第5話 成人祝い
グーマを倒した一行は帰路につこうとしていた。
「それじゃあ帰るか」
ダリーがそういって勝盛と一緒にグーマの死体を担いで下山しようとすると。
「ちょっと待って。キノコと山菜を採りたいの。お母さんに言われたでしょ?」
オーサが山菜を採り始めるからいったんゆっくり歩く。
「そうだったな。キノコが欲しいと言っていたから持って帰りたいが。食えるか食えないか見た目じゃわからん」
周りにはいくつかキノコが生えている。その中には、いかにもヤバそうな白い粒々のついたキノコもあった。
「お前の部族の所じゃキノコは食わなかったのか?」
ミギーに聞かれる。
「ああ特にこの辺にある白いのとか食えないんだろ?」
「これも分んないのか?これは食べると腹を下すやばい奴だ。森の生き物も手を出さないくらいだしな」
人間しか食わないと考えていたが森の生き物たちも食べているからか中々食用のキノコは見つからないらしい。
「知ってるさ。見るからにやばいしな。ハハ」
知ったかをして誤魔化す勝盛。
「さては食べて腹下したことがあるな」
ダリーに疑われた。
「まっさかー」
「だよな。はは」
そう言って笑い合っているとオーサが何か言いだす。
「あ!あれ食えるキノコだ。めったに食えないから持って帰りたいから行ってくる」
そういって少し遠くにある黄色のキノコを見つけて向かうオーサ。
「それにしても、ここら辺って……ちょっと待った、オーサ!」
周りを見たミギーが現在地の確認をしたら急に慌てて止めるがすでにオーサはキノコを確保。
「え?どうしたの?」
特に何もなく戻って来たオーサ。皆もなんで止めたのか気になってミギーを見る。
「何もなかったからよかったが一応今の木々がある場所から森の主のテリトリーだ。万が一でもばれたら森の主の怒りを買う所だったぞ」
そう言われて先程のキノコのあたりは木々が変わって少し背の高い木々が多かった。
「大丈夫よ少し入っただけだし」
「噂じゃ侵入してきたやつの匂いをかぎ分けて集落まで襲ってくるとか」
ダリーが少し怖がると。
「なによ。噂よ。前の集落は元々森の主の住処に近かったから壊れただけだし大丈夫よ」
「だといいんだが」
心配するミギー。
「よくわからんがあの木々のある所には入るなってことだな」
森の主がなにか気になるが入らないよう気を付けるようにする勝盛。
「ああそうだ。もし俺らの部族が森の主を怒らせたら他部族にも迷惑が掛かって責任を取らされるからな」
それまた大事なことなんだと再認識する勝盛。
「分かった。とりあえず帰ろう」
勝盛たちはそのまま下山し、集落へと帰還した。
しかし――
「GURUUUU」
なにやら先程とったキノコの所に匂いを嗅いでいる大きなクマの様な存在がいたのであった。
帰還した一行はまず初めにミギーとダリーが声をあげて集落中に言いふらす。
「戻ったぞー!カツモリがグーマを狩ったぞこれで正式に大人だ」
「カツモリ サツマァが大人として武勇を見せたぞ!」
二人の声を聞いてわらわらと人が寄ってくる。
「おお。さすがはオーサに勝っただけはある」
「これで俺たちの仲間だな!」
「おめでとう!」
集落の人々が祝福をしてくれる。
「どうも!ぜひみんな食べてくれ」
カツモリも自信満々に答える。
「おう帰ったか!早速解体してもらえ。今日は成人祝いだ」
ゾーク族長が迎えに来てくれてグーマは早速集落で解体が得意な者に渡った
集落全体もお祝いムードとなった。その間、近くに水場があると言われ、そこで体の汚れを落とした。戻ると夕方になっており集会所の様な広場にやってきた。そこで皆でグーマを食べるのが祝い方らしい。
「それでは今この時をもってカツモリ サツマァを集落に受け入れ。我が部族として迎える。そして同時に俺の娘オーサと婚姻を認める。それでは乾杯!」
「「かんぱーい」」
ゾーク族長が乾杯の音頭を取り、皆から祝福された。族長は専用の石の椅子に座りまるで王様みたいだ。因みに飲み物は果実で作ったお酒の様子だったが甘い感じでおいしかった。
「おう!お前は家の子を娶ったんだ。隣のこの椅子はお前のだ。」
族長の椅子より少し小さいが椅子に座れるのは族長とその息子だけらしい。
「それではありがたく」
「家に置いたままで邪魔だったしな先代の頃俺も座ってたし懐かしい。やっぱりその椅子は強い男が座るべき椅子だな」
遠慮なく座ると族長がうんうんとうなずきながら話す。すると隣にオーサがやってくる。
「成人おめでとうカツモリ」
「オイは成人よりオーサとの結婚がうれしい」
そう言うと照れてしまうオーサ。
「ちょっと皆も見てるのに」
集落の皆がニヤニヤしてみてくる。
「あついねー」
「よっ!次期族長」
ヤジが飛んでくるがお構いなしだ。
「式とかは挙げるのか?オイはこっちの部族のやり方に合わせるが」
「式?」
どうやらわからない様子。文化がないのかもしれない。
「結婚式と言って皆にお披露目する行事の祝い事だ」
「ほぉーそっちはそんなことをしてるのか。随分と余裕があるこってぇ」
族長が話に入ってくる。
「そうねうちの部族じゃあ成人と同時に結婚するのが大体だから結婚してもわざわざ祝う行事は行わないわ」
「そうか。でも一応聞くが結婚式をやりたかったら言えよ」
「いいのよ別に今が結婚式みたいなものなんだから」
決闘で負けて以来勝盛は一人でなんでもできる男でオーサは必要とされないと思って落ち込んでいたが。今朝の話からとグーマ狩りで印象が変わり態度が柔らかくなっていた。
「もしするなら。大きなグーマを狩りにいかないとね。ハハ」
「もう馬鹿。命は大事にしなさいよ。狩りで木に叩きつけられたのも忘れたの」
「そうだったな。死んだらオーサを愛でれん」
「ちょっともう酔ったの」
椅子に座ったままオーサの腰に腕を回して抱き寄せる勝盛。
「よっ!いいぞ次期族長」
「見せつけるねー」
集落全体に見せつけるようにフンスと鼻息を立てながら威張るカツモリであった。オーサも嫌がるかと思ったが満更でもない様子で。族長が取り決めだからかはたまた受け入れてくれたのかわからないが離れることはなかった。
「一応皆に挨拶がてら自己紹介しろカツモリ」
族長に言われあいさつをする勝盛。
「オイは勝盛 薩摩!この度オーサを娶った。得意なことは武芸だ。皆今後ともよろしく。それとオイが狩ったグーマおいしくいただいてくれ」
「いいぞー」
「オーサはこれからオーサ サツマァか」
「うー俺がいつかオーサに勝って嫁にしようと思ってたのに」
集落の人々が色々と反応を示し。次は集落全員の挨拶周りだ。自分は誰の子だと説明して何の仕事をしているのかなどを教えてもらい夜が更けていったのだった。勝盛は慣れぬお酒をどんどん飲まされ集落の人々もその場で眠ってしまうのだった。




