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14 「恐れる」

やってしまったのか。でもこれが初めてなのに。やってしまってからそんなことを考えるのか。今は誰かの命がかかっている瀬戸際だというのに。これをやる必要があったのか。クスにキスをした瞬間、そんな疑問が頭の中で次々と湧き上がった。頭の中がぐるぐると混乱していた。


「そんなこと、全然気にしなくていいのに」


謎の女性の声が頭の中に響いた。まったく聞き覚えのない声だ。


「あなたがしたことは正しいわ。機会がなくなる前に……私には今それができないから……それよりずっとマシよ……」


謎の女性の声は不思議と頭の中から消えていった。


「ビウ、そいつを連れて逃げて!」


クスにキスをしていたその最中に、シーリン先輩が何か叫んだ。そのときクスが目を開けた。それを見た僕はすぐに顔を離した。クスは何も言わなかった。ただ僕の前に立ち上がり、何か不思議な構えを取った。


クスの体から何か白く輝く粒子のようなものが溢れ出した。驚いたのはそれだけじゃない。クスの体から凄まじい引力のようなものを感じた。体の周りで風が渦を巻き始め、どんどん強くなっていき、僕の体が吹き飛びそうになった。クスは立ち上がったものの、魔族たちが僕とクスを取り囲んでいた。先輩たちも同じように囲まれていた。


「お前たちが僕を殺しかけたんだな。風と共に消え去れ——ジ・エンド・サイクロン」


クスが魔族たちへと言葉を放った。クスの周りの風がどんどん強まり、猛烈なスピードで回転する嵐の形を成していった。クスはそれ以上何も言わなかった。クスの周囲を渦巻いていた風が右腕へと集束した。数秒後——魔族たちが再び僕たちや先輩たちへと飛びかかろうとした瞬間、全てが消え去った。残ったのは、散り散りになっていく風だけだった。魔族たちの輪も、跡形もなく消えていた。


「す、す、すげぇぇぇぇ!!なんだあのサイクロン、やばすぎる!!」


全てが消えた瞬間、タイラー先輩が叫んだ。


「クス!クス、大丈夫?!」


僕はその場に立ち尽くしているクスのもとへと駆け寄った。


「ビウ、もう安全だよ……」


ドサッ!!!!!


クスはそれだけ言うと、気を失って倒れた……


***

クス視点


ここはどこだ。死にかけたのは覚えている。それとも死んでしまったのか。ビウに伝えた告白と、あの口づけは本物だったのか、それとも死ぬ前に見た幻だったのか。誰かが僕の手を握っている気がする。なんて柔らかくて優しい手だろう。まるで女の人みたいだ。なんでこんなに馴染みがあるんだろう。それに、なんで手に雫が落ちてくるんだ。涙か。誰かが泣いているのか。手に水滴の感覚があるということは、まだ死んでいないのか。ゆっくりと目を開けてみよう。重い。目を開けるだけでこんなに辛いのか。でも見ないと自分がどこにいるかわからない。


「あっ、クス!目が覚めた?!」


しゃくり上げているこの女性の声、聞き覚えがあるな。


「心配で死にそうだったよ。目が覚めてよかった」


ビウの声だ。そうだ、思い出した。気を失う前にビウが助けてくれたんだった。早く起き上がらないと。


「ちょ、ちょっと!クス、そんな急に起きたら頭ふらふらになるよ?!」


「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ。それより今どこにいるの?今何時?」


「メイ先輩の家だよ。クスが眠ってからずっと今まで、もうかなり遅い時間だよ。長い間待ってたんだよ、クス」


「そうか。でもお前、泣いてたの?」


「ひっく、泣いてないし、全然泣いてないし」


「自分に嘘つかなくていいよ」


ふわっ


その瞬間、ビウが僕に飛びついて抱きしめてきた。突然のことで、こっちは全然身構えていなかった。


「ひっく、ひっく」


ビウは抱きしめながらしゃくり上げていた。僕は抵抗せず、そのままビウを抱き返した。


「クスが気を失ってからずっと怖かった。もう目が覚めないんじゃないかって。誰かを失うかもしれないって、友達がいなくなるかもしれないって思ったら怖くて。もうこんなことにならないでよ……」


ビウが耳元でそう言いながら少しだけしゃくり上げた。こんなに心配させてしまったのか。なんか申し訳ないような変な気持ちだ。でもこの抱擁が不思議なほど心地よくて、そんなことを考えたくなくなって、ただここにいたいと思えてくる。


「そんなに泣くなよ。お前みたいな可愛い顔が台無しになるぞ」


「そんなこと関係ないよ。ひっく、うぅ」


泣くなと言ったのに、ビウが次に言った言葉が僕の心臓を跳ね上がらせた。


「私ね、私ね、女の子のときでも男の子のときでも、クスの近くにいると胸がドキドキして止まらないんだ。でもクスに伝えたかったのは、私もクスのことが好きだってこと。あのときオークから助けてくれたときからずっと。クスがいなかったら今ここにいなかったかもしれないし、もっとひどいことになってたかもしれない。それに魔族が来たとき、みんなを守ってくれたのを見て、もっと好きになった。だからもうこんな怖いことになるのはやめてよね、クス。うぅ~~」


ビウは僕に気持ちを伝えながら、最後に声を上げて泣いた。ビウが話している間、僕は一言も遮らなかった。


でも変な感じがした。こんな風に告白されるのは僕も初めてだ。どうしたらいいんだろう。心臓がどきどきして、どう動いたらいいかわからない。何も考えられない。変な感じと、嬉しい気持ちが同時に込み上げてくる。


「僕も好きだよ」


そう返した後、二人の顔が離れた。辺りがしんと静まり返ったのに、なぜかずっしりとした圧を感じる。ビウの顔にはまだ目に残った涙と鼻水があった。それでも不思議と愛らしさがあった。そのときビウがうっすらと赤くなった顔をこちらへと向けてきた。ビウの唇はぷっくりとして、きめ細かくて、柔らかそうで——そしてその後——


ガチャ!


「おっ、風使いの坊主、目が覚めたか?」


「ビウもずっとそばにいたもんな。目が覚めるはずだよ」


先輩たちのグループが、僕とビウが抱き合っていてもう少しでキスしそうだったその瞬間に部屋へと入ってきた。


「お前たち、何やって——」


「邪魔してごめんね。夕ご飯できたから、お腹空いたら下に来てね」


「は……はい……」


タイミングがあまり良くなかったけど、それはどうでもいい。ビウもようやく泣き止んだところだったんだから。


「えっと……クス、一緒にご飯食べに行かない……?」


「いいよ。でもベッドから起き上がるの手伝ってくれないか」


先輩たちが部屋に入ってきたことで、僕とビウのあの空気は終わりを告げた。洗面所で顔を洗ってから、先輩たちとビウと一緒に夕ご飯を食べに下へと降りた。


「さあ全員揃ったね!みんなで力を合わせて全員無事でいられたことを祝って、予期せぬことも起きたけど乗り越えられた。これからも助け合っていこうね。乾杯!」


/乾杯!!!!!/


なんだかこの食事は特別な感じがした。これが一緒にいることの幸せというものなのか。こんなに温かい気持ちは今まで感じたことがなかった。こんな空気がずっと続けばいいのに。












第14話も無事に終わりました!自分でも、なんだかとても温かい雰囲気の回になった気がしていて、まるでその中に一緒にいるような感覚でした。

Kuzagiの作品をここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!これからもどうぞよろしくお願いします!

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