前編
――なぜ、時間に従わなければいけないのだろう?
なぜ定められた場所で、定められたように。
――だったらなぜ、様々な関係は時が来たら「解散」するのだろう?
頭のネジが外れてしまっていると思われてもいい。多くのことに執着しない代わりに、気になる疑問は絶対に手放さない、至極面倒くさい奴が秋葉 ここあという元女子高生だ。
そんな私の意思に呼応するかのように彼女は今、すべてをブッ壊して創造している。どんな力で何をしているのか全く検討もつかないけれど、窮屈だった現実が少しでも再構成されるのなら……それは乗っかっても良い車ではないか?
「でさ〜お肌が最高に潤っちゃってっ!もう保湿クリームとかいらないんだよっ!すごくないっ?」
私の目の前には、もはや自分と似ているではなくほぼ同一個体の秋葉 葉子(17)が自宅で朝食のミニトマトをほおばっている。所作や表情等は違えど、まるで鏡を見ながら食事をしているようで妙にこそばゆい。
そこまで動揺していないのは、ふんわりとした揺らぎの中に「これまでの私の母」も重なっている感覚があるからだろう。
――「過去」も「可能性」も共存している優しい世界。
面白いし、良いことだ、とみそ汁を飲みながら思う。
「あ、ここちゃんもトースト食べる?」
手の平から突然生み出した、焼きたての1枚を手渡される。今朝の朝食材料もすべてこの女から創生されたものだ。豊穣の神なのか?
「すごいでしょ〜?尊敬しちゃうでしょ〜?いいよいいよ〜ここちゃんができなくてもね、私がパンでも何でも恵んであげるからねっ♪」
同じ(17歳)に煽られて、やらないわけがない。
私はテーブルの上に大量の札束が並べてあるイメージを繰り返した……が、何も生まれない。
「ざ〜んねん。これはねぇ、愛がないとできないんだよっ♪」
両手で頬杖をついて、この上なく楽しそうにこちらを見てくる。ここちゃんはまだまだだなあと笑って頭を撫でてくるので、うるさいと振り払う。
私にだって愛はあるし。と反論したかったが、実際この女と比べると自信はなかった。
全く経験が足りない。わたしを受け取ろうが不要だろうが構わない、とマイク片手に愛を配っていた元アイドルであり、それでいて母親のこの人に勝てるわけがない。
どんなに地位や富があろうとも、若さがあろうとも、大切なのは精神だ。体験によって得た「強さ」だ。彼女はそういうものを持っている。私はまだ、持ち合わせていない。
「ふふっ、そっくり。双子になっちゃったねっ♪おもしろいねっ♪」
葉子は片手に頬を置き、空いた手でいくつもハートを作って投げてきた。色とりどりのLOVEがシューティングゲームみたいにふわふわ飛んできて何とか避けるけれどすべては回避できず、そのうちの一つが前髪に触れて弾けて、私を好きにさせるような香りを放った。
負けじと必死に星を描くけれどやはり何も出てこない。あははっ!と盛大に笑われて腹が立つから、YouTubeで葉子のライブ動画を見ることにした。
「あーっ!……ふ〜ん、それ見ちゃう?見ちゃうんだ〜へぇ〜?」
途端に彼女のテンションがおかしくなる。これが唯一の弱点だったのだ。
『……有難うございます。こうして皆さんと一緒に、この武道館に立つことができて、本当に本当に光栄です。』
「やめてぇぇぇっ!」
葉子はそのあまりに強烈な個性故に、本来の性格を大幅に抑えたほぼ真逆のキャラクターを事務所から常に要求されていた。カジュアルな水色のライブTシャツを着て、凛々しく静かに微笑む歌姫「HISUI」は、目の前の人物とはまるで別物だ。
ものすごい速さでスマホを取られかけたが、そうはさせない。確かこんな事を日常的にやっていたような気もしないでもなくて、私が本当にムカついた時の常套手段だったような記憶もある。
「やだぁっ!恥ずかしいからやめてよっ!」
途端にプツ、と、YouTubeが落ちてしまった。仕方なくもう一度起動しようとしてもアイコン自体が消えている。……葉子、恐ろしい女だ。あまり調子に乗ると自分もこの世から消されかねない。
