90 結果として
騎士でも大怪我したらきちんと治るが元通りになるまで訓練やトレーニングが必要で、私はそれ以上の大怪我をした。つまり歩くのから仕事に戻るまでかなり時間がかかるということらしい。
「足は時間が掛かるかと思います。」
神官様に足に治癒を掛けられながら言われた。あちこち殴られ過ぎて怪我の度合いが分からない。傷は完璧に治したけれど怪我の度合いが宜しくないような言い方だ。
「え…」
「逃走防止の1つかも知れませんが両足の腱を切られています。勿論綺麗に治していますが1度切れてしまっているので元通りに歩くには少し時間がかかるかと。腕の方は骨折なのでまだ早いですよ。」
「…息苦しいのも治ってます。」
「肋骨が数本折れてましたからね。怪我全て確認されますか?」
そんな痛い話は聞きたくない。丁寧にお断りしてベッドに入る。大人しくしよう。何故イザーク様が当たり前のようにいるんだ。私はまずそこを気にしないといけないのだけど、本当に私に付きっきりの仕事なんて選んできたのだろうか。そうなんだろうけれど。
ここで書類仕事をしているのはとても違和感がある。
「そう言えば何を私に頼もうとしたのですか?」
「……あの人たちにバカスカ殴る蹴るされて色々思う所があったので……」
「取り敢えず生かして捕らえていますからどうぞ。言うだけならタダですし、貴方は動けませんし。」
「…胸がないだの、顔も可愛くないとか平凡だとか。穴があったらどんなのでも良いだろとか。殴る蹴る髪を掴んで引きずり回すと色々して頂いたので…一物取り敢えず切り落として欲しいと思っただけで…」
これでも殴る蹴るされていた時の事は覚えている。怖いというのもあったけど、それ以上にこいつら気に食わないというだけで体力温存を選んだからかもしれない。ただ、殴る蹴るだけじゃなくて色々されて頭に来ている。
「ほぅ…分かりました。」
いい笑顔で言われたけれど…へ?
「えと、逮捕されたなら法律に基いて裁かれたら良いので…」
「貴族誘拐なんですから死罪ですよ。結果死ぬのだからどうしようと自由でしょう。」
「…貴族誘拐?」
「出自はどうあれ貴方は貴族でしょう。男爵位を持っているのですから平民が手を出したら死罪。当然です。無事なわけないでしょう。」
「そ、そうなんですか。」
「普通誘拐した人質を瀕死までバカスカ殴らないはずなんですが、何があったのですか?」
「…何をしてもどうせ暴力振るわれるんです。命乞いも何もしないで無視してました。幸い?にも暴力には慣れてますから。」
「それは殴られますよ…」
「体力の無駄ですし、何を言っても殴ってくるなら無駄口叩くより体力温存すべきって思っただけです。」
素直に白状をすると間違ってはいないけれど正解ではないと少し怒られた。ミカエラは側から離れなさそうな彼を見て少し考える。どうやって探して見つけたのか聞きたくないけれど気になるし。それよりも当たり前のように足を持ち筋肉をほぐしたり、足首を動かしたりしているので何をしているのかすごく気になる。
「あの、イザーク様何をなさっているのですか?」
「動かしやすくしているんですよ。こういうことをしないと歩くのに時間が更にかかりますから。少し痛いでしょうが、我慢してください。」
そういう知識はあまりないので断るための理由を持っていないないのでお任せするしかない。腕はあげられるけれど、思ったように身体が動かないのが不便だ。
「私がどうやって見つけたのか聞かないのですね。私が来ると思っていましたか?」
「そうですね。多分イザーク様が一番かなって思っていました。鼻が利くとおっしゃっていましたし、私も出血していたから見つけるには十分だと思っていました。」
「えぇ。そうですね。誘拐された時に貴方の匂いが薄くなったことに気づいたのですが、薄くなっただけで初動が遅くなり申し訳ございませんでした。」
「・・・匂いで私の場所を把握していたことにドン引きなのですけれど。」
匂いで場所の把握って怖すぎる。私そんな変な匂いが強烈なのだろうか。すんすんと自分の匂いを確かめるがよく分からない。
「ミカエラはいい匂いですよ。気にするような匂いではないです。」
手を止めて側にくる。身体を少し逃げるようにする。近い近い。抱きしめられた。ミカエラは助けられたし。と、少し大人しくして匂い嗅ぐなら勝手にしたらいいと。少し諦めた。それにしても私を誘拐した人は誰なんだろう。私個人を誘拐しても何も美味しいものなんてないだろうに。
「いつになったら帰れるのでしょうか。」
「別に帰ってもいいですけれど、アリアに介護を任せるのですか?それは大変でしょう。」
「えっと・・・」
「ここで手厚い看護を受けるか、侯爵家、ヘラルド様の邸と選べますがどうしますか?」
「・・・」
なぜその選択肢になるのだろうか????家で借りる人を増やしたいという私の密かな願望はどこなんだろう。ないのかな????
「・・・えっと。」
「食事は侯爵家が美味しいですよ。」
「ユーリ様の都合のいい方でお願いいたします。」
それがいい。多分それしか選択肢がないのだろう。




