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第6話 「七不思議第3夜 十三階段」

学校の七不思議には、定番があります。

夜になると勝手に鳴るピアノ。

歩き出す人体模型。

トイレの花子さん。

そして――

十三階段。

「海斗君、今日は十三階段よ」

「エリカちゃん、うちの学校の階段って十段くらいしかないよ?」

「だから不思議なのよ」

放課後の教室で、エリカちゃんは自信満々に言いました。

「いつもは十段の階段が、夜になると十三段になる。登り切ると災いが起こる。これぞ七不思議だわ」

「じゃあ登らなければいいんじゃないかな」

「それだとお話が終わるでしょ」

「終わっていいと思うよ……」

その夜。

エリカちゃんと海斗君は、また学校に忍び込みました。

今回は山本先生に怒られたばかりなので、エリカちゃんも少しだけ慎重です。

「海斗君、今日は壁を斬らないわ」

「えらいね」

「窓の鍵を斬るだけよ」

「斬るんだ……」

ウイイイイイイイイン、と小さめのエンジン音が響きました。

小さめでも、夜の学校では十分うるさかったです。

二人はまず西階段へ向かいました。

「一、二、三……十」

「十段ね」

「普通だね」

次に東階段。

「一、二、三……十」

「ここも十段」

「平和だね」

中央階段。

「一、二、三……十」

「また十段だわ」

「もう帰ろうよ」

「まだ屋上へ続く階段があるわ」

海斗君は嫌な予感がしました。

屋上へ向かう階段の前に立つと、空気が少しだけ冷たくなりました。

月明かりの届かない薄暗い階段。

そこだけ、校舎の中ではないような気配がしました。

「……エリカちゃん」

「数えるわよ」

二人は一段ずつ、階段を数えました。

「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十……」

海斗君の声が震えます。

「十一、十二……十三」

ぴたり。

二人は十三段目の前で止まりました。

階段の奥から、低い笑い声がしました。

くくくくく……。

ようこそ……。

十三段目を踏んだ者は、二度と戻れぬ……。

「エリカちゃん、帰ろう」

「そうね」

「えっ、帰るの?」

「だって十三段目を踏むと危ないんでしょ?」

「珍しくまともだね!」

海斗君がほっとした、その瞬間。

エリカちゃんはチェーンソーを取り出しました。

「だから、十三段じゃなくせばいいのよ」

「まともじゃなかった!」

ウイイイイイイイイイイイイン!

けたたましいエンジン音が、夜の階段に響きました。

階段の怪異が慌てたように叫びます。

待て。

何をする。

やめろ。

それは怪談としての根幹に関わる――

「うるさいわね」

エリカちゃんは、一段目の角にチェーンソーを入れました。

ぎゃりぎゃりぎゃりぎゃり!

一段目が斜めに削られていきます。

段差だった場所は、なだらかな坂になりました。

「よし」

「エリカちゃん、これって……」

「一段目をスロープにしたから、もう十二階段よ」

その瞬間。

階段全体が震えました。

ギャアアアアアアアアア!

どこからともなく悲鳴が響きます。

壁が震え、手すりが軋み、十三段目がぼんやりと消えていきました。

「わ、悪霊が……」

海斗君は目を丸くしました。

エリカちゃんはチェーンソーを肩に担ぎ、満足そうに言いました。

「またつまらぬものを斬ってしまったわ」

「階段を斬ったんだよ」

「でも解決したでしょ?」

「解決の仕方がおかしいよ」

翌朝。

学校はまた大騒ぎになりました。

「屋上階段の一段目がスロープになってる!」

「誰がこんなことしたの!?」

「バリアフリー?」

「いや、チェーンソーの跡があるぞ!」

その話を聞いた山本先生は、静かにエリカちゃんを見ました。

「エリカちゃん」

「はい」

「屋上階段について、何か知っていますか?」

「先生」

「はい」

「学校のバリアフリー化に貢献しました」

「勝手にしないでください」

「でも十三階段は十二階段になりました」

「まず十三階段にしないでください」

「それは怪異側の責任です」

「あなたは怪異側より厄介です」

山本先生は深いため息をつきました。

その日の放課後。

エリカちゃんと海斗君は、屋上階段の前を通りました。

階段は修理待ちで、黄色いテープが張られています。

「エリカちゃん、これで七不思議が一つ減ったね」

「そうね」

「でも学校の修理費は増えたね」

「細かいことは気にしちゃだめよ」

「細かくないよ」

すると、階段の奥からかすかな声が聞こえました。

……十二段では……怪談にならぬ……。

……せめて……十三に戻して……。

エリカちゃんはにっこり笑って、チェーンソーに手をかけました。

「十段にする?」

声は二度と聞こえなくなりました。

こうして、七不思議第3夜。

十三階段は、エリカちゃんによって物理的に十二階段へと改修されたのでした。


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