「いいもん!私、作業で忙しいからね!昨日はすっかり忘れちゃったから、お詫びにサプライズ生放送しようっと♪」
17歳のぷんぷん顔でくるっと、そのまま奥の自室へ行ってしまった。興味の移り変わりの早さは幼児並みだ。
――彼女はアイドル引退後、VTuberという配信業に携わっていて生来の明るいノリを生かしている。その前からも歌系のYouTubeチャンネルを開設しており、たとえ正体を隠していても歌を歌えば分かる人には当然分かるので中身が実質HISUIだという事は、ネット界隈では周知の事実だ。
ここちゃんには秘密だよ!調べちゃダメだからね!と釘を刺されていたけれど、周囲のそれに詳しいクラスメイトから知ろうとせずとも情報が入ってきていた。
アイドルデビュー当時の葉子と声も何もかもそっくりな私の周りでは常にHISUIの娘ではないか?というような事ばかりが取り巻いてその度に面倒なので否定していたのだが、葉子のVTuber活動が始まって再び、それに関して私は本人ではない、全面的に知らない分からないとさらにはぐらかし通す作業が増え、とにかくも怪しい人生を送っていた気がする。
確か配信時間が昼と夜で、学校の昼休みにこっそり覗いたりしていたような……ちゃんと正確に思い出せているのかは謎だが、微妙に学校関係の記憶が適当なのは当然だろう。そういった複雑な環境があったということと、後はまあふつうに、勉強するあの空間が嫌だったからだ。
……とにかく。まだ確認してはいないが、インターネットは恐らくこれまでと同じような現実がもう続いてはいないのではないか?と思う。
昨日の街の様子も異様で、誰も人形のようにゆっくりと歩いていたしファミレスの店内も静かで違和感だらけだった。
若返った葉子が試しにやってみようと言うから、17歳2人で店員にワインボトル3本くださ〜いと言ってみてもおかしいことに何の反応も確認もなく。妙だ。私は飲まなかったが。
今の現実がそんなだから、ネット内も同じだろう。そちらも「バグったまま」となっている可能性は高い。昨日聞いた謎の説明を思い返すと、やはりキーとなるのは今の記憶の存在だ。というかそこしかキィてなかった。
今の記憶とは……名前だ。これを思い出すことによって「創造」という魔法をはじめて使うことができるのかもしれない。もし、そうだとすると逆パターンもどうなるのか察することができる。その人が本名を取り戻せないのなら――
ピンポンピンポーンと、誰かが急かすように連続でインターホンを鳴らした。と思ったら、既に玄関先で誰かが立っていてすすり泣きが聞こえる。覗き穴から見た感じでは私と変わらない年頃の女性だ。
ゆっくり扉を開けると、いきなり彼女がすがりついてきて泣き喚いた。
「うわぁぁ葉子ざぁんっ!!ごめ゙んなさぁいっ!!……ぢゃんと土曜日って約束したのに……なのにどうしてあんなおかしなことに…………ぐすっ、葉子さんという神が在りながら私、丸一日どこかの知らない世界で知らないお姉様と契りを交わしたり、知らない先輩と水族館でデートしちゃったり……なんなんですか私、最低過ぎですっ!!!本っっ当にごめんなさいっ!!!」
言葉を一通り吐き出すと彼女は懇願するように私を仰いだ。その途端に目が見開き、その場からパッと離れて
「ぁ……ぁ…………」
声にならない声が彼女の喉から漏れている。あの、葉子ではなくここあです、と何か言われる前に訂正するが、かなりそっけない風になってしまったので印象は良くないだろう。仕方がない、私は母のようにはできない。
「こ、こあ……さん?」
そうです、と、またも冷たいようになってしまった。
おい自分!できなくても少しは向上しろよ!と、今度はあのライブ動画を真似ることにして礼儀正しく「もしかして……母のお友達ですか?いつも付き合っていただいて、本当に本当に有難うございます。」と胸に手を当てて軽くお辞儀する。
「……HISUI姫……」
すると、急に恍惚とした表情に変わり。おや?
