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「合計四千四百円になります」


え、え、え……下着ってそんなに高いの!! 値段に呆然としてしまった。でもここまで来たら払うしかない。


袋を持って店から出ると、外で待っていたクスのところへ向かった。


「どうだったビュウ」


「た……高すぎるよクス。貯めてたお金が半分吹き飛んだ」


「まあそう言わずに。消耗品だと思えばいいよ」


「うん……そう思うようにする」


「あの、荷物持とうか、ビュウ」


「大丈夫だよ、これくらい平気」


でもクスは結局俺の荷物を受け取った。


「女の子に荷物持たせるのはおかしいから。俺が持つよ」


「えっ、ちょ……!?」


思わず声が出てしまった。


いや、俺は男なんだけど。今たまたま体が女なだけで、そこまでしなくていいのに。 急にそんなことを言われて、なんとも言えない恥ずかしさが込み上げてきた。


それからゲームセンターコーナーへ向かった。クレーンゲームを十回やって、パンダとライオンの二体をゲットした。お金はそこそこかかったけど、取れたからよかった。


「ありがとうビュウ、大事にするよ」


「き、気にしなくていいよ。取るの手伝ってもらったお礼だし……」


「ねえクス」


「何、ビュウ?」


「家に帰らない?」


「いいよ、帰ろう」


話が終わってゲームコーナーを出て、一階へ降りてモールを後にした。人が増えてきていた。もうすぐ昼か。こんなに長くいたのか。本屋コーナーにも行けなかったし、次回だな。


そんなことを考えながら歩いていたら、また俺の手がクスの手のそばに来てしまった。


そういえばクスが、繋いでもいいって言ってたな。


そのままクスの手を握って歩いた。


「ねえクス、クス」


クスは答えなかった。何かを考え込んでいる顔だ。


「クス、大丈夫?」


「あ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた……」


「なんで泣いてるの」


「風が目に入っただけ。目が乾いて」


「そっか。何回も呼んだのに全然返事なかったんだけど」


「ごめんな、ビュウ。心配かけて」


「ま、まあ気にしないで。帰ろうよ」


モールを出てしばらく歩いて、家に着いた。


パンヤーに話すしかないか。


「おかえり第二弾。あーあのクスって子ね。でビュウはどこ?」


「えっと、ビュウなら……」


「ここにいるよパンヤー……」


クスの後ろに隠れていたところから、一歩踏み出した。


「えっ!?マジで女になってるじゃん!!すごいすごい、ドラマの中だけかと思ってた。本当にあるんだ」


全部話した。最初パンヤーは信じなさそうだった。じろじろ見てくるし、胸まで触ってきた。三人でリビングに座って、クスが前に俺に見せたのと同じ小さな風の力をさりげなく披露した。パンヤーは驚いて言葉を失っていた。最初は話すつもりはなかったけど、話してよかったと思う。それからパンヤーはクスにこれまでのことを根掘り葉掘り聞いていた。不思議なことが好きなんだろう。あと少しで大騒ぎになるところだった。


そのあとパンヤーが俺の買い物袋に目をやった。


「下着買ってきたの?」


「なんでわかるの?」


「袋見ればわかるよ。しかも高いやつじゃん、mGo」


「mGoって何?」


「下着のブランドだよ。数枚でも値段するのは当たり前。うちのお母さんなんか六枚買って一万円以上したもん」


ブランドものだとは知らずに買ってたのか。気をつけないとあっという間にお金がなくなる。


そう思ったら少し怖くなった。


パンヤーが購入品を確認してから台所へ向かった。俺とクスの二人きりになった。


するとクスが突然俺を抱きしめてきた。目に涙が浮かんでいて、耳元でこう言った。


「ビュウ、あのとき俺たちが抱き合ったとき、すごく温かかったよ。俺、ビュウに抱きしめてもらえて嬉しかった。それに、俺はビュウを守りたい。またあんな危険な目に遭わせたくない。あのオーク族のときみたいに……もう少し遅かったら、どうなってたかわからない。気をつけてくれな、ビュウ。俺は……好き……」


