したが、多少なりとも傷を与え
たが次々に切り捨てられた。
槍部隊が魔人に突っ込んで行くが、魔人達が槍を掴んで
槍部隊兵を引き寄せ切り捨てる。
騎馬隊数名が駆け寄り魔人に切りつける。魔人の1体を
倒すが、火炎の魔人が側による。火炎の魔人に騎馬隊員
が切りつけるが、どれを腕で受け止める。切れない。
騎馬をこぶしで倒す。次の騎馬もこぶしで倒す。そして
全ての騎馬をこぶしで倒した。騎馬に乗っていた騎馬兵
達は剣で火炎の魔人に切りかかれが、全員切り倒された。
弓部隊は、剣に持ち替えて魔人達に襲い掛かるが、逆に
切り倒される。
残すは、協会の前にいるセレナの父親と剣を扱う者たち
である。魔人達が向かって来る。20名位の剣部隊が
迎え撃つ。
但し、力の差は歴然で一人また一人と殺されていく。
それでも、魔人の1人は複数の人間で一斉に切り
掛かり倒した。
セレナの父親は魔人3人を切り倒したが、後ろから
回り込んだ魔人に背中を切られる。それでも振り
向きざまにその魔人1人を切り裂き倒れた。
それを見ていたセレナの母親が、近くに魔人が
いないのを確認して教会から飛び出し、倒れた
亭主に近づきヒールをかける。
その間に、他の剣士たち全員を倒した魔人達が
母親の周りを取り囲み1人の魔人が剣を振り
上げた。
火炎の魔人が制した。
「殺すな!」
火炎の魔人が、セレナの母親に近づいて行った。
「お前はヒーラーだな、俺たちに付いてくれば
お前は助けてやる」
セレナの母親は、
「この人と、協会の中の人を殺さないでください。
助けてくれるならついていっても良いです。もし
助けてくれないなら、私も殺してください」
と言った。
火炎の魔人は皆殺しこそ喜びとしている魔人では
あったが、「ヒーラーは殺すな」の魔王の命令が
あったので、「仕方がない」と認めた。
火炎の一番の部下にセレナの母親を預け、二番目の
部下に命じた。
「教会以外の建物は全ても燃やせ。それと門も燃や
せ。そうせれば、我々が手を出さなくても魔物が
やってきて全員助からない」
一番の部下が火炎の魔人に言った。
「ムゾン様、次は東の町が近いですが行きますか?」
火炎の魔人が言った
「魔王様から北から攻めろとの連絡が入ったので
北を目指す。途中通過する村を全て滅ぼしながら
行こう」
続けて火炎の魔人が言う
「魔王からの連絡によると、東西南の魔王が味方に
なったので、東西南はそれらの魔王に任せるとの。
自分で破壊つくせないので残念だが仕方がない」
生き残った魔人達は、セレナの母親も連れて、北の
方角に飛び去って行った。
セレナと遊星は、
村から竜が飛び去ったのを見て、赤竜ニナにセレナが
乗って、遊星は自力で空を飛んで村に向かった。
村に着くと、木造だったこともあり、教会以外の家は
燃えつくしていた。
教会に向かって歩いていくと、倒れている父親を発見
した。セレナが父さんと言って駆け寄って確認した。
「生きているか?」
遊星が聞くと
「生きているけど危ない状態」
と言って、ヒールを掛けるが、
「私のヒールじゃダメ」
遊星も近づいてヒールを掛けるが
「俺のヒールも効かない」
「公爵領の聖女様なら何とかできるかもしれない」
とセレナが言って、遊星が手伝って赤竜に父親を
乗せた。
その時教会から女性や子供達、遅れて年寄り達が
出てきた。
「ここの教会に100人位の女、子供、年寄りが
いるけど、その他はみんな死んじゃった」
とセレナの友人が言った
「もっと、年寄りはいたと思うが」
と遊星が言うと。
「死を覚悟して家に残っていた年寄りもいたと思う」
とセレナの友人が言った。
