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第7話 「七不思議第4夜 美術室の肖像画」

十三階段を十二階段に改修した翌日。

学校ではまた新しい噂が流れていました。

「今度は美術室の肖像画らしいよ」

「夜になると目が動くんだって」

「見た人は、絵の中に連れていかれるらしいよ」

それを聞いたエリカちゃんは、昼休みの教室で目を輝かせました。

「海斗君、今夜は美術室よ」

「また夜に行くの?」

「七不思議が私を呼んでいるのよ」

「たぶん呼んでないと思うよ。むしろ来ないでほしいと思ってるよ」

その夜。

エリカちゃんと海斗君は美術室の前に立っていました。

中は真っ暗です。

扉を開けると、絵の具と古い木の匂いがしました。

壁には、歴代の校長先生や有名な画家の肖像画がずらりと並んでいます。

どれも立派なひげを生やした、むさいおじさんばかりでした。

「……むさいわね」

「エリカちゃん、音楽室のときも同じこと言ってたよ」

「だって本当にむさいんだもの」

そのとき。

壁の肖像画の目が、ぎょろりと動きました。

「見たな……」

「見たわ」

「我らを見た者は、絵の中へ――」

「海斗君」

「なに?」

「この絵、部屋に飾りたくないわ」

「怪異への第一声がそれ!?」

肖像画たちは一斉に顔を歪めました。

「無礼な小娘め……!」

「我らはこの学校に伝わる由緒ある肖像画――」

「でも、むさいわ」

エリカちゃんは即答しました。

肖像画たちは震えました。

怒りで。

たぶん、少し傷ついてもいました。

「許さん! 絵の中に閉じ込めてくれる!」

額縁から黒い手が伸びてきます。

「エリカちゃん、危ない!」

「大丈夫よ」

ウイイイイイイイイイイイン!

けたたましいエンジン音が、美術室に響きました。

エリカちゃんのチェーンソーが一閃し、黒い手だけをまとめて斬り落としました。

「ぎゃああああ!」

「額縁から手を出すのは行儀が悪いわ」

「チェーンソーを出すのも行儀悪いよ!」

肖像画たちは慌てて額縁の奥へ引っ込みました。

「ま、待て! 話し合おう!」

「そうね。話し合いましょう」

エリカちゃんはにっこり笑いました。

「あなたたち、ここにいると美術室の景観を損ねるの」

「ひどい!」

「だから、もっと目立つ場所に移してあげるわ」

「目立つ場所?」

翌朝。

学校の近くの通学路にある、選挙ポスター掲示板。

そこには、候補者のポスターに混じって――

なぜか、むさいおじさんたちの肖像画が貼り付けられていました。

しかも全員、ものすごく不機嫌な顔をしています。

「誰だこれ!?」

「新しい候補者?」

「全員落選しそうな顔してる……」

通学中の生徒たちはざわつきました。

海斗君は掲示板の前で頭を抱えました。

「エリカちゃん、これはまずいよ」

「大丈夫よ。民主主義に参加させてあげただけだから」

「肖像画は立候補できないよ」

「でも目は動くわよ」

「もっとだめだよ!」

掲示板の中で、肖像画の一枚が小さくつぶやきました。

「戻してくれ……」

「美術室に戻りたい……」

「道行く人に見られるの、想像以上につらい……」

エリカちゃんは腕を組んで言いました。

「反省した?」

「した……」

「絵の中に人を閉じ込める?」

「もうしない……」

「ならよし」

その日の放課後。

山本先生は、エリカちゃんを職員室に呼びました。

「エリカちゃん」

「はい」

「美術室の肖像画が、選挙ポスター掲示板に貼られていました」

「社会参加です」

「違います」

「でもみんなに見てもらえていました」

「選挙管理委員会から苦情が来ています」

「人気者ですね」

「苦情です」

山本先生は深くため息をつきました。

「今すぐ戻してきなさい」

「はい……」

こうして、肖像画たちは美術室へ戻されました。

ただし、それ以来、夜中に目を動かすことはなくなりました。

なぜなら、少しでも動くとエリカちゃんが言うからです。

「また選挙に出る?」

肖像画たちは、その言葉を聞くたびに、額縁の中で静かに震えるのでした。


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