村娘セレナ(異世界)
遊星は祇園神楽のスキルで異世界に転移した。
神楽は直ぐに現世に戻ってしまったので、
一人取り残されてしまった。
「一人きりで寂しい。帰りたい」
と遊星は思ったが
「自分は転移できないし」
とあきらめる。
こんなことになるのなら、神楽とスキルを共有した
かったと思う。
夢見羽衣が多くの女性と交わってスキル共有して
強くなりなさいと言いながら、転移できるように
勧めて来なかったのは、異世界から直ぐ逃げて帰る
事のないようにとの策略では無いかと考えてしまう。
ただ、このままここにいても仕方がないので、状況を
確認すべく周りを見渡した。
草原と森の境目であり、草原の先を見渡すには、太い
木上方の枝に上るのが良いと考えリスのスキルで
駆け上がった。
太い木の枝から草原を眺めると数キロ先で何かが
起こっている事に気がついた。
鷹の目を用いて数キロ先を見つめると少女が複数の
魔物に追われていた。
赤井遊星は鷹のスキルを使って上空に上がり、
空を飛んで少女と魔物の後を追いかけた。
魔物は7体。恐竜のブェロキラプトルに黒い毛を
生やして額の中央に角を生やした様な魔物で2本足で
追いかけているが、この魔物達は恐ろしく足が早い。
少女も人間の足としては信じられないほど速いのだが、
「オリンピックに出場したら、世界記録で優勝する
かも」
魔物の体力の方が勝り、このままでは逃げきれずに
殺されてしまうと感じた。
遊星は上空から降下して、1匹の魔物の背に飛び
乗って剣を突きさした。魔獣は勢い余って前方に
何回転か転がった後に動かなくなった。
他の魔物は、速度を落とさずに少女を追いかけている。
遊星はチータかグレイトハウンドのスキルかは分から
ぬが草原上を凄まじい速度で他の魔物達を追いかける。
走りながら右手に新たな剣を創り出し、魔物を追い
かけ1体、2体と切り倒しながら少女の横まで来て
並走する。
少女を安心させるため笑顔を彼女に見せたのち、
両側を走る魔物を1体、2体と切り払って倒して
いく。
遊星は、最後に後方にいる2体の魔物に対して、
後ろを振り返って立ち止まり、2体の魔物を迎え
撃って退治した。
少女が話してきたが最初は何を言っているかわから
ない。遊星は少女の言語を頭の中で解析していく。
少女が立ち止まって遊星の近くに歩いてきて
「ありがとう。助かった」
と言ったのが理解できたので、遊星は笑顔を返した。
少女は「セレナ」と言う名前である事が分かった
ので、遊星は「ユウセイ」と名前を教えた。
セレナは倒した魔獣を見ていたが、短剣で首筋の
頸動脈を切った。遊星は血抜きと理解した。
「この魔獣は食べられる。おいしい」
「帰ったら皆に伝えて回収に来てもらう」
とセレナが言ったと理解した。
村に行く途中、話を聞きながら歩いたので、遊星は
彼女の言葉をかなり理解する事が出来た。
セレナは
「私の能力は、俊足、敵の居場所と何匹いるのかを
サーチする能力がある。敵の力量を把握する能力が
ある。毒の有無を感知する能力もあるけど、戦闘
能力はあまり高くない」
「それでも回避能力が高いので一人で薬草や山菜、
キノコ採りにしばしば森にきている」
「最近、森に魔物が増えている。魔物をサーチして
危険を感じたので隠れたが、見つかってしまった
ので全速力で逃げたのだが、相手が速すぎて追い
つかれてしまった」
村は1km四方を木の塀で囲われていた。
遊星の記憶だと砦の印象である。
魔物は7頭と多かったので、村長の息子と言われる
男性の指示で数十名の男性が木でできた荷車を
押して魔物の解体と回収に出かけた。
護衛としてセレナの父親が同行したので、サーチ能力
のあるセレナとセレナの護衛として遊星も同行した。
村では、大量の肉が手に入った事と、遊星がセレナを
助けた事もあり、遊星の歓迎会を催してくれる事と
なった。
村の中には畑や、果樹園、米・小麦畑もあり、家畜も