「お母さんは」
とセレナが聞くと、
「皆の命を守るために、ヒーラーとして魔人について
行くと言って、連れていかれてしまった」
と言った。
「とりあえずあなたも母も生きていてよかった。
でも男友達は皆死んでしまったのね」
とセレナは悲しそうに言ったが、
父親の命がかかっているので気を取り直し
「私は、父親を助ける為に直ぐ町に向かう。町に
着いたら、皆を救出に来てもらうから教会の中で
待っていて」
と言って赤竜ニナの背に父親を乗せてセレナが飛び
立った。
遊星は矢に羽を射抜かれて残っていた3匹の赤竜の矢を
抜いた後、ヒールを掛けて3匹の額に手を置いて仲間に
したのち。
3匹の赤竜の内の1匹に乗り、2匹を引き連れて
セレナを追いかけた。
東の子爵領の上空に差し掛かるとセレナの姉と親衛隊が
出てきて弓を射ろうとしていた。
赤竜の上に立ってセレナが手を振るとセレナの姉のエレナが
気づいて皆を制したので、姉の近くに降り立った。遊星も
その近くに降り立った。
エレナにセレナが近づいて行き
「父親が死にそうなの助けて」
と言った。
エレナは赤竜の上に乗っている父親を見ると、自分の馬に
跨り協会の病院に行き、直ぐに聖女を連れて来た。
聖女は父親にヒールをかけたが、
「少しは、延命したとは思いますが私の力では不足です。
王国の聖女様に見て貰って下さい」
と言ってきた。
「王都に連れていくにもこの状態では、やはり赤竜に乗せて
運ぶしかないので、セレナに頼むしかないかもしれない。
私も行きたいが3人乗れるのかしら」
とエレナが言うので、
「お姉さん、この赤竜ですが覚えていますか、名前はニナです」
とセレナが言うと。
「エッ、エレナ?」
と言って暫く考えていたので、
「来てください」
と遊星が、赤竜ニナの側に来させ、右手で赤竜ニナの額に当て、
左手をエレナの額に当てる。
思念が流れ込み、エレナが昔助けて暫く育てた竜である事が
分かった。エレナはセレナがしたのと同じように、赤竜の額
に自分の額を当て、首に両手を廻した。
「お姉さん、ニナに乗ってお父さんを王都の病院に連れて行って
下さい」
とセレナがエレナに言った。
エレナは部下のカペラに、
「私は、父親を助ける為に王都の聖女テラ様のもとに行きます。
子爵様に、セレナと」
「遊星です」
遊星は、念波で伝えた。
「遊星さんとセレナは子爵様に状況を説明してください。
後はカペラに任せますので、カペラよろしく」
と言って、エレナは王都に向かて赤竜の背に乗って飛び去った。
カペラと言われた女性は、セレナと遊星を連れて子爵邸の中に
入って行った。
カペラが子爵の部屋に先に入って話した後、カペラが部屋から
出てきて言った。
「どうぞ入ってください」
子爵のデスク前に打ち合わせ用のテーブルと椅子があり、
子爵に勧められるまま、遊星とセレナは椅子に座った。
子爵も椅子に座ったがカペラが立っていたので、子爵
は自分の横に座らせた。
遊星が状況を説明した。
「北の魔人が20匹位の赤竜に乗ってセレナの村に攻めてきた」
「セレナの父親も含めて村の男たちが戦ったが、瀕死なセレナ
の父親以外は全員殺されてしまった」
「教会に匿われていた女、子供、年寄りについては、ヒーラー
である母親が魔人についていく事を了承する事で助かり、
今も協会に隠れている」
「エレナは瀕死の父親助ける為に赤竜に乗せて聖女エレナ
がいる王都に向かった」
「エレナが乗っている赤竜はエレナとセレナが昔助けた子竜で
特にエレナを慕っているので、エレナの竜とする予定」
「遊星が乗ってきた赤竜3匹は遊星が思念で仲間にしたので、
