第4話 狩り
異世界生活一日目を終えて二日目に突入する。
「んーもう朝か」
硬い地面で寝るのはあまり経験がないため体が痛い。
「まだみんな寝てるのか。現代人には早すぎる時間に寝たし当然か」
まだ少々暗い状態なので三時か四時くらいなのかもしれない。とりあえずやることもないので竹刀をもってランニングをしに行ってそれでも集落の人間に動きがないため素振りをして起きるのを待った。
「ふん!ふん!」
勝盛の素振りの声を聞こえてきて、目を覚ますオーサ。
「ん?何この声」
寝ぼけ眼で外に出ると勝盛がそこにいた。
「あ、おはよう!」
「お、おはよう」
そう挨拶を交わす二人。
「朝から鍛えてるのね」
「まあ日ごろから武芸を鍛えないとな。それにオーサ。君に惚れてもらえるよう頑張らないとだし」
アピールしてみたが。
「なにそれ。いいのよ族長が言ったからって本気にしなくても。昨日の決闘で分かったの私じゃあんたに釣り合わないわ。成人の証明なんてあんたにかかれば簡単よ。」
どうやら力の差に消極的になっている模様。
「それはどうかな」
「え?」
「オイはまだ命の取り合いを経験したことがない。ましてや獣を狩るなんてことは初めてだ」
「そ、そうなの?それじゃあどうやって生きて来たのよ」
いらないことを言ってしまったと後悔する勝盛。
「あーオイの部族はな日々昨日の様な決闘を行う部族でな。えーと。そう!傭兵みたいなことをだな。あー傭兵ってわかるか?」
適当に思いついたことを語りだす勝盛。わかっていない雰囲気だ。
「傭兵?」
「知らないかそうだな。力の弱い部族の代わりに部族同士の争いに代わりに戦ってあげることだ。」
誤魔化す勝盛。
「なるほどね。カツモリは戦闘民族だったのね。それじゃあ大人になった証明はなんだったの?」
「え?あーそう!戦にいってそこで生き残ったら大人として認められるんだ」
「そうなの?それは大人になる人は少なかったんじゃないの?」
「ああそうだな。だから滅んだのさ。そうあの日の戦はオイ達薩摩30対300のイトーていう部族の戦いがあって勝ちはしたものの生き残ったのがたったの6人っちゅう壮絶な戦いのせいでな」
慌てて答えて自分の好きな話で島津軍300VS伊東軍3000の木崎原の戦いを思い出し。引っ張り出してしまった。勝利した島津家の死者が260人ぐらいいるっていう話だ。
なんか勝手につじつま合わせができたので一安心する勝盛。
「そう。残念だったわね」
「ああ。滅んだのはもういいが名だけでも世に知らしめたい。薩摩の名を薩摩のすごさを」
勝盛はまっすぐと未来に期待をはせた眼差しで答えた。
「だから内に来たのね。部族同士の争いになったら頼みにするから」
フフと笑われ。カツモリの心情を理解したからか距離を置いていた雰囲気が消えたオーサ。
「おう任せろ。そして必ずお前を嫁にもらって心までもオイの虜にしちゃる!」
昨日は親の前だったのであまりアプローチしなかったがグイグイ行く勝盛。
「なによこの馬鹿!急に距離を詰めすぎよ。もう」
目をそらされるが嫌ではないようだ。
「おう朝から熱いね」
ゾーク族長が起きてきて見ていた様子。
「ゾーク族長おはようございます」
「おうおはよう」
顔を赤くしたオーサ。
「もうお父さん!からかわないで」
「わりぃわりぃ。それよりもはえーな。朝飯食ったら早速行ってこいよ」
「ええそのつもりです!」
ふんすと鼻息を立てながら家の中に戻る三人。
「おはようカツモリ。あんたも肉スープでいいだろ?」
そう言って囲炉裏のようなものに鍋を置いたもので調理をしていた。
「はい!いただきます」
ワクワクしながらスープを注いで受け取るカツモリ。器は土器の様な物だったがしっかりと穴はなくこぼれないようになっていた。
「おーおいしそう!」