買っていて、村人は千人程度との事から自給自足は
できそうであった。
10kmほど離れた町に行けば、子爵邸、協会、病院、
商業ギルド、冒険者ギルド等があり、服屋、武器屋、
防具屋、寝具屋、雑貨屋、薬屋、酒場、ホテル、
レストラン、娯楽施設等があって退屈しないで生活
できる施設が備わっているとの話である。
村では夕方から火を焚いて魔物を焼いて野菜、果物、
山菜等と酒やミルク、果汁等を飲みながら談笑し
和気あいあいと宴を楽しんだ。
遊星は完全に現地語を理解し皆と話ができる様に
なっていた。常に側にいたセレナは遊星の言語
適応能力にびっくりしていた。
倒した魔物の名前はゲルマ、普段は森のもう少し
奥に住んでいて草原の近くまで下りてくるのは
珍しい。更に、家族数体で暮らすことが多く、
成獣7体で攻撃してくることは本当に珍しい
との事であった。
村人にとっては、ゲルマの肉はごちそうとの事で、
結婚式や子供が生まれた時などのめでたい時にだけ、
村の若者達が集まって狩りに行くことがあるとの
事であり、成獣7体を皆で食べる事等は
今までなくて本当に贅沢の極みであるとの事。
普段食べる肉は森の入り口に住むトピと呼ばれる
ウサギに似た魔物や、ピキと呼ばれる野鼠に似た
魔物を捕まえて食べるとの事。
川で魚を釣ったり槍でついたりして捕らえて食べる
事は比較的多いとの事である。
最近は魔物が森の入り口付近まで下りてくることが
多くなってきており村の警戒感も強くなっている
のだと言う。
セレナの父親は昔は王都の親衛隊の隊長を務めた
こともあり剣の腕は落ちたとは言うものの使い手
であり、冒険者を止めて村に戻った者や、村の
若者達を集めて剣、槍、弓などの扱いを指導して
村の防衛力を強化しているとの事である。
村長や村長の息子と話したが、この二人からは
村を大切にしている事が伝わってくる。
二人は若者たちが村を離れ町や王都に働きに
行って、そのまま家族を作って戻って来ない
ケースが増えている事に関して愁いを抱いて
いた。
そして、いつかは戻ってきて欲しいと願っている
との事であった。
遊星は若い人たちは都会の方が刺激があって、
都会に行って住みたいと思うのは当たり前かと
思う。
日本でも田舎から都会に若者が出て行って過疎化
が進んでいる村がある現状と似ていると思った。
それでも都会暮らしを離れて田舎に住みたい人も
いて、セレナの両親は王都に住んでいたが、
セレナの母親は王都生まれで一時は聖女と呼ばれた
ヒール魔法を習得した女性であったが、セレナの
父と結婚して子供が生まれたのち、父親の田舎に
移り住むことにした。
子供はセレナが16歳で、姉のエレナは21歳で
父親に勝る剣術使いで王都の聖騎士だったが、
東にある子爵領で子爵が狙われる事件があった後に
王様の指示で子爵の親衛隊隊長として働いている
との事である。
村の歓迎会では遊星の周りを若い男たちが囲んで
来て遊星が魔素によって剣を創り出せる事に対して、
見たいと言って来たので、剣を出して見せると皆が
「おおっ!」と声を発した。
小さな子供達もそれを見てはしゃいでいる。
セレナの父の話では、剣を創り出せる人間は過去に
もいたそうで、3代前の王様が剣を創り出せたと
伝えられている。
この地は話を聞く限り関東地方位の広さと思われ、
小さな島国と言える。その周りには東西南北に
島があり、その上空に魔王城が浮いているとの事。
3代前の人間の国王と魔王達との力は均衡していて、
さらに全員が友好的であり人間の国王が他界しても
和平を続けて来たとの事である。
ところが先日、北の魔王が亡くなってしまった、
その長男が戦争強硬派で、戦争を仕掛けてくる
かもしれないとの噂がある。
更に、とても残忍な性格であるとの事である。
北の魔王には息子が2人、娘が1人いるが、長男
だけが戦争強硬派で他の2人は穏健派との事で、