遊星、セレナ、カペラの竜にする予定」
「それよりも、教会に残された女・子供・年寄り達が残って
いるので救って欲しいと話した」
この子爵は遊星の歓迎会でも話題に出ていたが、有能で優しい人間
と聞いていた。
子爵はカペラに指示して伝えた。
「村に向かって女・子供・年寄りを迎えに行くように。全員載せら
れる馬車を手配するように。馬車の護衛部隊と、死体の処理部隊
も派遣する様に手配してください」
疫病の発生を防ぐため、魔獣に死体をほじくられないためにも
全てを火葬にするそうであった。
「この子爵領にも近々魔人が攻めてくる事は間違いないだろ
う。戦う準備を始める」
「暗くなってきたので、村に向かうのは明朝8時として遊星と
セレナは近くのホテルに案内するので、そこで夕食を取って
泊まる様に」
と子爵は言ってきた。
カペラは服親衛隊であり、子爵と今後の事について会議を行
うので、セレナと遊星はカペラの部下にホテルまで送って
もらうことになった。
カペラの部下はホテルに着くと、
ホテルの受付に支払いはすべて子爵が払うと伝え、
夕食、宿泊、朝食を依頼した。
お金が無いと困るだろうからと子爵から預かった
暫く暮らすのに十分なお金を渡された後、その
部下は戻って行った。
セレナと遊星はホテルで食事をした後、風呂に入ってから
夫々の部屋に入った。
夜、就寝しようとすると遊星の部屋にセレナが話がしたいと
訪れたので、セレナを遊星の部屋に通し、セレナを椅子に
座らせ自分はベットに座った。
「私も戦えるようになりたい。母親を助けに行きたい。もう
誰も死なせたくはない。私も戦えるようになりたい」
とセレナは言ってきた。
遊星は、歓迎会での人々の笑顔、村長と息子と話したこと。セレナ
の父親に剣を教わった事、セレナの母親にヒールを教わった事。
村の外で出会ったセレナを気にしていたセレナと同年代の男の子達
の事。そして、襲撃を受けた後の村の状況を思い出してた。
遊星は、暫く目をつぶって考えていたが、決断して話し出した。
「この世界は妻は一人かな」
「ここでは一夫多妻も、その逆も禁止されてません」
セレナが答える。
それを聞いて遊星は
「僕は異世界から来たが、その世界には妻がひとりいます。
もし君が、僕の2人目の妻になって一夜を共にするならば、
君と僕の能力を共有する事が出来るが、君はどうする?」
と聞いた。
「貴方の妻になります」
セレナが言った。
遊星はセレナにキスをしてベットに連れていき。
遊星は明かりを消した。
【赤井遊星】
年齢21歳、身長182cm、出身は地球・日本、
家族は両親と妹、妻2人、黒髪ヘア
オリジナルスキル:動物・魔物・女性とのスキル共有。
短期間で理解出来る言語能力。
女性から得たスキル:ジャッジメントの剣と弓、
気配サーチ能力、力量サーチ
スキル共有した生物:(現世) サメ、ライオン、黒豹、チータ、
リス、タカ、犬、猫
(異世界)赤竜
【村娘セレナ】
年齢16歳、身長157cm、出身地は異世界、
家族は両親と姉、薄茶ショート。
遊星と共有スキル:動物・魔物とのスキル共有。
短期間で理解出来る言語能力。
ジャッジメントの剣と弓
オリジナル能力:気配サーチ能力、力量サーチ、俊足
スキル共有の異世界生き物:赤竜
翌朝、セレナと遊星は、子爵が手配した面々と一緒に
護衛も兼ねて村に向かった。
教会にいた女性たちは、かわるがわるセレナに抱き着いてきた。
子供たちが遊星に向かって来たので、遊星は腰を下ろして子供
達を抱き寄せた。
村には死体処理班と半数弱の護衛が残り、協会に残った人達を
