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89 最悪な日は続く

 殴られすぎて意識が飛んでいた。意識が戻ったけれど、狭い小屋の中で切り傷もあれば殴られて多分骨が折れている。指の感覚はあるから仕事には影響しない。けれど全身が痛すぎる。そして布面積がかなり減って肌色面積がかなり増えている。股間に痛みがないけれど下着だけになっている。ズボンだったのに脱がされている。悲鳴を上げさせたいのだろうか。色々人から話を聞いているけれど、悲鳴をあげても殴られる。大人しくするのもあまりよろしくない。ミカエラは大きく息を吐き出してどこが痛いだろう。と、考えるのをやめたくなるほどにあちこちが痛い。


「つまらねぇなあ。」

「悲鳴の一つくらいないのか!?」

「体力の無駄ですし・・・意味ないのに・・・」


 あちこち痛い。また殴られた。出血があるからいないことに気づいたのなら見つけられるはず。昔のいじめによる暴行の経験がこんな所で活きてくるなんて。

痛いのは我慢出来る。だけど、そろそろ成人男性に殴られ続けるのは不味い。息もしづらい…肋骨も折れたのか…


「貧相な身体だけどまぁいいか。生きてれば良いわけだし。」

「使えるのかよ、それで。」

「使う分はいいだろ。別に。」


足で仰向けにされた。最悪…




「女性1人に対して男何人で寄ってたかっているのですか。」


風が吹き抜けた。目の前に足が見えた。身体を動かすのも出来ない。男の悲鳴が聞こえて膝を突いたのは過保護なあの人だ。


「痛いですよね…すみません回復出来なくて…少し待っててください。」


ロープを切られて身体を起こされて壁にもたれ掛かるように移動させられた。着ていたローブをふわりと身体を隠すように掛けられた。


「…さま」

「はい。ちょっと同じ目に遭わせます。少しお待ちください。」

「…て…さぃ」

「殺しません。なのでこいつらをどうしたいのか後で教えてくださいね。」


殴る蹴る。徒手格闘だけで圧倒していく。身体が痛い。馬車の音がする。

それよりも短時間で男数人を逃げれないようにぶちのめしたイザーク様だ。


ローブで包まれて抱き上げられた。身体がすっぽり隠れている。フードをすっぽりと被せられた。


「神殿で治療をします。」

「イザーク!」


レオンハルト様が騎士達と来たようだけど視界を塞ぐように抱きとめられていた。イザーク様とレオンハルト様で何か話をしていた。そのまま馬車にイザーク様と乗る。私は動けないから運ばれるままではあるけれど。

騎士が氷嚢を作ってきたのを頬に当てられた。


「遅くなりすみません…」


首を横に振る。全身痛いし、振動も辛い。


「もう大丈夫です。安心してください。」


やってしまった…怒られる方がマシだ。勝手に責任感じている。顔が腫れて殴られて痛いから口が上手く動かない。


「っ……」

「ミカエラ、無理しなくていいです。後で話は聞きますから。」

「……あり…とご…ます」


瞼が重い。目を閉じて意識を手放した。色々限界。意識を手放した。






目を覚ましたら痛みが引いていた。スッキリと目が覚めた。ただ身体が思うように動かない。何で何処も痛くない???死んだ???トイレ行きたい。身体を無理矢理動かすと筋肉痛のように痛む。


「あ。」


ドチッ。ベッドから落ちた。顔から落ちた。痛い。扉が開く音がした。


「ミカエラ、何をしているのですか???」


イザーク様に抱き上げられてベッドに座らされた。額を撫でられたが少し腫れているのだろうか。それよりも身体が動かない方が問題だ。


「…トイレ行きたいのですが、身体が思うように動かなくて…」

「あぁ、なるほど。」


部屋にトイレが付いている。どれだけ良い部屋なんだ。ミカエラを抱き上げてトイレまで運ばれた。掴まり立ち出来るように棒があるので何とか1人でトイレが出来たけれど扉の傍に居たのか出てきたら直ぐに抱き上げられてしまう。ベッドの中に戻される。


「喋るのに問題なさそうですね。」

「…はい。身体は痛くないのですが…」

「余りにも怪我が酷いので全て治してもらいましたから。身体が少し思うように動かないでしょうが、それだけ酷かったと思ってください。」


「…何故イザーク様がいらっしゃるのでしょうか。」

「助けたのが私で諸事情をご存知のユーリ様からしばらく護衛するように命じられたからですが?」


諸事情を知っているというのがとても引っかかる。

人が入ってきたのだが、食事が運ばれた。温かな美味しそうな匂いだ。自分で食べようとしたのだが、口元にスプーンが運ばれる。


「ろくに動けないのに無理して食べて火傷しますか?介護度合いを上げなければなりませんね。そうしたら。」


パク。食べる。今の段階での介護を受けた方が良さそうだ。食事を食べるとホッとしたのかぶわっと涙が流れた。


「ここは安全ですよ。」


タオルを押し当てられた。抱き寄せられて安堵感からなのかベショベショと泣いてしまった。

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