これは……きっと……まだ夢ですよね……?という小さなつぶやきと共に、炭酸を激しく振るかの如く身体を震わせて――
「す、好き…………好きぃぃぃーっっ!!!!!」
勢いよく突進ハグを食らった。そのまま玄関の床に倒れこみ、強めにぎゅっと抱きつかれたところで
「あおちゃんっ!!」
なぜか少し怒り気味の「本物のHISUI」がそこに登場し、よく分からないが修羅場みたいな雰囲気になった。
「よ、葉子さん!?あれ?若くな……って……?」
あおちゃんと呼ばれる女性は、双子状態の私と葉子を見比べてから石みたいに静止して。とりあえず私がかけられる言葉は……と考えていたら、葉子が代わりに告げた。
「あおちゃん、これ……夢じゃないよっ?」
「え……?」
さらに鏡を持ってきて見せる。
「ほら!あおちゃんも若返ってるよっ!」
「え……ええええーっ!?!?」
葉子は、小声で「推しが二人……尊…」と惚けている彼女を二人がけのソファの片方に座らせる。そして手を握って謝罪をした。
「ごめんねっ?私もおかしくなってたから買い物行くの忘れちゃった!だからぜんぜん気にしないで大丈夫だからねっ?もう泣いたりしないでねっ?」
おかしくなったというか、元からおかしいし今もおかしいの間違いでは?と心でついツッコミを入れていると、狂本人が突如、特大爆弾を落としてきた。
「けっこう遅くなっちゃったけど紹介するね!絵莉戸 あおいちゃんだよっ♪同い年だけど私のアイドル時代の後輩で〜、えーと、ここちゃんのもう一人のお母さんかなっ?」
「あっあの姫っ!?私は『推し』として、できる事をさせてもらっていただけの者ですからね!?」
「あおちゃんはねぇ、生まれてすぐの時ここちゃんの事を見てもらってたんだよっ♪お金もずっと助けてくれたし、このおうちも半分以上あおちゃんが買ったんだよっ」
畳み掛けられる連続近距離爆撃で、今度は私が石化した。
生活面において葉子がいつも「親しい知り合い」から相当な貢ぎ……援助を受けているという話は本人から聞いてはいたが……
それからふつうに考えれば、この常識破りで常識知らずの女がまともに子育てを全うできたのか?と疑問を持つべきだったわけで……
パズルのピースがすべて埋まった。つまり、このあおいさんが育児や教育費やWifiや、生活していた家のあれこれすべてを私に恵み、愛を施してくれていた女神。真のお母さんだったということなのか。
「そうそう、母乳が出ない〜って時に、おっぱい手伝ってくれたんだよ?あおちゃんのもやってみたら出るかもよ〜って、ま、出なかったけどねっ!」
「よ、葉子さんそれはっ!!」
あおいさんもとい、花の女神はこの上なく赤面した。おい!出るかもよ〜じゃないっ、彼女に何をやらせているのか。二重の恥ずかしさが絶えず襲いかかってくる。
……とりあえずお金に関する事は聞いていたけれど、そこまで援助をして頂いていたとは。
このこと、全く把握できていなくてすみませんでした、あの……何から何まで本当に色々としてくださりありがとうございますと、できる限りの言葉でお礼をしたところ、とても恐縮して手を横に振られた。
「いえいえいえいえ、これはすべて私がしたかった事なので。……それとさっきはごめんなさい、こんな形であんなこともしてしまったんですけど……本当はね、ここあさんに会いたくはなかったんです。会うべきではなかった……私は葉子さんとここあさんの幸せを傍から望んでいるだけですから。ただ、お二人が幸せであることを願っているだけなんです。」
ふんわりとした微笑みの花びらが宙に舞い、リビングと私の頬に旋風が吹き抜けた。神とはあなたのことか。
私はあおいさんを尊敬の念で見つめていた。一体どんな志があればそこまで人に尽くすことができるのだろう?「推し」とは言っているが、彼女のやっていることはそれを超えた何かだ。
「ちょっと!……ここちゃん?あおちゃんは私のだよっ!あげないよっ!」
「ひゃあ!!ひ、姫っ!!」