乗せた馬車は半数強の護衛が子爵領に向かった。
村に戻った後、町の役場に行ってセレナと結婚の届をした。
遊星がこの世界のこの町で初めての戸籍を作った。
赤竜のニナはエレナの竜としたので、3匹中2匹の竜をセレナと
遊星の赤竜として、残りの1匹はカペラの竜とした。
その後、エレナが戻ってきたので話をすると、セレナの父は
王都の聖女テラに預けた。
エレナの話では、
「テラの話では父は助かるが元の状態に戻るには時間を要する
との事」
「国王が二人の話を聞きたいので、王城に来て欲しいとの事」
翌日セレナと遊星は赤竜に乗って王国に行くことにした。
国王は二人を知らないので、カペラと一緒に行くことになった。
3匹の赤竜に別々に乗って王都に向かった。
王都につくと親衛隊が弓を射れる姿勢で構えたが、カペラが手を
振ると弓を下したので王宮前広場に3匹とも降り立った。
エレナから国王に聞いていたので、王宮の親衛隊隊長が3人を
伴って王宮に入って行くと、王家遣いの警護隊や従者らが廊下
の両脇に控える中、VIP応接室に通された。
応接室には王様、王妃、王子、王女が出迎え、その脇には宰相、
警備隊隊長、親衛隊隊長、聖騎士長、大司教、そして聖女テラ
が待機していた。
テラはびっくりするほどの美人であった。
国王から席を勧められたので遊星が中央に、両脇にセレナと
カペラが席についた。
対面中央に王様と王妃が座り、王様の隣に王子が座り、王妃の
隣に王女が座った。王様の後方に他の面々が立っていた。
王様は、遊星に知っていることをすべて教えて欲しいと言って
来たので、異世界での出来事から、この世界に転移してからの事。
自分の能力から、魔素を使って剣や弓を創り出せる事。セレナの
村の出来事。セレナの父親の事、母親の事、姉の事、赤竜の事
をどこまで信じてくれるかは分からぬが包み隠さず話した。
セレナの村から飛び立った魔族が王都の北方向に向かったこと
などを締めくくりに話した。
但し女性と交わる事により力を共有できる能力だけは伏せて
おいた。聖女テラが遊星をじっと見つめている事にセレナが
気づいて、遊星を横目に見たが遊星はそれに気づいていな
かった。
王様は言った
「君の話を聞いて北の子爵領から狙われている事がわかった。
北の魔人は攻撃した村、町は全て破壊し皆殺しをしてくる。
但し、ヒーラーは捕えて、恐らくは自分たちの回復の為に
生かすのだろう」
「東西南の子爵領も、公爵、侯爵領、最終的にはこの王都を
狙って来るであろう」
王様はセレナと遊星に対しては
「今日はお疲れさまでした。本日はホテルに行ってお食事を
されて泊まって行ってください」
「この後、我々は今後の事について話し合いますので
お供はできませんが」
と話して来た。
王様は
「そういえば、セレナのお父親が教会に入院されていたの
ですね、この後、向かわれると良いでしょう」
そして聖女テラの方を向いて
「聖女テラに案内してもらうと良いでしょう。テラお願い
します」
聖女テラが頷いて言ってきた。
「セレナさん、そして遊星様行きましょう」
聖女テラが嬉しそうに遊星の手を引いて、
セレナとカペラがその後をついて王宮を出た。
手を引かれた事によりあっけに取られてついていく遊星だったが、
後ろをついていくセレナもカペラもあっけに取られていた。
教会の病室につくとベットに父親が座っていた。
セレナが近づくと父親が最初はぽかんとしたが、
直ぐに満面の笑みに変わって手を広げた。
セレナは駆け寄り二人は抱き合って涙した。暫くして、
父親が遊星を見たセレナを横に寄せて、遊星に向かって
話してきた。
