46これでも我慢してたんです。
念願の貝殻届いた!!!!やっぱり綺麗。綺麗なところを剥ぐというより、貝を削り落とすなのかな。色々してみよう。貝殻を手に取りエイスをナイフの形にしてクズ石から岩などの使わない部分を削り取るように貝殻を削る。
「魔石並に削りやすい。」
「ミカエラ、俺もしてみていい?」
「あ、どうぞ。沢山ありますので貝殻を削ってここの綺麗なところだけ残してください。」
「薄く?」
「薄くが難しかったら同じ厚みにしてください。」
黙ってチマチマと内職をして何枚か貝殻のシートを作る。シートだけきちんと保管をして仕事の髪飾りやブレスレット、指輪と用意しておく。最近は指輪の元やデザイン、宝石の原材料支給も増えてきた。細かい造形は得意なのですごく楽しい。
「貴族の発注分終わり、こっちは王宮分も終わり…」
「お疲れ様、休憩したら?」
「はい。」
作業台を片付けてソファーに飛び込んで仮眠を取る。集中しすぎた。この後の勉強に影響が出る。レオンハルトは騎士団からの命令で護衛をしているし家族からも連れてきたのは自分なのだから責任もって不自由ないようにさせなさいと言われてそばに居るけれど…
「護衛とはいえ異性の前で寝るのは止めよう?」
ブランケットを彼女に掛けるがスヤスヤと仮眠を取っていた。削ったこの貝殻は何になるのだろう。色々箱などを用意していたみたいだけど…レオンハルトは眠っている彼女の手に触れると職人のしっかりとした手で苦手なことも努力をしている姿勢も尊敬できる。
これからどんなものを作り出すのかそれを見るのがすごく楽しみだ。ミカエラ自身貴族と関わるより好きなものを作っていたいと口々に言っていたし、それなら素材採取に護衛や荷物持ちに気軽に声をかけて貰えるような関係でありたい…
「仮眠終了!」
ミカエラは作業台に戻り四角い箱を取り出した。艶のある何も無い黒い箱。
「中にベルベットを敷いてもいいんですけれどね?とりあえず金粉と銀粉、妖精蛾の鱗粉。それとスライム糊でイザ!!」
エイスでチマチマと削りながら爪の防護剤を塗り箱に貼り付けていく。レオンハルトが切り出したものは少し分厚いのだがそれもエイスでくり抜いて形にして糊でぺたぺたと貼り付けていく。糊で線を引いて金粉銀粉を散らして線にして魔力を流して固定させる。貝の裏側を貼り付ける。その作業をひたすら繰り返した。花を立体的にしつつ全体にスライム糊を流し、上から花の上から妖精蛾の鱗粉をふりかけ魔力を流して固定する。ただの黒い箱がいままで見たことの無い美しいものへとなった。
「これは凄い…」
「これは絵画的に頑張りました。」
次は同じ図案を敷き詰めて色の配列を気にするもの。色の不揃いさも見せつつ綺麗にする。
「凄い…」
「ありがとうございます。パトロン2名にはこの手鏡を届けるように手配をお願いします。」
「姉上たちだね。すごく喜ぶと思うよ。……仕事が沢山来ると思うけどいいの??」
「職人ですし、商人でもありますから売れるものは作りたいですし、定期的に新作を出さないと収入につながりますので……」
それと、ギルドより先に侯爵夫人とエリザベス様にも先行してお披露目をする。この邸の女主人を無視したらいけない。
メイドからのお使いだけだと少なかったけれど、アワビの貝殻が出る時に分けて貰えるようになった。お披露目をしていると女主人二名は手を取ってじっくり眺めたり触ったりしていた。
「ミカエラは凄いものを作るのね。」
「これはまだ簡単なので注文は分散すると思います。多分。」
「だといいわね。ミカエラ、注文はギルドを通してするけれど、絵師見せて下絵を書かせるからそれで作るのは大丈夫?」
「はい。」
色見本として破片、金粉、銀粉、妖精蛾の鱗粉があることも出しておく。それで自分でするというのなら技術利用料を支払えばそれでいいので今回は情報閲覧料としてギルドにお金を支払うだけだ。
何故か王宮のユーリ様とヘラルド様の部屋でお茶なのだが、先日の甥に関してお詫びをされてしまった。
「ヴィルフリートが大分失礼な事を言ったようだ。」
「失礼というか世間知らず、無知でした。物価やお金の価値知らないのでは無いですか?金で解決しようとするのにそのお金を稼ぐ大変さを知らない。勝手に湧いてくると思っているようだったので…つい頭に来ました。私が職人で山に行くことなどを野蛮だとか品がないとか鼻で笑われて、手が汚いとかマメで固くなっているのが汚いとか、好き勝手に言われて殴らなかった私を褒めて欲しいですよ。 …」
フッ。と、目線を逸らして笑う。ヘラルドを待っている間に話をしたのだが、物の価値も分かってないのか一つ一つ説明しないといけない。気分が悪くなったのか、身綺麗にしていたのに手が汚いからなのかまぁ、ご自由に言って貰えた。
「何でしたっけ、平民は貴族のために働くのが当然だとか何とも香ばしい発言もありましたし……貢げた事を地に伏して感謝し、涙を流すことになるとか…あの、大変申し上げにくいのですが、甥っ子の頭大丈夫ですか?」
ユーリはお茶を吹き出してイザークがハンカチを差し出し肩を震わせて大声で笑うのを堪え、ヘラルドは頭を抑えて黙ってしまった。
「…ミカエラ、殴ればよかったのに…」
「レオンハルト様に止められたんです。殴りたかったですよ。何が太いだの皮が硬いだの…アレの嫁になるわけないのに何勝手に言っているんだと…」
ミカエラは自分の手は職人向けの硬い手になっているのはよく知っている。侯爵家の女性陣は素敵なものを作り出す職人の手だと、働き者の手だと褒めてくれている…だから、アレは殴りたかった。