簡素だが肉が多めで山草のような物で味付けされたものだった。
「よしそれじゃあいただきます」
族長がそう言って手を全員が合わせて言う。
「いただきまーす」
そしてスープを口にする。
「旨い!この肉は昨日のグーマの肉ですね」
「そうだよ。あとは山草だね。キノコが取れればもっとおいしくできたけど昨日は取れなかったみたいでね」
奥さんが答えてくれて皆楽しそうにご飯を食べている。
「なら見つけたら今日とってきますよ」
「まあ助かるわ」
ニコニコ笑顔で喜んでいると。
「族長ーーー!」
家に急に男がやって来た。
「どうした?」
「はい!どうやら見張りからの報告で早朝にうちの集落を遠くから見ていた槍を持った一団がいたらしく。」
「何!」
そうして立ち上がるゾーク族長。
「だとしたら近いうちに攻めてくるかもしれんな。なにかしら特徴でどこの部族かわからなかったか?」
「はい特徴をババアに言ってみたらどうやら槍を持っていることから二つ隣のヤーの一族だと思われるそうです」
「そうか助かった。見張りは交代制で夜中も行え。あと戦の準備もだ」
「はい!」
その話を聞いていた奥さんとオーサはたじろいでいた。
「あなた大丈夫よね」
「ああ少なくても今日すぐには来ないだろう。お前たちも心配だろうがとりあえず今日は予定通りいってこい。なーに仮に来たとしても俺の剣で返り討ちだ」
そう言いながら心配そうな顔のオーサの頭をわしゃわしゃする。
「分かりました。じゃあごはんも食べたし早速行こうかオーサ」
「うん。なにかあったら狼煙で伝えてね」
「おう。あんまり森の奥に行くなよ。森の主の機嫌を損ねないよう気を付けるんだぞ」
「うん私もついていくから大丈夫」
「ではこれで」
そう言って家を後にして昨日の二人が待っているという所へ。
「お!待ってたぞ」
ダリーが言い。
「話には聞いたがオーサも来るのか」
「何よ文句ある?」
ミギーが睨まれる。
「いや過剰戦力な気がしてな」
「私たちはグーマ狩りを果たすまではただの案内よ」
「それもそうか森の主みたいなのに合わない限りは俺らは見物だぜ」
そう言って支度をすまして大きな棒を持つミギー。
「カツモリは狩りが初めてだから獲物運びは慣れないだろうし大人数の方がちょうどいい」
オーサが説明する。
「そうなのか?そんなに強いのに初めてか。なら油断しないほうがいいな。獣ってやつは命を取られまいとすごい力で反撃するんだ」
そういって緊張感を高めるように話してくれる。
「ああ油断しないよう全力で首を落としても警戒は解かないつもりだ」
そう意気込むと。
「いや流石にそこまでしたら生きてる獣はいないだろう」
何言ってんだと引かれる勝盛。
「まあそれぐらいの気概の方がいいか。よしこっちだついてこいよ」
集落を出て行って森の中へ。森の中はだんだんと山道のようになってきた。
「この辺でも一応たまにグーマがいたりするが見かけないな」
そう言ってあたりを見渡すが何もいない。当然だが道も何もないため一人で来たら絶対迷う。どうやら他の皆は慣れていて庭の様な感覚で道を覚えている様子。
「私が大人の証明の時には丁度ここにいたね」
オーサはここで倒したらしい。
「あれ?女も大人になるのには狩りをしないといけないの?」
勝盛がふと疑問に思い聞いてみる。
「ああ女でも男みたいに戦わないといけない身分なら大人の証明をしないといけない。当然族長の娘のオーサもだ」
ミギーが説明してくれる。
「へー。ってことはオイはオーサから見たらガキがなんかアプローチしてくるみたいなクソガキとしてしか見られてないと」
自分で言って勝手に落ち込む勝盛。
「いやお前は特殊だから大丈夫だろ。それに今から倒すんだから問題なしだしな。ところでアプローチって?」