「エレナから自分を救ってくれたのは君だと聞いた。
本当にありがとう」。
「命が、助かってよかったです」
と遊星が言った。
二人は両手で握手した。
暫く、セレナと父親で再開を祝って話していたが、母親の
話になると、二人とも現実に戻り真剣な顔になる。
「私たちで助けに行く」
とセレナが言うと、
戦う力がないセレナが言った事に対して父親がびっくりして
いると、それを察してセレナが付け加えて言った。
「遊星は女性と交わるとスキルを共有出来る能力があるの。
私と遊星は結婚しました」
セレナは右手に剣を創り出した。
父親はびっくりしたが、
「そうか結婚したんだ。そうすると遊星は俺の息子に
なったと言うことだな」
「娘をよろしく頼む。但し、今の2人の力では火炎の魔人は
倒せないぞ」
と父親は言った。
それに対し遊星は、
「分かってます。時間はあまりないですが、仲間を作って
戦います」
セレナの側で、じっと見守っていた聖女テラだったが、
「遊星さんは、女性と交わる事で力を共有できるたのね」
と小声でつぶやいてにこっとほほ笑んだ。
セレナはその微笑みが気になった。
その後、テラは遊星ら3人をホテルに連れていき、
フロントに食事と宿泊の受け付けを済ませると
戻って行った。
遊星とすれ違いざまに
「また会いましょう」
と言って帰って行った。
セレナ、遊星、カペラの3人はホテルで食事を済ませた後、
雑談をした。
「明日、カペラは子爵領に戻るがセレナと遊星は王都見学
するとよい。武器、防具、服、バック、ポーションなどは
王都で揃えるのが良い」
とカペラは言ってきた。
遊星とセレナは、武器についてはセレナも魔素を用いて創り
出せるようになったので購入する必要もないが、防具や服を
見に行くことにした。
カペラは、明日は別行動で、
「買い物をしてから夕方には子爵領に戻る」
と言ってきた。
食堂で話していると、別なテーブルにいるフードを被った
女性が気になった。そこにいるのに気配が感じられない。
子爵領ホテルの食堂でも見た気がする。
気配なしで襲われたら回避できるかどうか、不安になった。
カペラ、セレナ、遊星は風呂に行った後、
夫々の部屋に入っていった。
その夜、遊星の部屋に来客があった。
遊星が言った
「テラ様ですか?」
テラが答えた
「良く分かりましたね」
遊星が言った
「来られると思ってました」
「中へどうぞ、お待ちしていました」
テラが聞いてきた
「どうしてそう思われましたか?」
遊星は言った。
「教会の病院で貴方の小声は聞こえていました。自分は犬や猫など
の能力で遠くの小さな声も聞き漏らしません。こうなる事を
予感しました」
「テラ様は、どうしてスキルを共有したいのですか」
と遊星が聞くと、
「私には、仲間にしたい生き物がいます。山の裾野の森に済む
一角獣です。獰猛とも言われています、あなたの生き物と心を
通い合わせるスキルが欲しいです。それに、あなたを一目見て
惚れてしまいました。私も貴方と交わって結婚したいです」
と言ってテラは頬を染めた。
「聖女はどうするのですか?」
と遊星が聞くと、
「妹がいますので、あとは任せて貴方とセレナさんと一緒に
家庭を持ちたいです。仕事は何か見つけて貴方の負担に
成らないようにします」
「その前に魔人を倒す必要があるでしょう。魔人のせいでけが
をする兵士が沢山でるかもしれません。あなたが、高ヒール
能力を得る事は貴方にとっても有意義な事と思います」
遊星はこうなる事を予想し、結論も決まっていた。
遊星は、テラに近づいて静かに唇を重ねて部屋を暗くした。
【聖女テラ】