葉子はむっとして、隣にいる彼女をもっと側に引き寄せた。まったく、自分のだとかあげるだとか、女神をそんな気安い配り菓子みたいに言うんじゃない。
「私の方がほんものだも〜ん!ここちゃんは、に・せ・も・の。ねっ?あおちゃんっ?」
先程から嫉妬ビームがやけに激しいけれど、ははあ、さては葉子め、偽HISUIである私に向かってあおいさんがLOVE発動矢印するのが嫌だからこれまで曖昧にしていたな?と勘ぐる。買い物や外出で彼女の車に乗る際も、まるで私から避けるように家から何となく離れた場所で合流していたのを思い出す。
「もっもちろん姫は姫ですよっ!えと、その……」
女神は困ったように、ちら、と私を見る。
こんなのに構わなくていいですよ、いつもご迷惑をかけてすみません。と母の数々の無礼を真摯にお詫びすると、あおいさんは地平線の夕陽を眺めるような眼差しに変わり
「はぁ……尊……」
「あおちゃんっ!!?」
「……はっ!!いやっ違いますっ!!違わないかもしれないけど違くて!葉子さんは神です!永遠に最推しですよ!私を照らす太陽ですしっ!」
「ええ〜?ここちゃんにぽぉ〜っとしてたけどぉ?」
「それは……ちょっと懐かしいから、なのかな」
彼女はうつむくと、少しかすれ声で話し出した。
「……やっぱり嬉しいです、こうして会えて。昔、アパートに一緒にいた時はここあさん本当に小さくて……私の事、覚えてもらわないように3歳になって会うのをやめて、葉子さんがこの家に移った後も『元気かな?』って思ってたんです。だから、正直に言えば嬉しい……ここあさんがこんなに大きくなってたから、すごく素敵になってたから……」
目から美しい水が一筋すっと流れて。それから彼女は優しく微笑した。
「葉子さんには、私が声優のお仕事をしていた時に精神的な面で色々救って頂いたので感謝しきれません。アイドルとしても一人の人間としても本当に憧れで……私が葉子さんにできた事は本当に大したことじゃなくて、まだ返せていないものもたくさんあります、というか一生返しきれないくらいのものを頂いてしまっていて…………本当に大好きです。」
流れるように実質的告白のようなものをした後、彼女は慌てて「あっ!推しとしてですよっ!推しとして好きなんですっ!」と、また手を横に振ったが
「私も大好きだよ〜っ!!あおちゃんっ!!結婚しようっ!!」
勝手にプロポーズと受け取った元HISUI(17)は、あおいさんの首に抱きつき狂喜した。
私もうなづく。いやまあ、これはどう見てもLOVEだよね。良き愛の形じゃないか。と、グラスに入ったウーロン茶を口に含もうとしたところで
「じゃあ一緒に住もうよっ♪そろそろねっ?」
「ちょ、ええっ!?」
飲み物は口と服に少しこぼしただけで済んだ。なるほど、私とあおいさんが名前を取り戻して今ここにいる理由が分かってくる。葉子は、これがしたかったのだ。
「だって、この家を買おうって決めた時に、いつかここあと一緒にね?って約束したじゃん。」
「あれは姫が勝手にそう言って……確かに、私がおばあちゃんになったらそういう事もあっても素敵ですよねとは言ったと思いますけど……そんな、無理ですよ??アパートに葉子さんとここあさんが移ってきたあの時は例外のことでしたし……とにかくお、推しと同居するなんて、あっあり得ませんからっ!」
「もぉ〜頑固なんだからぁ。あおちゃん?私、おばあちゃんまでなんか待てないよっ?それに、おばあちゃんにもならないっ!そんなの嫌だもんっ!みんなでずっと楽しいことしたいっ!」
「そ、そういえば……どうして私、若くなってるんだろ……」
これが母の願望だからなんでしょう、あおいさんの想いも含まれていると思いますよと、彼女にチョコまんじゅうを勧めながら持論を述べる。
既にここは新しい現実であり、なおかつ過去も重なっており。その中で「名前」を思い出した人から創造、つまり可能性を混ぜて行くことができるという仕組みになっているからなのでは?母がそれを先導して行っているからでは?というやはりネジの飛んだわけの分からない話を
