第20話 「エリカちゃんのチェーン荘リフォーム」
チェーン荘に住むことになった秀明おじさんは、元建築関係の大人でした。
つまり、エリカちゃんにとっては便利な人材です。
「秀明おじさん」
「なんだ、嫌な予感しかしねえぞ」
「チェーン荘をリフォームしましょう」
「やっぱり嫌な予感だった」
エリカちゃんは設計図を広げました。
そこには、なぜか一階にメリーゴーランド、二階に自動演奏ピアノ、地下にチェーンソー展示室が描かれていました。
「住宅の設計図じゃねえ!」
「夢のある家よ」
「夢というより悪夢だろ!」
数日後。
チェーン荘は本当に改造されました。
玄関を開けると、まず小型メリーゴーランドがあります。
白馬がくるくる回りながら、来客を迎えます。
「エリカちゃん、なんで玄関にメリーゴーランドがあるの?」
「靴を脱ぐ前に楽しい気分になれるでしょ」
「入るのに邪魔だよ」
リビングには、自動演奏ピアノが置かれていました。
夜になると勝手に鳴ります。
曲はだいたい『エリーゼのために』です。
「これ、学校の音楽室に戻したんじゃなかったの?」
「似たようなのをリサイクルショップで買ったの」
「似たようなのって、呪いも似てるよね?」
花子さんは一階トイレから顔を出しました。
「夜中にピアノが鳴るせいで眠れないんだけど」
「花子さん、幽霊でも寝るの?」
「気分の問題よ!」
さらに廊下の壁には、美術室の肖像画に似たおじさんの絵が何枚も飾られていました。
「これは?」
「選挙ポスター板から外したあと、余った額縁がもったいなかったから」
「また“むさいおじさん”が増えてる……」
地下室にはチェーンソー棚。
マリアンナ、カトリーヌ、ジェシカ、エリザベス。
名前札つきで、ずらりと並んでいます。
秀明おじさんは、疲れ切った顔で工具箱を置きました。
「俺はリフォームを頼まれたはずなんだがな」
「素敵になったでしょ」
「普通のアパートから、怪異のテーマパークになったぞ」
「家で遊園地気分ね」
「褒めてねえ!」
そこへ海斗君が来ました。
「おじゃましまーす……って、何これ!?」
玄関のメリーゴーランドが、海斗君の前でゆっくり回りました。
リビングのピアノが、ぽろん、と鳴りました。
トイレから花子さんが手を振りました。
廊下の奥では、秀明おじさんが白目になっていました。
エリカちゃんは胸を張りました。
「ようこそ、海斗君。新しいチェーン荘へ」
「エリカちゃんの家、前より怖くなってるよ」
「でも楽しいでしょ?」
「……ちょっとだけ」
海斗君がそう言うと、エリカちゃんは嬉しそうに笑いました。
その夜。
チェーン荘では、メリーゴーランドが回り、自動演奏ピアノが鳴り、花子さんがトイレで文句を言い、秀明おじさんが天井の補強をしていました。
そしてエリカちゃんは、海斗君と並んでメリーゴーランドに乗っていました。
「海斗君」
「なに?」
「いつかここを、もっと大きくしましょうね」
「これ以上?」
「うん。観覧車も欲しいわ」
「それは絶対やめようね」
チェーン荘のリフォームは、まだ始まったばかりでした。




