表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/45

第9話 「七不思議第6夜 開かずの扉」

七不思議も、残りわずかになりました。

「海斗君、今夜は開かずの扉よ」

「昇降口の近くに、夜だけ現れるっていう扉だよね?」

「ええ。開かない扉なら、開ければいいのよ」

「その発想がすでに怖いよ」

その夜。

二人は昇降口へ向かいました。

すると、普段はただの壁だった場所に、古びた木の扉がありました。

「本当にあったわ」

「開くのかな……」

海斗君がそっとノブを回しました。

がちゃ。

「開いたよ」

「開かずの扉なのに?」

その瞬間、扉の奥から声がしました。

「ふああ……よく寝た……」

中から出てきたのは、ぼさぼさ頭のおじさんでした。

エリカちゃんと海斗君は固まりました。

「……誰?」

「こっちの台詞だ。人の寝床に勝手に入ってくるんじゃねえ」

「寝床?」

よく見ると、扉の向こうは小さな隠し部屋になっていました。

布団。

カップ麺。

工具箱。

なぜか簡易テレビ。

完全に生活空間です。

「海斗君」

「うん」

「七不思議じゃなくて、おじさんだったわ」

「ある意味、不思議だよ」

おじさんは頭をかきながら言いました。

「俺は秀明。元建築関係だ。ちょっと事情があってな、ここに住んでた」

「学校に住むのはよくないわ」

「夜の学校に忍び込む小学生に言われたくねえ」

「正論だね」

エリカちゃんはむっとしました。

「でも、開かずの扉の正体がただのおじさんなんて、がっかりだわ」

「ただのおじさんで悪かったな」

「でも建築に詳しいのね?」

「まあな」

エリカちゃんの目が光りました。

「海斗君」

「なに?」

「大人の人が一人いると、何かと便利よね」

「その言い方、すごく不穏だよ」

エリカちゃんは秀明おじさんの手を取りました。

「おじさん、うちに来ない?」

「は?」

「住むところがないんでしょ? うちのアパートなら部屋くらいあるわ」

「いや、いきなり何を……」

「その代わり、修理とか改造とか力仕事をお願いするわ」

「待て待て待て。なんで俺が小学生にスカウトされてるんだ」

「テイクアウトよ」

「人間をテイクアウトするな!」

海斗君が叫びました。

しかし秀明おじさんは、少し考え込みました。

「まあ……追われてる身だし、屋根があるならありがたいが」

「追われてる?」

「借金取りだよ。会社が潰れてな」

「じゃあ大丈夫よ」

エリカちゃんはにっこり笑いました。

「借金取りが来たら、私が斬るわ」

「心強いのか危険なのかわからねえな……」

「両方だと思うよ」

こうして秀明おじさんは、エリカちゃんに連れられて学校を出ました。

数十分後。

古びたアパートの前で、秀明おじさんは足を止めました。

看板には、こう書かれていました。

チェーン荘

秀明おじさんの顔色が変わりました。

「おい……ここって、あの悪名高いチェーン荘か?」

「知ってるの?」

「入った人間が帰ってこないって噂の場所だぞ!」

「失礼ね。ちゃんと帰れる人もいるわ」

「帰れない人もいるんだ……」

海斗君が小声でつぶやきました。

エリカちゃんは笑顔で言いました。

「ようこそ、秀明おじさん」

秀明おじさんは、アパートを見上げて叫びました。

「学校の隠し部屋の方が安全だったかもしれねええええ!」

こうして、七不思議第6夜。

開かずの扉の正体は、学校に潜伏していた秀明おじさんでした。

そして彼は、エリカちゃんによってチェーン荘へテイクアウトされたのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