「……そうなんですね。だからあの時、見知らぬお姉様の夢を見ていたら葉子さんの声が聞こえてきた気がしたのかな……?」
と、まともに聞いてくれた嬉しい。
やはり、この家に彼女は必要だ。私一人であれは手に負えない。目の前に佇む女神の手を握り「どうか、一緒に住むことを検討して頂けませんか?私からもお願いします」と頼み込んだ。
彼女はほんのり顔を赤らめながら「でっでも……!やっぱり無理ですよ、そんな……」と渋っている。
「お金と食べ物なら大丈夫だよ!ほら、見て見て〜♪」
まるでテンションが場違いな葉子は、その場で札束やバウムクーヘンを生み出しはじめた。自ら物質を創生できるということは、この世とそれからあおいさんが今までより自由になったということだ。
「えええっ!?姫っ!!す、すごい!!や、やっぱり神だったんですね!?」
誰でもそんな反応になるかと思うが、微妙にズレていた。少し天然なのかもしれない。
「すごいでしょっ!愛があればできるんだよっ!だからみんなでずっと、この家で一緒に暮らそうよっ♪」
葉子の放つ喜びが空間へ放出された。二人掛けのソファが三人掛けにチェンジし、リビングはより広くなり、2階にもう一つ部屋が足された気がした。階段を上がるとやはりそうなっており、私の部屋の隣に『205』という金のプレートのついた黒い金属製のドアが新たに加えられた。
「わ、私のアパートとそっくり……ど、どうなってるんですかこれっ??」
あらかじめ持っていた鍵で解錠し、あおいさんが恐る恐る中を覗くとなぜか勢いよく閉じてこちらへ向き直す。透き通るような森の芳香が扉の隙間から一瞬流れてきて少しときめいてしまった。
「本物の私の家じゃないですかっ!!あっちょっと!中はダメです姫っ!!」
葉子がそれでもドアに手を伸ばし入ろうとするのをあおいさんは必死に阻止する。私も気になるのだけれど無理は言えない。
「え〜〜?あおちゃんち見たい〜」
「そんなのできませんって!推しに自分の家の中を見られるなんて耐えられませんっ!」
「昔は一緒に住んだのにさ〜いいじゃん〜」
「それはそれですよっ!あの時も色々でしたから!」
だったらドアを消してしまえばいいのにと思う。そこは妙にマジメなのかそれとも葉子の優しさなのか。
しかし発想は天才で柔軟かつ大胆だ、まさか家ごと連結させるとは。「同居」になっているのかは分からないが、ひとつの家の中に含まれているのだから「一緒にいる」とは言えるだろう。
「これで住めるねっ♪私はあおちゃんとお部屋をひとつにまとめてもいいんだよっ♪」
「そんな事したら私が天へ召しますから!それにまだ住むとは……もう、どうしたら……」
私も頭を抱えたい気持ちだから同情する。しかし既にこの女が「現実の創り手」だとすると、その神に好かれたという時点で逃げ場はないのだろう。それが嫌なら彼女から「要らないもの」と放棄される事でこの世から自動的に消えるという選択をするしかない。
困り顔の彼女の両手を握って落ち着かせる。あおいさん大丈夫です、私も母が何を言ってるのか昔から今まで全くもってさっぱりですからあなたと同じです、これから何があっても2人で一緒に乗り越えて生きていきましょう、と伝える。
「えっ??……はい、あの……ええっと……」
「ちょっとここちゃんっ?私はおかしくないよっ!」
あおいさん宅のドアの覗き穴から部屋の中を見る不審者のどこがそうではないのか。
迷える女神は、繋がれた自分の手をじっと見つめながら湯気を出すような顔をして
「あの……ここあさん。」
一緒に暮らすこと、何とか考えてくれるようになったのかな?とホッとする。このまま私一人では本当に正気を保てないだろう。あおいさんは、決心した面持ちでショルダーバッグの中をごそごそ探し、そして取り出して
「もし私とで良ければなんですけど……一緒に、す…………スマホでツーショ、撮ることできたりしますか……?」
「あおちゃんっ!!?」
つ・づ・く




