23 「パワーテスト」
「もうかなり遅い時間だ。お前たちも休め」
「大丈夫でございます。テンツ様のためなら眠らなくても平気です!」
「そうか」
「もちろんです!でも私が寝てしまったら、オスカーの胸でも触っていいですよ」
ちょっと待って、なんでそういうことになるんだ。ハンスのせいで気が休まらない。でもテンツの言葉に従って、僕と彼女たちは休むことにした。僕はテンツのいる場所から遠くない場所を選んで横になった。ドレークは馬車の後ろを選んだ。ハンスは枕と毛布を持って僕のすぐそばに来て横になった。
その夜は静かで、テンツが灯した焚き火の音だけが聞こえていた。僕は外套を脱いで、今朝もらった緑の服だけを着て横になった。服は窮屈ではなかったけど、横向きに寝ると胸のあたりが不思議な感じがした。男のときは横向きが好きだったけど、女の体だと少し重みを感じる。でもそこまで問題ではなく、それなりに眠れそうだった。
「ビウ……」
突然ハンスが小さく呼びながら軽くつついてきた。
「な、なに、ハンス」
「一つ聞いていい?あなた、どうして森で倒れてたの?」
「森で倒れてた……?」
「どこで会ったって聞いてきたから、森で倒れてたって答えたじゃない」
「それは……私自身もどうしてそこにいたのか全然わからないんだよね」
「そうなの……」
「うん」
「じゃあ、恋人はいる?」
「え……!?」
ハンスに聞かれた瞬間、両腕で横向きに寝ている僕をぎゅっと抱きしめてきた。
「ちょ……ちょっと待って、ハンス、何をするつもりなの」
「答えてよビウ……恋人いるの?」
「恋人って……好きな人ってこと……」
「そう」
「実は……」
まずい。ハンスに聞かれたこの質問、クスのこととあの夜のことが頭をよぎる。
「好きな人がいて……もう、一線を越えてしまったんだよね……」
それでも正直に話してしまった。
「えっ!!越えちゃったの!?」
ハンスが飛び起きて大声を上げた。誰も怒りに来なかったが、テンツが人差し指を口に当てて、夜中に大きな声を出すと獣族に気づかれるぞと無言で注意した。
***
翌朝
僕はまだ並行世界にいた。元の世界には戻っていない。テンツに個別で話があると呼ばれる前に、両手を合わせて「この言葉を理解せよ」と唱えた。いつもの魔法陣が現れた。
「……」
テンツは無言のまま、近くの森の一角へと歩いていった。昨夜のことで怒っているのかどうかわからない。表情からは何も読み取れなかった。
頭の中は不安でいっぱいだった。これが「ひどい目」じゃなければいいけど。
「ここでいい。オスカー、もう一度力を見せてくれ」
「力? メジックを使えということですか?」
「そうだ。昨日の力はなかなかだったが」
「でも?」
テンツはそれ以上言葉を続けなかった。前に出て、地面に向かって手を広げた。白い魔法陣の光がテンツの手から放たれた。白い光がゆっくりと壁のような形に変わっていき、やがて光が消えると、目の前に白い壁が現れた。見慣れない文字のようなものが刻まれている。シーリン先輩のものとも、アイアンプルのときのものとも違う。
「私から見れば、お前の力はまだ十分ではない。オスカー、この壁が見えるか。これは聖職者たちによって作られた耐久の壁——テシャドヴォルだ。これを壊すには、この壁が耐えられる以上の破壊力が必要になる。試しにこの壁を壊してみてくれ。できるか?」
「や……やってみます」
まずこの壁を理解しなければ。この世界の聖なる物体だ。力を当てる箇所を見極める必要がある。少なすぎれば傷もつかない。それなりの魔法の量が必要になるだろう。
テンツが僕を壁から数十歩離れた位置まで連れていった。
止まった場所で、何をすべきかはわかっている。意識を壁の一点に集中させる。ジタ波が動き始めた。糸状の波が壁へとじわじわと近づいていく。心を落ち着かせる。手に力を流し込む。紫色のブレスレットが光り始め、杖も手元に現れた。すべてがスローモーションになる。アイアンプル
—頭の中でその形を描く。今だ。
ふっ!
アイアンプルが壁に向かって素早く飛んでいった。
壁にひびが入った。もうすぐ壊れると思った。だが壁はすぐに元通りになった。驚いた。
「効かなかったみたい……」
そう呟いた。
「威力と破壊力が足りていないぞ、オスカー」
「わかりました。もう一度やります」
深く息を吸い込んだ。一回目より多く力を流し込む。杖のオレンジ色が強く輝き始めたが、紫色は少し落ちた。今度はアイアンプルにエアボールを組み合わせる。破壊範囲は休憩場所まで届かないように調整する。
前回エアボールを使ったときは素手だったが、今は杖がある。それに奇襲でもなく時間もある。力を十分に溜められれば、威力は確実に上がるはずだ。
アイアンプルとエアボールの球体を合わせた形を頭の中で描く。より強く、より速く回転させて、解き放つ速度も上げる。しばらく時間をかけて、杖に力を集めていった。オレンジ色の光が眩しいほど輝き、今にも爆発しそうなほどに膨れ上がった。
実戦でこれだけ時間をかけていたら、先に倒されていただろう。実戦向きではない。今回は壁を壊すためだからいいとして。ゲームで最終奥義を溜めてラストシーンで放つ感じに似ている。
「ではいきます、テンツ様」
「やってみろ」
放てる。
ふゅっ ドスッ!!
アイアンプルとエアボールが合わさったそれが手元から飛び出した瞬間、反動で吹き飛ばされて地面に倒れた。
「いた……うぅ」
そのときテンツが手を差し伸べながら少し微笑み、壁の方を指差した。
「もう少しだぞ、オスカー」
二回目も失敗か。まあいい、こだわりすぎないようにしよう。
テンツの手を掴んで立ち上がり、また杖を握り直して壁に向き直った。
「オスカー、どうした」
「え……は?!」
どうしたって、何があったんだろう。心当たりがない。
「そこから血が出ているぞ」
テンツがそう言い終えた瞬間、僕はしばらく固まった。そして恐る恐る自分のその部分を見下ろした。
……もしかして、これって生理なのか?!