年齢23歳、身長164cm、出身地は異世界・王都、
家族には両親と妹、白金髪ロングヘア。
遊星と共有した能力:動物・魔物とのスキル共有。
短期間で理解出来る言語能力。
ジャッジメントの剣と弓。
気配サーチ能力、力量サーチ、俊足
オリジナル能力:高位ヒーリング、光魔法
スキル共有の異世界生き物:未
翌朝、テラは皆に見つからない時間に戻って行ったので、
セレナとカペラと遊星の3人で朝食をとった。
カペラは単独行動で王都内で買い物を行った後、王宮に
預けてあった赤竜に乗って子爵領に戻っていった。
数時間後、テラが森に入っても活動できる姿でホテルに
やって来た。
遊星とテラが乗った赤竜とセレナが乗った赤竜で森に
向かった。森の中の赤竜が下りられる場所を見つけて
降下した。赤竜には、危険がせまったら上空に待機する
ように念波で伝えて、
3人で森に入った。
途中で、
「テラと結婚した」
とセレナに伝えた。
セレナは悲しそうな顔をしたが
「病院で、テラ様を見ててある程度は覚悟はしてました」
と言った。
森に入ると、セレナが言ってきた。
「村の近くの森より凶悪な魔獣がいそう」
テラに、魔素による武器の創り方を教えた。
遊星は長剣、セレナは両手に短剣、
テラは先端が三日月のメイスを創り出した。
静かに歩いていくと、大型のイノシシ型の
魔物が3匹現れて、3人それぞれに襲い掛かってきた。
遊星は簡単に切り捨てた。
セレナは上空に飛びあがり魔物の頭を剣で突き刺した。
テラも魔物の頭をメイスで打ち付けた後に、魔物の背中を
蹴って上空で一回転して魔物の後方に飛び降りた。
初めてとしては見事と言える。
テラは大喜びで
「どうすごいでしょう」
と騒いでいる。
セレナが
「狂暴な聖女だ」
とつぶやいた。
少し歩くと、一頭の魔物が近くにいるのを3人ともに
サーチした。一角獣の可能性が高いと感じた遊星は
「待ってて」
と2人に言って、1人で近づいて行った。
一角獣がいた。一角獣の前に立つと、遊星と一角獣が
互いに見合ってそのまま静かな時間が過ぎた。
お互い相手の出方を伺う、力量を見極めあう。一角獣は
諦めた様で前足を折って頭を垂れた。
遊星は近くによって、額に手をかざして思念を共有する。
ここでも遊星は主従ではなく友として関係を構築した。
念波で理解しあえる関係が出来たので、セリアとテラを
呼んだ。テラとセリアにも思念を分かち合い仲間になった。
少し経つと一角獣が別な方向を見つめた。サーチ能力で、
2頭の魔物が近づいてくるのがわかる。敵意は感じられない。
2頭の一角獣が現れ家族であることが分かる。
この2頭とも思念を分かち合い仲間になった。
1頭は先ほどの一角獣の奥さんで、もう一頭は息子であった。
父親一角獣に遊星が跨り、母親一角獣にテラが跨り、
息子の一角獣にセリアが跨って王都に戻って行く。
王都内の王城に向かう途中の路上では、住民たちが一角獣と
それに跨るテラとセレナ、遊星を唖然として見つめていたが、
テラが跨っているのを確認して、
「わあ~、テラ様だ、テラ様が一角獣に跨っている」
と盛り上がっていた。
遊星はテラを先頭に立たせて正解だった改めて感じた。
王宮に到着すると、ざわついていた。そして我々のところへ
親衛隊の何人かが走ってきた。
一角獣に跨ってきたのでざわついているのかと思ったが、
違った。
「緊急事態です。東西南北の子爵領が一斉に攻撃されました」
いつかは攻撃が来ることは分かっていたがあまりにも早いのと
北が攻められてから東西南が攻められると思っていたので
一斉に攻撃される事は予想外であった。




