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第8話 「七不思議第5夜 校長先生の銅像」

学校の正門の横には、初代校長先生の銅像がありました。

立派なひげ。

立派な眉毛。

立派な額。

そして、なぜか夜になると歩くという噂があります。

「海斗君、今夜は校長先生の銅像よ」

「今度は校舎に入らなくて済むね」

「そうね。学校にやさしい七不思議だわ」

「エリカちゃんがそう言うと不安だよ」

その夜。

エリカちゃんと海斗君は、正門前にやって来ました。

月明かりの下、初代校長先生の銅像はいつも通り偉そうに立っています。

「自分の銅像を学校に置くなんて、なかなかの根性ね」

「たぶん本人が置いたわけじゃないと思うよ」

「でも可愛くないわ」

「銅像に可愛さを求めるの?」

そのとき。

銅像の目が、ぎろりと動きました。

石でできたはずの首が、ぎぎぎ、と音を立てて回ります。

「夜の校門に立つ者よ……」

「しゃべった」

「この学校の規律を乱す者は――」

「海斗君」

「なに?」

「これ、別の銅像に変えましょう」

「話を聞こうよ!」

校長先生の銅像は怒ったように片足を踏み出しました。

ずしん。

「我は初代校長。この学校の秩序を守る者――」

「秩序を守るなら、もっと親しみやすい見た目にした方がいいわ」

「見た目の問題なの!?」

エリカちゃんはどこからともなくスマホを取り出し、近くのフライドチキン屋の写真を見せました。

「こっちの方が笑顔でいいと思うの」

「それ創業者の像だよ!」

「この前、店先の像が壊れたって聞いたわ。入れ替えればみんな幸せね」

「誰も幸せじゃないよ!」

ウイイイイイイイイイン!

けたたましいエンジン音が夜の校門前に響きました。

銅像は一瞬で硬直しました。

「ま、待て。私は学校の象徴で――」

「大丈夫よ。象徴ならチキン屋さんでもできるわ」

「できない!」

海斗君の叫びもむなしく、エリカちゃんは銅像の足元にチェーンソーを入れました。

ぎゃりぎゃりぎゃりぎゃり!

「ぎゃああああ! 台座が! 台座が削れる!」

「校長先生、痛いんだ……」

銅像は必死に逃げようとしましたが、重すぎて動きが遅い。

エリカちゃんは足元の固定部分だけを器用に切り離しました。

「よし。持ち運び可能になったわ」

「銅像を持ち運ぶ発想が怖いよ」

翌朝。

学校の正門横には、初代校長先生の銅像がありませんでした。

代わりに。

どこかで見たことのある、白い服を着た笑顔のおじいさん風の像が立っていました。

片手を上げて、にこやかに生徒たちを迎えています。

「えっ、何これ!?」

「校長先生、急にフライドチキン感出てない?」

「給食が豪華になりそう」

生徒たちはざわつきました。

山本先生は、正門前で固まっていました。

「……エリカちゃん」

「はい」

「この像は何ですか?」

「親しみやすい校長先生です」

「違います」

「でも笑顔です」

「そういう問題ではありません」

「前の校長先生はむさかったので」

「銅像にむさいとか言わない」

一方そのころ。

近所のフライドチキン屋では、店先に初代校長先生の銅像が立っていました。

しかも、なぜか片手にチキンのバーレルを持たされています。

「店長、なんか像が変わってます!」

「前より威厳があるな……」

「でも客が入りにくそうです!」

銅像は無言でした。

しかし夜になると、小さくつぶやいたそうです。

「……戻りたい」

その日の放課後。

エリカちゃんは山本先生に連れられて、銅像の交換作業を手伝わされました。

「重いわね」

「あなたが入れ替えたんでしょう」

「海斗君、手伝って」

「う、うん」

「海斗君は呼ばなくていいです」

山本先生の指導のもと、初代校長先生の銅像は元の台座に戻されました。

ついでに、エリカちゃんが削った台座も修理されました。

「もう勝手に銅像を交換しないこと」

「はい」

「チキン屋さんの像も持ってこないこと」

「はい」

「夜に学校の銅像へチェーンソーを向けないこと」

「努力します」

「約束しなさい」

「……はい」

その夜から。

校長先生の銅像は、二度と歩かなくなりました。

理由は簡単です。

また動いたら、今度こそ本当にチキン屋の前に立たされるからです。

そしてエリカちゃんは、帰り道で海斗君に言いました。

「でも海斗君、あの笑顔の像、少し可愛かったわよね」

「うん。でも校長先生の銅像としては間違ってると思うよ」

「じゃあ次はウサ耳をつける?」

「やめようね」

こうして、七不思議第5夜。

校長先生の銅像は、エリカちゃんによって一度フライドチキン屋の創業者像と入れ替えられたのでした。


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