「ご飯できたよー!!」


抱きしめられたまま話していたところに、パンヤーの声が響いた。ドアが開く。クスは話を止めた。俺も何も言えなかった。クスの涙が俺の首筋に落ちた。


突然どうしたんだろう。クスが踏み込んできたのに俺はまだ心の準備もできてない。パンヤーも来てしまった。クスが言いかけたこと、何だったんだろう。


顔が真っ赤なのに、顔を背けることもできない。頭の中がぐちゃぐちゃだ。


「お邪魔だったね~~!!続きはどうぞ!」


パンヤーは言い終えると勢いよくドアを閉めた。


ドアが閉まってもクスはまだ俺を抱いていた。体が熱くなってくる。クスの顔がゆっくりと俺の首のほうへ近づいてきた。そして顔と顔が近くなった。


「ごめんな、ビュウ。こんなことして。ちょっと早すぎたと思って」


ほとんど唇が触れそうな距離でクスが謝った。


「それは……」


言葉が出なかった。頭の中がぐるぐるしていて、何も考えられない。


俺たち、もう少しでキスするところだったのか……


クスがゆっくりと顔を離した。抱きしめていた腕もほどいた。パンヤーを呼び戻して、三人でしばらく無言で座っていた。


それからクスが立ち上がって俺を外に呼んだ。急に抱きついてごめんと謝った。俺は怒ってないよ。むしろあの感覚が嫌いじゃなかった。クスは家に帰ると言って、並行世界と明日学校でまた会おうと言った。


俺は玄関まで見送りに出た。


「気をつけてなクス。いつも心配してるよ。明日、シリーン先輩のところにも一緒に来てくれな」


「うん、気をつける。心配してくれてありがとな。明日行くよ」


クスが家を出て行った。後ろからパンヤーが小さく咳払いして

「話があるんだけど」

と言ってきた。


何の話だろう。


パンヤーはお母さんが帰ってきたらどうするか聞いてきた。俺は全部話すつもりだけど、まだ帰ってきてないと答えた。


そしてパンヤーが本題を切り出した。


「ビュウ、クスと付き合ってるの?」


聞いた瞬間、心臓が跳ね上がって顔が真っ赤になった。なんて答えればいいかわからない。最初に会ったのは並行世界で、クスに助けてもらったのが始まりだ。改めて考えると確かに不思議な関係だ。こんな質問されるとは思わなかった。


「ビュウ、あのイケメンのクスと抱き合ったことあるんだよね」


「うん……あのオークに偽物のクスが入れ替わったとき、本物のクスが助けに来てくれて。あのとき本当に怖くて。でもクスが「ここにいるから」って言ってくれて。あの抱擁、すごく安心したし、守られてる感じがした」


「そっかあ。すごいじゃん」


「さっきから何回も"すごい"って言ってるね」


「だってすごいことじゃん。これが普通だと思う?」


それはそうか。初めてあの世界に飛ばされたときも、本当にすごかったし。


するとパンヤーがまた俺の胸を見て、触った。


「あたしのより小さいじゃん」自分のほうが大きいと自慢してきた。本当に憎めないやつだ。


「他に話すことないの、そんなこと自慢してきて」


自分はどうだっていい。俺のサイズはかわいくていいと思ってるから。


「まあ、他に話すことも思いつかなくて。さっきのがびっくりしすぎて。まさかあなたたちが今にも……」


「ち、違うって。クスはただ……気分が悪かっただけだよ」


「ほんとにー???」


「ほんとだよ。じゃあ何もないなら部屋で休んでくるね」


「オーケー、ゆっくり休んで。デートから帰ってきたんだもんね。あたしが家見とくから」


部屋に上がって、扇風機をつけて、ベッドに倒れ込んで抱き枕を抱いた。


なんなんだろう。あのときクスが踏み込んできたとき、体が熱くなってゆるんで……


そう思ったら自然と抱き枕をぎゅっと抱きしめていた。なんとも言えない感情が胸の中で渦巻いていた。

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