「オーサをオイに惚れさせてやるってアピールしてるんだ」
そう言うとまたも顔を赤くする。
「まだ言ってるのか!いいから集中しろ」
そう言いながら小突かれ集中する勝盛。
「結婚するって決まってるのに惚れさせる必要ないだろうによ」
「だよな」
ミギーとダリーはどうやら恋愛感情ありきの結婚なんてあるのかみたいな顔だった。
「オイがそうしたいからいいんだよ」
と言い放つと急に止まりだすダリー。
「しずかに!いたぞ」
どうやらお目当てのグーマがいたようだ。見た目は熊で人間より少し大きいくらいのサイズだ。
「よーしそれじゃあ行ってこい。グーマは俺らのことを餌だと思っているから逃げないはずだ。俺らはここで見てるから。グーマは人間を餌だと思ってるから、俺たちまで出たら狙いが分散する。お前一人なら必ず食いついてくる」
そう言って茂みに隠れる三人。
「分かった!見とけよオーサ」
「いいからいきなさい」
そう言って飛び出す勝盛。
「ぐーーまーーー」
と叫ぶグーマーどうやら名前通りの鳴き声だ。
「よークマさん薩摩にはいつの時代からか絶滅したかわからんって言われてたから会う機会はなかったが初めましてだな。いざ!サツマァ!」
そういって剣を取り出し構えて大振りに振るう。
「ぐまーーー」
肩あたりを切り裂く一撃で仕留めようと首を狙ったが外れる。そして激怒するグーマー反撃で突進を受ける。
「ぐわぁ!」
攻撃を受け木に叩きつけられる勝盛。それを見たオーサが立ち上がる。
「おいよせ!」
「だって」
「女の前で男を見せようとしてる時に女が邪魔してどうする」
ダリーが手を掴んで止めてようやく止まる。
「そうよねごめんなさい」
何とか剣で受け止めたおかげで何とか耐えれて立ち上がり構える。
これが命のやり取りかたまらん!
心臓がバクバクと動いていて興奮する勝盛。すると目の前にグーマがやって来て大きく立ち上がり倒れるように襲い掛かってくる。
「薩摩は負けん!チェストー!」
大きな爪が頬を掠りすこし血が出るが倒れこみながらの爪のギリギリの間合いの攻撃を読んで避けて首めがけて両手で大振りに振るうと。
スパァ
と綺麗に斬れる。
「なんだこの剣すごかね」
そういいながら立ち上がり。片手でグーマの頭を持ち上げてみんなの所へ。
「おう!終わったどやっぱり一撃で倒せたりはしないもんだな」
そう言って戻ると拍手が貰えた。
「初めてにしては良かったぞ」
「ああこれでお前も大人だ!」
それぞれが祝福してくれる。
「馬鹿!心配して損したわ」
オーサは朝から話をしていたので心配してくれていたようだ。
「ありがとう。ところで血抜きとかそう言ったのはどうする?」
狩りの経験がないため聞いてみると。
「ああそれならまずはこいつの左右前足のあいだからナイフを入れ、心臓と脳のあいだの大きな血管切ってそのあと皆で左右の前足を持って屈伸運動ある程度させて傾斜を利用して頭を下にする。ある程度血が出たら棒につないで腹の方を開いて心臓に近い太い血管を切る」
グーマの足を棒で括り付けてダリーと勝盛で持ち上げ腹の部分を切り裂くミギー。するとドバドバ黒い血がでる。
「これで血抜きをしながら戻る」
「なるほど手慣れてるな」
現代人だから何もわからない勝盛は素直に感心する。
「ああ解体は得意だ。ダリーが狩り。俺が解体がいつものやり口だな」
「仲がいいんだな」
「おうよ俺ら双子の兄弟だからな」
まあ名前からしてそうだろうとは思っていた勝盛。
「解体か少し興味があるな」
「お?そうか細かく言うとな重要なのはナイフの角度でな刃先を地面に向けて小さく円を動かすようにするんだ」
「思っていたより難しいな」
「まあそうだな。だがやれないと食えないしな」
それもそうだと思い異世界で解体の知識を少し覚えたのだった。




