表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/36

13 「最初の戦い」

クスと先輩たちは大丈夫だろうか。学校の人たちは。そんなことを考えながら僕は学校へと向かっていた。慌てて走り続けてようやく校門に辿り着き、中へと入った。時間はまだ昼過ぎで、休憩中の生徒もいれば、すでに授業が始まっているグループもいた。でもそんなことはどうでもいい。早くクスを見つけないと。そのとき、スマホが鳴った。クスからまた電話がかかってきた。今度は出た。


「クス、どこにいるの?大丈夫?そこで何が起きてるの?」


「今は大丈夫です。先輩たちと一緒に、僕たちの校舎の下にいますよ」


先輩たちと一緒で、僕たちの校舎の下にいると。七号棟か。わかった瞬間すぐに走り出した。女の体で走るのは軽くて、言いようのないくらい速い。男とは全然違う。そう気づいてから、自分でも苦笑いしてしまった。今さらそんなこと気にするのか、と。でもそれでいて、男よりも疲れやすい。普段なら今よりもっと走れるはずなのに、今はもう体力が尽きて歩くのがやっとだ。


「あれ、ビウじゃないか。もう来たのか」


七号棟に着いたとき、シーリン先輩の声がした。


「先輩!みんな無事ですか?!」


「もうすぐ色々とやばくなるぞ。準備しておけ」


タイラー先輩が僕たち全員にそう言った。青黒かったタイラー先輩の瞳の色が、ゆっくりと元に戻っていく。あれがタイムアイズの力か。


「あんまり使いすぎないでよタイラー、また今回も限界超えるでしょ」


「でも今回は準備のためだろメイ。使わなかったら全員やばいことになってたぞ」


「先輩たち、何が起きてるんですか?」


それが僕の最後の言葉だった——空に巨大な輪が現れた。その色は血のように真っ赤だ。僕はその輪から降りてくる何かとてつもない気配や力を肌で感じた。そのときタイラー先輩が口を開いた。


「全員!あの輪の中心へ向かえ!」


タイラー先輩が全員に輪の中心へと指示を出した。同時にシーリン先輩が何かを召喚し始めた。


「ドームフォーカル!!」


シーリン先輩がその言葉を放った瞬間、先輩の体から巨大な輪が次々と広がり出した。巨大なドームが僕たちのいる場所と魔族の輪をすっぽりと覆っていく。ドームが展開し終えたのと同時に、魔族たちが輪の中から現れ始めた。


「このドームの中では全力で力を使って構わない。外には何も見えない完全隠蔽ドームだから、外にいる人間には絶対わからない。お互い気をつけてね」


シーリン先輩は巨大なドームが完成するのと同時に現れた魔族たちを前にしてそう言った。


輪から現れた魔族たちは、想像していたよりはるかに恐ろしかった。その声も、姿も、そして何より——力がある。それを目の当たりにした僕は体が震え、何もできなくなった。何かしろ。何かしろ。なんで体が動かないんだ。魔族が怖くて体が固まっている。足が動かない。そして目の前の魔族が僕めがけて飛んできた。


「あのブレスレットは余のものだ」


ふゅぅぅぅぅぅぅぅぅ!


嵐のような風の音が、その魔族めがけて迫った。


「風よ、天空の下で渦巻け!」


「ビウ、大丈夫か?」


「僕は大丈夫。ありがとう」


「じゃあ今度は一緒に戦おう」


「うん」


クスが風の力で、魔族が僕に飛びかかる寸前に助けてくれた。間一髪だった。少しだけほっとした。でも——クスの嵐から抜け出した魔族が、全身を血に染めながらクスめがけて飛んでいく。タイラー先輩の火球が後ろから追いかけるように魔族へと迫っていた。



「今度こそそのブレスレットをもらうぞぉぉぉ!!」


さっき僕に飛びかかってきたあの魔族が、今度はものすごいスピードでこちらへと突進してきた。目で追えないほど速い。


「風使い!早く避けろ!!!」


ちゅっ!


タイラー先輩の叫び声が響いた。でも——間に合わなかった。クスが僕を庇って前に出た。魔族はクスに真正面から激突した。クスの背中に大きな穴が開いた。目の前に広がる光景は——自分の血溜まりの中に倒れているクスだった。


「ちょっと待って、ちょっと待って、嘘だよな?クス!クス!クス!!」


僕は驚きのあまり叫びながらクスを呼んだ。涙がこぼれ落ちた。目の前で僕を守ってくれた人が血の海に沈んでいる。僕は泣きながらクスのもとへと走り出した。


「待って、まだ近づいちゃダメ!!」


メイ先輩が飛んできて僕を抱き上げ、魔族から引き離した。


「先輩、放してください!…放してください!…このままじゃクスが、クスが、クスが助からなくなります!」


メイ先輩に抱えられながら僕は必死に抵抗した。今度こそ僕がクスを守らないといけない。


「止まれ。あっちに行ったら危ない」


「烈火の光線、燃え尽きろ!」


「メイ、前に言っただろ、今回は誰も死なせないって。あいつのサポートに回れ」


「でもタイラー……」


「信じろメイ。あいつは僕たちより強い力を持ってるはずだ」


「あなたがそう言うなら、わかった」


「早くあいつのところへ行け。僕とタイラーがフォローする」


二人の先輩が魔族を引きつけて時間を稼いでくれたおかげで、僕はクスのもとへと駆けつけることができた。


「クス!クス!クス!!!聞こえてる?!」


僕はクスを抱き起こし、全力で名前を呼んだ。


「な……それ……お前か……ビウ」


「そうだよ、僕だよ。お前がずっと守ってくれたビウだよ」


「そ……そうか……こうなると……体が……言いようのないくらい重い……」


クスは血を咳き込みながら僕の手を握った。その光景に絶望を感じた。早く助けないと。


「しっかりしてクス。今すぐ助けるから」


「待って……ビウ……僕……お前に言いたいことがあって……」


「僕……お前のことが……好きだ……初めて会ったときから……ずっと……短い時間かもしれないけど……でも言いたかった……ずっと好きだった……たとえ……長くなくても……やっと……言えた……お前みたいな可愛いやつ……一番好きだよ……じゃあな……ビウ……眠くて……もう無理だ……」


「だったら、だったら——僕は!好きな人や大切な人を、こんな形で失うわけにはいかない!清らかな水よ、美しき山よ、成長と生命の大自然よ、ただ癒しのみを!アルティメット・ヒーリング!!」


僕の手から緑色の魔法陣が広がり、クスの体を包み込んだ。森のような深い緑のオーラがクスの周りをゆっくりと満たしていく。血が、傷が、少しずつ元に戻っていく。冷え切っていたクスの体が、じんわりと温かさを取り戻していった。流れ続けていた涙を、無駄にするわけにはいかない。クスが僕の膝の上で目を開けた。僕は自分が女の姿であることも男の姿であることも考えずに、ためらいなくクスにキスをした。それは僕がクスに贈るべき最初のキス——期待を込めた、たった一つの口づけだった。







ちゅ……





第13話で、ついにクザギと再会です!読者の皆さん、ここまで読んでくださって本当にありがとうございます。第13話以降、物語はいよいよ「異界パート」へと本格的に動き始めます。


ついに13話まで来ましたね(実は、もう少しお話が伸びちゃうかもしれないんですが……「もうすぐ異世界編だよ!」ってことだけはどうしても伝えたくて笑)。これからビウがどうなっていくのか、ワクワクしてきませんか? ぜひ楽しみにしていてください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