亡くなる前に魔王は長男ではなく次男に王位を
譲りたいと考えていたようだが、それを知った
長男に暗殺されたとの噂もある。
人間の国王は、王都を取り囲む公爵領、侯爵領、
伯爵領、子爵領、男爵領等に戦いに備える様に
指示を出した。
セレナが暮らす様な村々は各地に点在するが、
山や平地であっても河川に近い場所、あるいは
海沿いにあったが、男爵領も含めれば村々の
近くには貴族領があるので有事の際は貴族領に
逃げ込む様にと王様は近くの貴族を通して
村々に通達していた。
遊星は戦いに備え、セレナの父親に剣術を習い
始めた。セレナの母親は遊星が何もないところ
から剣を作り出せるのは魔法が使えると考え、
遊星にヒールを教えだした。
ヒールがなかなか使えずにいると、母親は家畜
であるヤギの足をナイフで傷をつけた。遊星に
かわいそうだからヒールで直してあげてと
言ってきた。
ヤギは悲しそうにメー、メー泣いている。
遊星は何とかしてあげたいとの気持ちが溢れ出
して、祈りながらヒールを唱えたところヤギの
足が緑色の光に包まって、血が引いて傷口が
塞がってケガする前の状態に戻った。
遊星は多少の傷なら治せる程度のヒールを
使えるようになった。
剣を習い、ヒールの精度を向上させる訓練を
しながら、セレナと一緒に森に行って山菜や
薬草を取ったり、木の実を取ったり、
ウサギを捕ったり、森の奥に入り魔物と戦って
力を蓄えたりもした。
時々、セレナと同年代の男の子達と会うことが
あったが、セレナと自分が一緒にいるのを
チラチラ見ながら去って行く。
セレナが気になるのだろうと思ったが、セレナは
気にしていない様子で楽しそうに手を振って
別れるのだった。
ある日、ウサギを狩りに森に行ったところ、
20体の赤竜が森の奥、山の方から村の方へ
上空を飛んでいくのが見えた。
渡り鳥の飛んでいく陣形と同じような陣形で飛ん
でいる。赤竜の上に2m以上ありそうな赤髪で
角が生えた者達が乗っているのが見えた。
セレナが
「魔人の襲撃だ、村が危ない」
「直ぐ知らせないと」
遊星が走り出そうとすると、
セレナは遊星の腕を掴んで
「ダメ、見つかったら二人とも殺される。
隠れないといけない」
遊星が、
「それでいいのか?親も、村人も殺されるかも
しれないんだぞ」
セレナが
「両親に、かなわない敵にあったら、自分が
助かる事を優先して隠れろと言われている。
もし見つかったら逃げろ絶対戦うなと
言われているの」
しかし、二人は見つかってしまった。
群れの最後に飛んでいる一匹の赤竜がこちらに
向けて降下してくる。
遊星がセレナに
「戦ったら、俺は勝てるか」
セレナは
「強さは同じくらい。だけど何らかのスキルを
持っている。注意して」
とセレナはと言ってきた。
遊星は、勝てないと感じたら逃げるだろうが、
勝てる可能性があると察知したのだろうと考え、
迎え撃つ覚悟を決めた。
赤竜が地上に降り立ち、にやけた魔人が降り
立った。2m50cm位で筋肉隆々な魔人で
髪は赤色で頭の両脇に角が生えていた。魔人と
言えばこんな形とイメージされる姿であった。
魔人は魔素で剣を創り出しゆっくりと遊星に
向けて歩き出してきた。そして剣を振り下ろ
してきた。
遊星も魔素で創り出した剣で受け止めたが、
相手の剣は非常に重かった。
それでも遊星は受け止めてからはじいて横に
振りぬいた。このパワーはライオンと共有した
パワーかと思う。
暫く魔人と剣で戦っていたが、魔人が立ち
止まってニヤリと笑って何らかのスキルを
発動しようとしていた。
セレナが
「遊星気を付けて、何らかのスキルを使って
きます」
遊星も立ち止まって神経を研ぎ澄ました。
そして魔人が一瞬消えた。
セレナが「右後ろ」と叫んだので左側によける。
魔人は瞬間移動のスキルがあるようだ。
魔人が消えた。
セレナが「左後ろ」と叫んだ。
自分の左後ろを剣で切る。
魔人は剣でそれを防いで後に飛びよける。
再度、魔人が消えた。
セレナが「右前方」と叫んだ。
右前方を剣で切る。
魔人は剣でそれを防いで後ろに飛びよける。
何度か、その攻防をしていたが、
魔人は埒があかないと踏んだのか、
セレナに狙いを変えた。
それに気づいた遊星だったが、赤竜が遊星や
セレナを見ている事に気づいた。我々に危害を
加えようとする気配は全くない。
何か懐かしいようなまなざしで見ており、特に
セレナに対して好意を持っていると感じられた。
そこで、遊星は
「セレナ!赤竜の側に行け、君を守ってくれる」
セレナも遊星が赤竜から感じた印象と同じ印象を
受けたのか遊星の指示に従った。
魔人は、
「ばかめ、赤竜!その女を殺せ!」
と命令したが、従わなかった。
魔人は、セレナの側に瞬間移動しセレナを切り
つけようとしたが、赤竜が爪で魔人を払いのけた。
それを見逃さず遊星は俊足で魔人に突っ込んだ、
魔人は慌てて姿を消したが、
セレナが右後方と叫んだので、魔人が現れる方向に
再度突っ込み切りつける。
魔人が再度消えるがセレナの叫ぶ方向に突っ込み
再度切りつける。
それを何度か繰り返すと、魔人が先に疲れが見えて
きた。遊星の動きが魔人を上回り魔人を切り刻んで
いく。
最後に魔人の胸に
「ジャッジメント」
と叫んで剣を突き刺した。
魔人は立ったまま、暫く剣の刺さった胸を見て
いたが、暫くして倒れて絶命した。
遊星は、倒れた魔人が絶命した事を確認後、
赤竜とセレナのそばに歩いて行った。
遊星が赤竜の顔の近くまで行くと、自分の顔を
近づけた後、頭を下げたので、遊星は赤竜の
額に右手を当てる。赤竜の記憶や思いが
伝わってきた。
それによると、セレナとセレナの姉が子供の頃に
森で怪我している子供の赤竜を見つけて連れて帰り、
二人の母親のヒールでけがを治した。そして暫く
セレナの家族が赤竜の子供の世話をしていた。
そして完全に回復した赤竜を自然に返したので
あった。セレナの姉がいつも側にいて、特に
懐いていたようである。
その赤竜は、魔族に仲間や家族ともども捕まって
魔族の移動手段として使われていた様である。
遊星は、赤竜と念波で会話できるようになった。
更に、赤竜の飛行能力、パワー、火を放つ能力
を入手した。
赤竜は爪によるジャッジメントの能力、人間の
言語を理解する能力、念波で会話する能力、
少しヒールを使える能力を共有した。
セレナにも赤竜のこの能力を分け与えられる
かもしれないと感じた遊星は、セレナを近くに呼び、
赤竜の額に右手、セレナの額に左手を当て念じる
事により、セレナは赤竜の記憶を感じ念波によって
思いを伝えられる様になった。
セレナはこの赤竜が昔森で助けて暫く一緒に
暮らしていた竜である事を理解した。そして、
セレナは赤竜を「ニナ」と呼んで赤竜の額に
自分の額を当てたのち、赤竜の首に手を廻して
懐かしむのであった。
ただ、魔人達が、自分の村に向かっていたことを
思い出して、村の方を眺めると火の手が上がって
いるのを確認した。
「すぐ助けに戻ろう」
と遊星がセレナに言ったが、
「今言っても何の役にも立たない。お父様、お母様は
許さない。今は眺めて祈るだけ」
とセレナは言った。
【赤井遊星】
年齢:21歳、身長:182cm、種族:人間、
髪:黒髪ヘア、家族:両親と妹、妻1人、
オリジナルスキル:
短期間で理解出来る言語能力。多数の生き物とスキル共有。
女性から得たスキル:
ジャッジメントの剣・弓
スキル共有した生物:
(現世) サメ、ライオン、黒豹、チータ、リス、
タカ、犬、猫
(異世界)赤竜
【村娘セレナ】
年齢:16歳、身長:157cm、種族:人間、
髪:薄茶ショート、家族:両親と姉、
オリジナルスキル:
気配サーチ能力、力量サーチ、俊足、毒の有無感知
スキル共有した生物:(異世界)赤竜




